至上の花道―オーエス劇場×劇団KAZUMA―

2015.1.17-18

これが、花道という装置なのか。
客席の中にありながら、俗世から一段浮き上がって。
化粧をほどこした心身が、異界の花になりかけながら通る道。

オーエス劇場は椅子席なので。
劇場右手から見ると、椅子に座ったお客さんの全身と、花道に立つ役者さんの全身が、全部きれいに見える。
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“あの”オーエス劇場に、2015年1月、劇団KAZUMAが乗ると聞いたとき。
なんて組み合わせ!と一人興奮した。
彼らがあの影の溜まりに抱きとられるとき、どんな舞台が観られるだろう?

オーエス劇場が面白いと聞いたのは2年前。
2013年8月、人生初の来阪記念日にも、新大阪で新幹線を降りて迷わず直行した。

路地にぬっと突き出た看板の、古びた感じとか。
開演前なのに客席がやたら暗いとか。
座付きのお客さんたちの、劇場にまさに根を下ろしている感とか。
劇場のまとう、なまなましい湿り気がたまらない。

そして心待ちにしていた、先週の土日。
私がわぁ!と目を見開いたのは、花道の光景だった。
役者さんが“君臨している感”がすごい。
一馬座長が、将さんが……一人一人が立ち踊るたび。
暗い劇場で密集するお客さんの頭から、彼らの体だけが白々と浮き上がる。

特に、胸がヒヤッとした舞踊が3本ある。
まず、1本目はこの方の紡ぐ世界。

柚姫将副座長(2015/1/18個人舞踊「旅路」より)
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将さんの踊る杉良太郎さんの「旅路」は、昨年6月の八尾グランドホテル以来。
そのときは、八尾グラの高い天井に黄昏が広がるのを見た。
今回見たのは、オーエスの花道に夜汽車が走って行くところ。

―目を閉じてサヨナラと 呟くやつれた後影(うしろかげ)―
まだ別れの中にいるような面持ちで、将さんが手を振っていた。
明かりの降る花道が、汽車の線路になった。
寂しく吐かれる、汽車の煙が見えた。

―野良猫を可哀そうねと抱き上げた―
抱いていた猫はずいぶん大きくて。
感情を一つ一つ、掌で握りしめるように、丁寧に踊っていた。

2本目は、この女優さん。

千咲菜野芭さん(2015/1/18個人舞踊「SAND BEIGE~砂漠へ~」より)
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姫、降臨…!
落ちついたお着物や芸者さんも素敵だけど、私はこういったお姫様スタイルの菜野芭ちゃんが一番好きだ。
そこに貫かれる“自己”が好きだ。
キラキラのティアラと、なびくショール。
こまやかな金細工を見るときのように、空気がきらびやかに潤う。
こういうの、今まで劇団KAZUMAになかったなぁ(少なくとも私が知ってからは)。

昨年夏から来た彼女が、新しい色を挿してくれる。
たおやかに見えながら、そこにはかなりの豪胆さが必要だろう。

彼女のキラキラした“自己”は、暗いオーエスの会場ではさらに光っていた。
マジック手書きの貼り出しが並ぶ壁を、輝くショールが横切る。
群集の中へ、花道へ、菜野芭ちゃんが誇り高そうに歩み出る。

さて3本目。
この舞踊の光景は忘れられない。

千咲大介座長(2015/1/18個人舞踊より)


よく耳にする和尚さんの曲なのだけど、曲名不明。
歌詞を聞きとると、和尚さんが大好きなのは競馬競輪、朝寝朝酒と、ただれた生活を歌いあげる。
(一体どっからこんな曲見つけてきたんだろう…)
リズミカルな曲なので、満員の会場はこぞって手拍子。

――死んで極楽より生きて地獄。
そんな歌詞に乗せて、“生臭坊主”が楽しげに花道に差しかかる
どこか妖しさが潜む目が、黒々とした客席を舐めるように見る。
ノリノリの手拍子をする手、手、手が、大介さんの足元を覆う。

なんだかまるで、会場みんなで生臭坊主の説教を聞いているみたいじゃないか。

大介さんが支配する客席は、つい30分くらい前まで。
常連さんたちの朝昼ご飯のにおいに満ちていた(ブランチとはあえて言わない)。
パキンと割り箸の音がして、おにぎりとか焼きそばとかお寿司とか、うちから持ってきた漬物とかが、そこら中で消費されていた。

生きる臭みがぬくぬくと発酵している、この劇場で。
法会が開かれる。
説かれるのは、死んで極楽より生きて地獄!
人々の熱に埋もれて、賞賛を浴びる坊主は、墨色の衣で反転する。
…なんつう絵だ…
光景にすっかり取りこまれて、強烈なパワーに焼かれて、妙な笑いすら起こしそうだった。

客席から、生活のしずりを託されたとき。
その重みを昇華するために、役者さんの姿は至上の花になろうとするのかもしれない。

とりあえず、次にオーエス劇場に行ったときは。
私も喫茶店のモーニングは我慢して、劇場で朝昼ご飯を食べよう…!

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コメント

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合う劇場ってありますよね。
劇団と劇場(の座付きのお客さん)が相思相愛なのを見ると、ああこれがきっと旅芝居なんだな…という気になります。

おお!素敵な情報ありがとうございます!

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