たつみ演劇BOXお芝居「下北の弥太郎」(たつみDAY)

2015.1.25 昼の部@浅草木馬館

たつみんこと小泉たつみ座長について、耳にするイメージ。
“カリスマ”(たしかにお喋りの引力すごい!)
“好青年”(近所に住んでたら爽やかな挨拶を交わせそう)
“王子様”(そのまま!)

その全てに深く頷きつつ。
この人の明るさは、“ヒーロー”っぽいなぁ…と、私は長身の光明を見上げている。

小泉たつみ座長(当日舞踊ショーより)


木馬館公演最後の休日、たつみDAY。
ぎっしりと詰まった木馬館。
「本日はお寒い中、木馬館公演においでいただき、誠にありがとうございます!」
開幕前に、たつみさんのテンション高めのアナウンスが降ってきた。
「あ、お一人様ですね、どうぞどうぞ前へ!ようこそいらっしゃいませ!ご予約の○○様はまだいらしてませんか~?○○様と○○様の到着がまだのようです!」
客席の様子をどこからか見ているのか、元気いっぱいの実況中継に、大笑いしてしまった。

響く声が明るい。
幕が開けば、中央で踊る瞳が明るい。
沈んだ心も掬いあげてくれそうな。

“不幸”“不幸せ”
この言葉が、たつみDAYのお芝居『下北の弥太郎』では、繰り返し繰り返し語られていた。
(かなり意図的な演出だと思うのだけど)
「生まれ持った不幸っていうのは、ずっと身について離れないようで…」
象徴的なのが、序盤でダイヤさん演じるボサマ(盲目の三味弾き)が漏らす一言。
旅烏の弥太郎(小泉たつみ座長)は、それを聞いてじっと床を見つめる。
弥太郎の耳に、幼い声が蘇ってくる。
「助けて弥太兄ちゃん、弥太兄ちゃん、弥太兄ちゃん助けて…」

15年前、まだ子どもだった弥太郎(小泉ライトさん)が角兵衛獅子の子方をしていたとき。
妹のような存在だったお千代(ゆいさん)を可愛がっていた。
だが、お千代は土地の親分・犬神の権蔵(宝良典さん)に、女郎に育てるために連れ去られてしまった。
「角兵衛獅子の子方をしていたっていう女を知らねえか?」
弥太郎が今も旅をしながら探すのは、お千代。
たつみさんの締まったやくざ姿に、妹への愛しさ、心の奥に住まう童心が現れる。

“不幸”という言葉が心底私に染みるのは、この後――。
大人になったお千代(辰巳小龍さん)が、泣きながら登場してからだ。
「死にたい!死なせて!こんな体じゃ生きていても…」
お千代は女郎になっていたが、過労で盲人となった。

誰もいない部屋で。
ふいにお千代の体が丸まって、泣き声をこらえて親指を噛む。
畳にしがみつくような、小龍さんの姿に滲む絶望感。
お千代は見えない目で、紐を部屋の柱に引っ掛けて、首を吊ろうとする。

そこで、「やめときな」と紐を斬る刀。
ようやくお千代の居所を探し当てた弥太郎!
…なんだけど、そこにいる盲目の女郎がお千代だとは、気づかない。

「さっきの人、あんたがいつも話してた弥太兄ちゃんじゃないかい?」
女郎仲間のおりく(葉山京香さん)にその可能性を指摘されて。
「あたし会えないよ、こんな姿、弥太兄ちゃんにだけは見られたくない」
お千代は、変わり果てた姿を兄に見られる恐怖に震える。

心身には不幸の影が染みこんでいて、もう逃れられない。
暗い暗いこの路に、二度と光は差さない。

それを打ち砕くのは、まずおりく=京香さんの名セリフ。
「不幸せの波に飲まれそうになってもね、人間は姿じゃない、格好じゃない。人の持っている心だよ!」

そして弥太郎の出番。
盲目の女郎がお千代だと気づき、憐憫にむせび泣きながらも。
「苦労したろう、もうこれから先は、絶対お前を離さねえぞ…!」
たつみさんの大きな手が、小龍さんの手をしっかり握る。
「あたしみたいな女をしょいこんだら、あんたまで不幸になっちまう…」
と、お千代が抵抗しても。
力強い声が絶望を割る。
「もしそうなら、お前の持ってる不幸せを、これから二人で引きずって生きていこうじゃねえか!」

大きな体躯、朗々とした声、何よりたつみさんの芯に宿る、ちょっとやそっとじゃ消えない明るさ。
妹を、まといつく不幸ごと抱きしめる。
ヒーローだ…!
たとえ悲惨な場面でぼろぼろ涙していても、輪郭のどこかに少年的な明るさが残っている。

もちろん、33歳の男盛りの役者さんに、そんな面ばっかりが主張しているわけじゃなくて。
股旅姿のときは、目元に冷たい凄みがあるし。
舞踊で、客席をじーっと見る自信に満ちた姿には、したたかさを感じる。
大人気劇団を率いて、苦労は絶えないのだろうな。
実際私は、経営者として頭をくるくる回転させていそうな、たつみさんが好きだ。

でもこの方が、ラストショーを踊り終えて、ぎっしり詰まった客席を眺めるとき。
整った顔を崩して、満面スマイル。
内々から沸き出る健やかさ。
たつみんがニコニコしてる、大入りですっごい嬉しそう、とこちらまで嬉しくなる。

美しく、爽やかに作り上げる。(当日舞踊ショーより)


中央に立って、客席を煌々と照らす。(当日舞踊ショーより)


その笑顔に救われる人が多いから。
たつみんスマイルはやっぱり無敵なんだろうな…。

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