のぼる會特別公演お芝居「裏・天保水滸伝」―嵐山瞳太郎さんに見た“歓び”―

2015.2.19 夜の部@篠原演芸場

大衆演劇ファンになって3年、実は座長大会は初めてでして。
行きたいなと思いつつ、関西が多いし、まれーに関東で開催されても大抵平日の昼間だし…
なので2/19(木)の「のぼる會特別公演」は、絶好のチャンスだった。

芝居「裏・天保水滸伝」は、小龍さんが書き下ろした新作。
従来の天保水滸伝とは逆に、飯岡助五郎を主眼に置く。

配役はこんな感じでした↓
【飯岡一家】
飯岡助五郎…小泉たつみ座長(たつみ演劇BOX)
洲崎の政吉…新川笑也座長(新川劇団)
堺屋与吉…金沢じゅん座長(座KANSAI)
【笹川一家】
笹川繁蔵…淺井春道座長(逢春座)
勢力富五郎…浅井研二郎座長(浅井研二郎劇団)
火の玉啓介…中野貴之介さん(鳳凰座)
平手酒造…小泉ダイヤ座長(たつみ演劇BOX)
芸者・八千草…黒潮幸次郎座長(黒潮劇団)
【役人】
関八州見廻り役人・中山…嵐山瞳太郎さん(たつみ演劇BOX)
部下・佐々木蔵之介…愛飢男さん(たつみ演劇BOX)

普段配役とかちゃんと書かないからしんどい…(笑)
なぜわざわざ書いたかというと、伝えたいことがあったから。
これだけ名だたる座長さんの中でも。
座長さんたちが、各々の役で芸を解き放っていた、その中でも。
――嵐山瞳太郎さんの敵役が、負けず劣らずの煌めきだった!と。

嵐山瞳太郎さん(当日舞踊ショーより)

当日は個人舞踊がありませんでした…

瞳太郎さんの何に心打たれたって、“自分の力を芝居に尽くしきってる”感じ。
役どころの中山は、色欲の深い役人。
並みいる座長陣を相手取る憎まれ役、大役だ。

瞳太郎さんは、序幕ではかなり緊張されたそう。
序幕は、中山が芸者・八千草(黒潮幸次郎座長)を座敷で見初めるシーンだ。
「美しい。気に入ったぞ」
瞳太郎さんの大きな目が、獲物を見つけたときの鳥のように、八千草を見定める。
独特の声の張り方に、傲慢な響きがともされているのがわかった。

「年季が明けたらわしのところへ来ぬか。好きなだけ贅沢ができるぞ」
中山は八千草を囲おうとするも、
「せっかくですが、もう身の振り方は決まっておりますので」
とあっさり振られて大激怒。
「この中山を袖にして、どこのどいつのところへ行くと言うのだ、答えい!」
「笹川繁蔵親分のところでございます」
八千草が凜と答えれば、中山はバカにしたように眉を上げる。
「なんだ、ただの博徒ではないか…」

一つ一つの言葉や仕草を、若い心身に咀嚼して。
瞳太郎さんが懸命に練り上げたであろう、中山のねじれた人となりが現れる。

八千草への横恋慕が発端となって、中山は結果的に飯岡と笹川を争いに追いやっていく。
笹川一家が崩壊した後、繁蔵(淺井春道座長)は逃亡。
夫婦の誓いをした繁蔵がいなくなり、残された八千草は、乞食の暮らしをしていた。
ござを抱え、すっかりみすぼらしくなった八千草…
そこに半年ぶりに繁蔵が戻って来る。
不憫そうに八千草を見つめ、「やつれたな…」と零す。

そんな良い場面に。
「見つけたぞ繁蔵!」「いたぞこっちだ!」
割って入って来る、槍を携えた役人たち。
その先頭に立つのが瞳太郎さん。

中山の腕が、乞食の女を掴まえて。
かつて艶やかだった八千草だと気付くと、薄く笑う。
「汚くなったな…!」
このセリフ、一番鳥肌立ちました。
やつれた女の人を見て、しかもかつて好意を持っていた女性相手に、開口一番「汚くなった」と言える神経…
この一言に、中山という人物の残忍さが剥き出しになる。
「だが、そんな女もそれはそれで面白い。どうだ、わしの所へ来ぬか」
そしてまだ八千草狙ってたのか(笑)
八千草に頬を叩かれると、中山の目は冷徹に細められる。
価値の失せたものを見るように。

多分瞳太郎さん、芝居するの、楽しいんだろうな。
のぼる會での大役を任されて、自分の力を信頼されて、嬉しいんだろうなあ。
槍を抱えるしなやかな手足に、演じることそのものへの歓びが滲んでいた。

瞳太郎さんは普段のお芝居でも、敵役・子分役・三枚目、どれでもきっちりと演じて、その独特の魅力を見せてくれる。
以前、友人に共感した言葉を思い出す。
「私の好きな役者さんの一人は、座長とかじゃないけど。敵役でもどんな役でも、愉しそうに演じるところが好きなの」
瞳太郎さんの芝居を見ていると、いつもこの言葉がよぎる。

せっかく瞳太郎さんのことを書いたので、別の日の個人舞踊のお写真も。

2015/2/14個人舞踊「バレンタイン・キッス」より

↑バレンタイン当日に合わせて、会場を盛り上げてくれた。

芝居でも舞踊でも、自分の持ち役で、自分の持ち場で、自分の持ち時間で。
一番良いものを掘り起こそうとする心意気が伝わってくる。
きっと、大物になられるんだろうなぁ。

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コメント

のぼる會の座長大会、気になってたのですが、ちょうどこちらで詳細にレポートされてたので、ありがたかったです

新作のようですが、なかなか良い芝居だったようでよかったです
記事の方も、良かったです
嵐山瞳太郎さんを是非見てみたくなりました
お萩さん、ありがとうございました

黒潮次郎さんは、芝居に出てなかったのかな、不思議ですな

>山口ジジイ様

芝居中にも書かれますが、飯岡は笹川繁蔵の墓を「最も大切な客人の墓」として、
大事に供養したそうです。
そんな飯岡が本当に流布しているような悪人だったのか…?とたつみ演劇BOXの辰巳小龍さんが発想し、
書き下ろした芝居とのことでした。

黒潮次郎さんは、舞踊では「お梅」「お目通り」を踊り、さすがのしなやかさを見せてくれました^^

なるほど、
天保水滸伝は、十手持ちの飯岡含めた国家権力VS笹川一家の物語
まあ、水滸伝の題名を借りてるとこからみても、国家権力と闘う笹川一家側に、判官びいきというかスポットを当ててますからねえ
講談や浪曲で、面白おかしく歪曲してるので、事実とは異なる
そこに切り込んで、裏物語の発想で芝居にしたというのは、面白いですね
黒潮次郎さんの情報、ありがとうございます

>山口ジジイ様

講談や浪曲でもよく演じられるのですねv-364
芝居では笹川ばかりが良いものに描かれるなぁと思っていたのですが、そんなわけでしたか…勉強になります^^

私もちょくちょく山口ジジイさんのブログ読ませていただいてます。
またお芝居レポ、楽しみにしていますね~

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