きちんと、淡々と、役者さん―大蔵祥さん(たつみ演劇BOX)―

2015.1-2月東京公演 @浅草木馬館・篠原演芸場

崩さない、崩れない。
キラキラした小泉家の三姉弟の後ろで。
意気揚々とアピールする若手さんたちの端で。
彼の芝居は、淡々と堅固だ。

こないだの敵役が良かったと言ってみたら、
「悪役しかできないんで…」
ひくーい声でニヤッと笑ってくれた。

大蔵祥さん(2015/2/11舞踊ショーより)


たつみ演劇BOXの名脇役。
1-2月の東京公演を観て、私はすっかりこの方が気になっている。
きっかけは、なんと言っても“貧乏神”!
1/2(金)のお芝居『春雨新五郎』で大蔵さんが演じていた、癖のある悪役だ。

春雨の親分(小泉たつみ座長)と、敵対するいかづちの親分(宝良典さん)。
“貧乏神”はいかづち一家の若い衆だ。
喧嘩を吹っ掛ける割に、まともな勝負はせず、親分の陰に隠れている。
と思えば、春雨の親分をジロ…と下からねめつけて。
幾度追い払われても、繰り返ししつこく、春雨一家にやって来る。
それこそ貧乏神が憑いたみたいに。
「へっへっへっ…」と肩を揺らしながらの、歪んだ笑い方が強烈に印象的。
役名通りの小悪党の卑劣さが、ちりちりと物語にくすぶっていた。

私は悪役が好きでしょうがない病にとりつかれている。
それも、ひと癖ふた癖もある悪役となれば尚更!

改めて注目してみると、大蔵さんって芝居が常々崩れていない。
セリフ飛んだり、噛んだり、照れが入ったり、そういうのが全然ない。
あまり大きい役は見たことないけど、子分その一や村人その一の振る舞いは、さりげなく盤石だ。

2/1(日)、『三島と弁天』。
大蔵さんは口紅塗って、三島の殿様(小泉たつみ座長)の屋敷の女中役。
大蔵さんが殿様から用事を言いつかった時、
「かしこまりましたぁ~」
と言いながら、舞台の端でくねくねと腰を揺らし、殿様を誘惑する。
何の照れも恥じらいもなく(イヤあったとしても一切見せず)、くねんくねんと勢いの良い媚態に、客席大笑い。
この全身の思いきりの良さ!

2/3(火)、『三人吉三』。
この芝居を先に観ていた友人に「大蔵さんセリフあった?」と聞くと。
「もー、最高だよ!」
彼女の答えの通りだった。
歌舞伎調の芝居に笑いの要素をもたらす、夜鷹三人組!(大蔵祥さん・辰巳花さん・小泉ライトさん)
「おとせちゃん(辰巳満月さん)が昨日からまだ帰らないのよ、きれいな子だから心配だわ」
大蔵さんは、女言葉のセリフも滑らかに、夜鷹のリーダー的存在だった。
正直、ライト君・花ちゃんと比べても、大蔵さんのためらいのなさ、照れのなさは頭抜けていて。
「これからは三人夜鷹で義を結ぼうか~!」
夜鷹の姐さんが、二人を率いてはけていく姿には、なんだか清々しさまであった。

2/16(月)、『殿様小僧蔦吉』。
大蔵さんはセリフほとんどなくて、悪の一家の子分その一だった。
でもこういうとき、この方は悪の子分を“きちんと”演じている。
舞台中央では、源次(小泉ダイヤ座長)と長次(ゲスト・恋川純座長)が一家に乗り込んできて、親分(宝良典さん)と言い争っている場面。
舞台端で、大蔵さんは同じ子分役の花ちゃんの肩を叩いた。
源次・長次のほうを顎で示し、バカにした表情で薄く笑って、なぁ?と同意を求めていた。
――バカじゃねえの、二人っきりで乗り込んだりして殺されるのが目に見えてるのに。
多分セリフがあったら、そんな感じ。

これまで、どんな人生を送られてきたのだろう。
「役者さんって、役者をしていないとき、どう思っていらっしゃるの?やっぱり役者に戻りたいと思ってらっしゃるの?」
2013年8月、前回の東京公演。
『演劇グラフ』の企画で、舞踊家・胡蝶さんがたつみ演劇BOXにいらした日、私はたまたま観に来ていた。
胡蝶さんが舞台上で、座員さん一人一人にインタビューされていた。
そのとき知ったことだけど、大蔵さんはしばらく役者をしていない時期があったそうだ。
胡蝶さんの上記の質問に、大蔵さんが何て答えられていたか、悔しいことに思い出せない。

ただ、嬉しいのは、今日の大蔵祥さんが再び役者であるということ。
まめまめしい芝居で、たつみ演劇BOXの芝居の質の高さを底上げされているということ。
低く張りのある声を活かして、たまに歌も披露してくれる。
(群舞は時々振りが危ういときもあるけど、それは御愛嬌かな…(笑))

つい先日の篠原演芸場でのこと。
舞踊ショーの舞台は、たつみ座長の華麗な女形。
たつみさんを照らす照明が、微細に色を変えて実に鮮やかだった。
照明の源を見ようかと二階席を見上げると、投光さんと並んで、大蔵さんがいた。
投光さんと二人で、慣れた風に機材を動かしていた。
温みのある光が照り映えて、舞台の女形はますます美しかった。

キラキラした三姉弟を、意気揚々とした若手さんを――支えている手があるのだろう。
目立つ場所ではなくても。

役者・大蔵祥さんがこなしていること。
悪役、子分、村人、歌、踊り、投光、多分まだまだ諸々。

(2015/2/21舞踊ショーより)


どれもきちんと、崩さず、毎日。
ちゃんと、淡々と、毎日、役者さん。

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