劇団KAZUMAお芝居「身代わり半次郎」

2015.1.17 夜の部@オーエス劇場

もし劇団KAZUMAを観たことのない方で、かつ大衆演劇自体初めてという方を。
お誘いするなら、外題は『身代わり半次郎』がいいな。

私が一番思い入れているのは『生首仁義』だけど、暗い・重い・痛いの三拍子なので観る人の好みによるかなぁと思うし。
『文七元結』『紺屋高尾』も傑作だけど、大衆演劇の芝居以前に落語や浪曲で有名だし。

『身代わり半次郎』は、多分、多くの人の胸にストンと落ちる芝居。
かつ。
私の望む、“大衆演劇にはこうあって欲しい”要素が全部入った芝居。

週末の神戸出張の後。
ガラガラとキャリーケースを引いて、神戸線と地下鉄で動物園前へ。
オーエス劇場で、1年3か月ぶりに『身代わり半次郎』に当たった。

話の核になるのは、柚姫将さんと龍美佑馬さんだ。

柚姫将副座長(当日舞踊ショーより)

それにしても将さん、副座長の貫禄が滲んでたなあ。

龍美佑馬さん(1/18舞踊ショーより)

佑馬さんはグッとしなやかになられたし。

盲目の老人・甚兵衛(龍美佑馬さん)と娘のお美代(千咲菜野芭さん)のところに、出奔していた息子の半次郎が帰って来た。
…というのは思いこみで。
甚兵衛は目が見えない。
幼かったお美代は兄の顔を覚えていない。
父娘が半次郎だと信じ込んでいるのは、実は半次郎を手にかけた信州小諸の源太(柚姫将副座長)なのだ。

実は、源太は半次郎の遺品を届け、彼を斬ったことを告げるために来たのだった。
甚兵衛の誤解があまりに心苦しく、立ち去ろうとする。
だが、甚兵衛が恋しそうに、
「半次郎―、はよう来い」
と呼ぶのを聞いて出立の足が止まった。
そして、死に際の半次郎が、親孝行したがっていたことを思い返す。
半次郎の遺品の風呂敷を、大切そうに抱えて、将さんがつぶやく。
「半次郎さん、お名前、お借りいたしやす」
源太は自らの親を知らないという。
「ひと月、十日、いや、たとえ今日一日だけだとしても――」
半次郎の代わりに、親孝行を。

死なせた相手の親へ、身代わりの孝行――
取り返せない過ちと、切羽詰まった情けが、合わさって物語の枠を組む。
源太が旅支度を解いて上がりこむ、居間の風景がやさしく湿る。

特に胸に迫る場面が二つ。
「親孝行の手始めだ。とっつぁん、肩揉んでやるよ」
まず一つ目は、源太が甚兵衛の肩を揉む場面。
“親子”の話題は、お美代の縁談の相手である、与吉(冴刃竜也副座長)について。
「与吉はな、この村に一軒だけ茶店があるんだが、そこのせがれじゃ」
「そこなら俺も行った事あるよ。俺に飯を持ってきた奴だ」
「おおそうか、お前も知っとるか」
「良さそうな奴じゃないか」
「兄ちゃんのお眼鏡にもかなったか、なら安心じゃな」
軽く、肩越しに視線を触れ合わせながらの会話。
ぽっかりと照らされた親子の姿に、将さんの落ちつき気味の声と、佑馬さんの老け役の声が、一緒に揉みこまれる。

つくづく、全身に染みるような安らぎ感…
30代と40代のお兄さん同士の絡みで、こんなに空気がほのぼのするのは、けっこう驚異的だと思う。
(私は本当に将さんと佑馬さんのペアが好きで、少し前にこんな記事も書いた)

そしてもう一つ。
終盤、前の場面とまるで対になるように、今度は佑馬さんが将さんの肩を抱く場面がある。
「いいんです、それで(斬らないで)いいんですよ」
半次郎の兄貴分(ゲスト・藤千代之助さん)が、源太を仇討ちにやって来た時。
盲目の身をよたよたと引きずって、甚兵衛が止めに入る。
甚兵衛は、既に知っているはずだった。
本物の半次郎が、もうこの世に居ないこと。
手にかけたのが、今目の前にいる源太だということ。

それでも。
「これは、わしのせがれの、半次郎じゃ」
多分、老人の暗闇の世界で。
肩を揉む温かな指先は、優しく語りかける声は、確かに“せがれ”のものだったのだ。

甚兵衛の言葉を聞いて。
源太の目が、心の深いところを衝かれたみたいに見開かれる。
舞台中央に跪いた将さんの表情は、まず驚愕、次に哀切に流れる。

佑馬さんの甚兵衛は、輪をかけて哀しい。
本物の半次郎の遺髪に縋って泣きつつも。
「半次郎!」
偽物の半次郎=源太を抱きしめて呼ぶ。

偽りの親子の時間から、割り出された確かな体温。
どん詰まった人生の悲哀を割って、幸福が指にすくわれる。

やっぱりザ・大衆演劇なお芝居が、私は好きだな。
一馬座長の助平な貸元とか、大介さんのちゃっかり者の侍とか、気楽な笑いがいっぱい散りばめられているのも楽しかった。

次の記事は、今回の遠征最大の目的――
オーエス劇場×劇団KAZUMAのお話。

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