劇団悠お芝居「山の兄妹 おちょこの嫁入り物語」

2013.1.3@三吉演芸場

純粋さが、染みる。
うつくしい心が染み入って、くーっと胸に溶ける。
2013年最初に観れたのは、そんな素敵な人情劇でした。

写真・松井悠座長(1/3舞踊ショーより)


大地主・尾張屋の若旦那(きぶしさん)は、母(高野花子さん)の溺愛の下で育ったボンボン息子。
「安産型の大きなお尻の女性とでなければ結婚しません!」
そんな我がままを言って周囲を困らせている。
けれど理想の女性が、現れた。
たまたま山で目の前を通りかかったのは、大きな大きなお尻の女性。
兄の忠兵衛(高橋茂紀さん)と山で二人きりで暮らす、おちょこ(松井悠座長)だった。
尾張屋の母子は早速結婚を申し込み、兄妹も快諾した。

でも、事が決まってから、母子は初めておちょこの顔を見た。
おちょこは不美人通り越して、「味噌汁ぶっかけてから馬に踏まれた」ような顔をしていた。
おののく母子は、自分たちから結婚を申し込んだくせに、なんとかして結婚話をなかったことにしようとする…。

私の大好物・兄妹もの!
お兄ちゃんが妹を何とかして守ろうとする図っていうのがツボを突きまくり。
不美人の妹の結婚話にまつわるドタバタっていう構図は、劇団花吹雪で観た「兄の真心」を思い出す。

そう、これも兄と妹の真心の話。
せっかく結婚が決まったのに、おちょこはしょんぼりと忠兵衛に言う。
「おら、やっぱり嫁こさ行かねえ」
「おらが嫁に行ったら、あんちゃんがこの広い山の中で、一人になってしまう」
俯き加減に、手持無沙汰に地面を蹴りながら。
忠兵衛は慌ててこう返す。
「わかった!兄ちゃんも嫁こさもらうから!お前は嫁に行け!」
兄も嫁をもらうなら安心だと、おちょこは一転して喜ぶ。
「じゃあ、おらやっぱり嫁こさ行くだ、あんちゃん!」

ああ、あったかいなぁ。優しいなぁ。
この兄妹の純は染みる。

その直後の場面で、尾張屋の母子がおちょこを追い返すえげつない算段をしているだけに…
きぶしさん・高野花子さんが上手い故に、この場面はもういやらしくて!(褒めてます)

さて、松井悠座長演じるおちょこ。
座長の甘やかな眼差しを活かした表情もさることながら。
「声」がすごいと思いました。
朴訥で、温かくて、ちょっとダミ声で、底に今までの苦労がにじむ。
そんな声がひたすら慕わしく、
「あんちゃ~ん」
って呼ぶのです。
山育ちのおちょこの優しさ。
洗練されてないけど、あまりにむき出しだけど、ほわぁっと温かな手触り。

そんなおちょこが、尾張屋の母子に追い返されそうになり、泣き声を出すと。
あああ~…、泣くな、泣かないで、と、
客席から背中をぽんぽんと叩きたくなってしまう。

クライマックスの場面は、おちょこの今までの人生の語り。
聞いていると、忠兵衛がいかに妹を大事に育てたかが分かる。

おちょこが自分の醜さに気づかないよう、
「おちょこ、お前はかわいいから、鏡を見る必要なんてない」
家中の鏡を割って。
「おちょこ、お前はかわいい、かわいい」
繰り返し繰り返し言い続けて。
山の中で、たった一人で妹を守ってきた忠兵衛。
嫁入り化粧を施した妹の顔を見て、
「いつもにも増してきれいだなぁ!」と…

いかん、泣けてきた。
高橋茂紀さんの朗らかな笑顔が、誠実な忠兵衛にまたハマるのです。

結局尾張屋の母子は、おちょこと忠兵衛の生い立ちを聞いて改心する。
我がまま放題だった若旦那が、おちょこに「共に白髪の生えるまで」ともう一度求婚する場面では、心に迫るものがありました。

「おちょこ、お前はかわいい、かわいい」
繰り返されてきた、妹を守る呪文。
温かな呪文。
山の兄妹の心は、どこまでもほろほろと美しい。
新年最初に出会うお芝居としては、抜群で御座いました。


観劇感想の後になってしまいましたが、このブログにいらして下さる皆様。
往く年は大変お世話になりました。
来たる年もよろしくお願いいたします。

始まったばかりの一年を、どんなお芝居で満たせるだろう?
今は厳冬、お芝居で心に暖を灯して。
春が訪れれば、新芽のように元気で若々しい役者さんが観たくなるやも。
夏の日差しの下、日傘を差して劇場へいそいそ。
秋の人恋しい風に吹かれてセンターへいそいそ、これもいい。
そしてきっとあっという間に、また寒い日が来る。

何にしろ、たくさん、たくさん、良いお芝居に出逢える一年でありますように!
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コメント

泣きました

新年早々の素晴らしいレポに思わず落涙(TT)他の記事にもにじみ出ていますが、管理人様の純粋さにこちらこそ心に灯りをともしていただきました(^^)

自分にも兄がいて、忠兵衛とは比べ物にならないけど、一応大事にはしてもらってきたんだなぁとほんわり思い出しました。まあ、「お前は女じゃない」と言われ続けてきたけれども(笑)大衆演劇は庶民の物語をよく取り上げてくれるから「いい」ですね♪

今年も素敵な記事が読めるのを楽しみにしています~v-10

もべさん、素敵なコメントありがとうございます♪
心から励みになります。

大衆演劇のお芝居を観てるとなんだか純粋な、素直~な気持ちになるんですよね…。
もべさんの言われる通り、大衆演劇は庶民の物語。庶民の心の底にある「人情」を見せてくれるので、うんうん!そうだよね!と共感のうちに心がほぐれてきますv-22

もべさんのお兄様も、妹を思う心は忠兵衛ときっと同じなんだろうなぁと思いますv-254
兄を慕う妹がかわいくないはずがない!(断言)

まだまだ駆けだしの未熟なブログですが、ホントにありがとうございます。
今年も楽しく更新していきます!

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