優しく、まあるく、とびっきり―不動倭座長(剣戟はる駒座〈倭組〉)―

“倭”と漢字にすると勇ましいけれど。
“やまと”という音は、なんと安らかな響きだろう。
“や”が甘い音で、“ま”にとろみがあって、“と”でキュッと締める。

そんな名前の座長さんは、たたずまいも、なんとなく甘やかだ。

不動倭座長(2014/12/21@松山劇場)


遅ればせながら、明けましておめでとうございます!

2015年一つ目の記事は、2014年に書きそびれていた一本。
2014/12/20(土)-21(日)、親戚に会いに四国に行った際、松山劇場にも足を運んだ。

7か月ぶりに〈倭組〉を見て、改めて倭さんの持つ吸引力に驚いた。
「芸はまだまだかもしれませんが、とにかく楽しく!楽しかったなーと思っていただけるお時間を作っていきます!」
常に潤みのある大きな瞳が、客席に降りかかるようだ。

この方の舞台は、なんでいつもこんなに明るいのだろう。
私の体の底にもパッと照射する、陽射しの源はなんだろう?

2013年10月-2014年4月の関東公演を、私は思い返す。
2013年10月の旗揚げ。
いきなり、馴染みの薄いはずの関東周り。
相当に難しいコースだということは、私のぼんやりした知識でも想像できた。

旗揚げ翌月の11月、私は茨城の千代田ラドン温泉センターへ行った(当時の記事)。
駅からかなり遠いためか、夜の部のお客さんは20人程度だった。
そこに、賑やかに鳴り出した、お馴染み『一本釣り』。
ぽつぽつと座ったお客さんを前に、座員さんがずらり揃って、先頭はもちろん倭さんで。
「そーれっ!」
と掛け声に乗せて、元気いっぱいに釣り竿を振る。

「どうしたら茨城のお客さんに気に入ってもらえるのかわからないから、ああしろこうしろと、ぜひ僕たちに言ってください」
倭さんの真摯な口上からは、全身で客席を受け止めようとしているのが伝わってきた。

全身で、全力で。
その土地、その土地のお客さんが喜ぶものを。
旗揚げから辿ったのは、静岡、茨城、福島、秋田、神奈川、山梨、再び静岡。

「12月には福島にも行ったんです。福島のお客さんに、少しでも元気になっていただきたくて」
「これは1月に秋田のホテルこまちに乗ったとき、作った舞踊ショーなんです。秋田のお客さんがとても喜んでくれて、ぜひ秋田の風を持って行ってほしいと言っていただきました」
「我々は3月には山梨に参ります。山梨のお客さんを元気にして、癒してきます!」

丸っこい体つきで、一生懸命を絵に描いたように話される。
あの大きな瞳は、多分、目の前にいるお客さんから逸らされることがない。
“お客さんを元気にするお仕事” から基本の軸がずれないのだと思う。

だから、土地が違えど風土が違えど。
倭さんの明るさは、関東のお客さんの心に灯ったのかもしれない。

1月の秋田では、地元のファンの方に聞いたところ、例にない大入りを出したという。
2月の川崎・大島劇場には私も通った。
日に日に客席が満杯に近づいていくのがわかり、千秋楽は立見も出た。
3月の山梨のスパランドホテル内藤では、口上の最中に、客席後方から呼びかける男性客がいた。
「不動倭座長が面白いって聞いて、僕ら長野から来たんだよ!」
聞いた途端、倭さんは弾かれたように立ち上がって。
広い宴会場を駆け抜けて、一番後ろにいた男性客の所に、まっしぐらに走って行った。
飛びつくように、男性客と固く固く握手されていた。

旗揚げ当時のインタビューでは、こんな風に語られていた。
“自分の考えている世界観がお客さんにどこまで通じるか試してみたいですね”
“それで叩かれても自分で感じながら進化していきたいです”

(『演劇グラフ』2013年11月号)

この方は、舞台でやってみたいことが、とにかくたくさんあるんだろうな。
最近の漫画や映画、大衆演劇以外の演劇も、色々吸収しているんじゃないだろうか。
(名物のコントも、時々シュールな匂いの笑いがあって驚く)

その情熱に感化されたのか。
倭さんの笑顔を見ると、無性に嬉しくなってしまう。
理由もなく、良いことが起きる気までしてくる。

この正月公演は梅南座。
2014年5月から1年開けずの再乗りだ。
昨年5月の梅南座には、ゴールデンウィークを利用して私も行った。
隣席の男性の方が、違うお名前だった十代の頃の倭さんをご存知だと話してくれた。
「今の名前になってからは初めて観た。倭…なかなか良い名前を付けたもんだね。う~ん、良い名前だ」
しみじみと繰り返していた。

「やまとっ!」
かかるハンチョウも、どことなくまろやかな音に聞こえる。
声援を受けて、舞台中央から振り返る、その笑みは。



「や」さしく、
「ま」あるく、
「と」びっきり…
ってところかな?

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昨年も、倭さんのパワーについて書きたくなったことがあります。
⇒客席の手を引いて―剣戟はる駒座〈倭組〉・不動倭座長―

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