たつみ演劇BOXお芝居「宇之吉涙雨」(ダイヤDAY)

2015.1.10 夜の部@浅草木馬館

小泉ダイヤ座長はどうしてあんなに魅力的なのか?
東京での第一回ダイヤDAY。
輝かしい弟座長の光源を覗きこめればいいな、と木馬館へ向かった。

小泉ダイヤ座長(当日ラストショー「天城越え」より)


ダイヤさんというと、まず“声の良さ”が頭に浮かぶ。
太く、聞きやすく、古い日本映画っぽいパッキリ割れる感じの発声が心地良い。
個人的に、最近聞いたダイヤさんの声で一番好きなのは、1/2(金)のお芝居『春雨新五郎』のセリフ。
「西は三十三か国、東は三十三か国、合わせて六十六か国、全国津々浦々を旅駆けた○○先生の大活躍、始まり、始まりぃ~!」
(申し訳ないことに、どうしてもこの先生の名前が思い出せない…)
このセリフが轟いたとき、体の底から澱みがパッと晴れるような爽快感があった。

そしてダイヤDAYのお芝居『宇之吉涙雨』で、私がようやく気づいたこと。
良い声というのはキャラクターを描出する上で、すごく機能するんだ!

「俺は小せえときから、どんな大ケガしたって、“痛い!”と一度だって言ったことはねえんです。片腕を落とされて、もし俺が痛え!と言ったなら、かまうことはねえ、もう片方の腕も落としてくんなさい」
ダイヤさん演じる宇之吉が、小金井小次郎親分(小泉たつみ座長)に言うセリフ。
威勢よく背をさらして、腕を差し出しながら、
“小せえときから”とか“痛い”とか、一つ一つの言葉が綺麗に切れ上がって響く。
滲むのは、少年のような怖いもの知らずの心。

茶店の縁台にあぐらを掻いて。
逃亡中の女郎(辰巳満月さん)と幼馴染(嵐山瞳太郎さん)の話を聞き、
「二十両か、二十両あればお前たちは借金を返せて助かるんだな」
調子に乗って小金井小次郎親分を騙り、
「へへ、聞いただろ、俺、小金井小次郎」
と言った相手が、まさに本物だったことが発覚して、
「勘弁しておくんなせえ…!」
セリフによって上ずった声、後悔に震える低い声、どれも活きて響いて。
宇之吉というキャラクターの気持ちの大きさ、ややお調子者なところまで、細かい輪郭を伝えてくれた。

そしてダイヤさんのお芝居と言えば、熱。
小泉家の三姉弟は、私が敬愛してやまない姉上を筆頭に、それぞれに芸達者だけど。
ダイヤさんが主役の芝居では、パワー全開!と熱たぎる演技にワクワクしている。

特に、宇之吉が母(辰巳龍子さん)に呼びかけながら斬り合いをする場面だ。
自分を探して旅していた母と再会し、
「すぐにでも一緒に故郷に帰ろう、これからは親孝行するからな」
と涙ながらに母の手を取ったところで。
宝良典さん率いるやくざ連中が、女郎を逃がされた恨みから、宇之吉を取り囲む。
盲目の母を不安がらせまいと、宇之吉はこんな風に話す。
「友達としばらく話があるんだ。長くなりそうでな、話が終わるまで、そうだな、あっちに掘立小屋があるだろ、あそこで待っててくれ」

母を安心させるため、何度も斬り合いの中から呼びかける。
腹に刀を受けても気力で笑い、
「おっかさーん…!」
と叫ぶ。
「宇之よ…!」
と声が返って来るのを聞いて、また刀を握る。
骨をぶつけ、歯を剥くような猛々しい立ち回り。
ぐりりと見開かれる、ダイヤさんの大きな目。
どれだけ斬られても自分は死なない、母を連れて帰るのだから死んでたまるか。
迸る心意気が迫ってくるようだ。

でも。
満身創痍で、息も絶え絶えの宇之吉に。
隠れていた親分(宝良典さん)が、背中からとどめを刺す。

次の瞬間、観客に見せられたのは、ダイヤさんの悲痛に歪む顔。
悔し涙すら流しそうな。
細くつぶやく、
「ダメか…」

――一緒に故郷に帰ろう、これからは親孝行するからな。
死んでも諦めたくなかったことを、諦める無念が滴り落ちる。

宇之吉は、気持ちが大きくて、ややお調子者。
――小せえときから、“痛い!”と一度だって言ったことはねえんです。
その気の強さも運の強さも、今ここで尽きるのだと突きつけられる。
貫かれたままの姿に諦念が吹き抜けて、見ていて涙が出た。

ダイヤさんの演技は、いつも熱たぎるものなんだけど。
その表面に絡む靄があって、グイグイ押し切らない。
三人兄弟の末っ子であるこの方が、生来持っている性質なのか。
やさしさとも、甘さとも、情ともつかない。
ふっと訪れる何かが、かすかな哀愁を呼び覚ます。

せっかくのダイヤDAY、お写真をもう少し載せてから終わります。

切れ味鋭く、血は熱く。
(当日群舞「関東流れ唄」より)


姿やさしく、ほんのり甘く。
(当日個人舞踊「他人の関係」より)


まだ30歳だそう。
光の行く手は、なお遠くなお明るい。

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2013年の関東公演でもダイヤさんの芝居が好きでした↓
「お祭提灯」(ダイヤさん三枚目役。当時珍しいと話していた)
「石松裸喧嘩」(勢い溢れる可愛い石松だった)
「風雪親子旅」(力強さの中に、一粒浮かぶ泣きの風合い)

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