2014年 珠玉の一本―舞踊編―

お芝居みたいな舞踊が好きだ。
ひとり芝居大好き。当て振り大好き。
世界観に引っ張り込んでくれるような舞踊が観られると、客席でカメラを抱えながら、頭はその世界に飛んでいる。

2014年末の珠玉の一本シリーズは、悲劇編喜劇編敵役編を書いて。
最後の記事は、舞踊の傑作を振り返って終わります。
挙げさせていただいたのは、9つの舞踊。
少々長めの記事になりましたので、のんびりお付き合いくださいませ。

勝小虎代表代行(剣戟はる駒座〈倭組〉) 「ひばりの佐渡情話」
2014.2.11 昼の部@大島劇場



悲し、遠し、佐渡の面影。
勝小虎さんの女形舞踊は、枝垂れるようななまめかしさが、しとしとと胸に残る。
『ひばりの佐渡情話』で息を飲んだのは、滑るような所作の向こうに、佐渡の曇り景色がおぼろげに現れ出ること。
たとえば、両手が波の形を作って揺れる。
ざんぶ、ざんぶと、静かな波が客席を手招く。
限りなく霞んで、消えてしまう手前の、こごりのような色に見えた。
⇒当時の記事
⇒同じ大島劇場で観た『夢日記』も傑作でした。

島崎寿恵さん(まな美座) 「くらやみ橋から」
2014.4.12@メヌマラドン温泉ホテル



この方の至芸が観たくて、3時間かけてメヌマラドン温泉ホテルまで行った。
―それ以来この橋 くらやみ橋と呼ばれてますねん―
大月みやこの歌いだしのセリフが終わった後。
寿恵さんの独自のセリフが加わる。
「そう言う私も、川の底を覗きこむように生きてきました…」
「というより、生かされてきたんやなー…」
虚ろな眼窩は、下を向いている。
やがて寿恵さんは、何かを振り切るように、泣き出しそうな顔を上げた。
「まるで――抜け殻や!」
掬いきれない悲しみが、舞台空間を食い破る。
2015年、必ず再会したい女優さんだ。

辰巳小龍さん(たつみ演劇BOX) 「暗夜の心中立て」
2014.5.4 夜の部@浪速クラブ
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『暗夜の心中立て』は、2014年の舞踊ショー流行曲に挙げられると思う。
中でも辰巳小龍さんの舞踊は、やはり圧巻だった。
黒と橙の衣装の花魁は、叶わない恋に身を震わせる。
思い極まったとき、紅い包みから毒をあおる。
その次の瞬間――血を流す口元、カッと開いた目!
両腕で死を抱きとるように、客席を向く姿は、今も焼きついている。

沢村菊乃助さん(玄海竜二一座)「番凩」
2014.6.7 夜の部@浅草木馬館
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人間の体って、こんな風に動くんだ…!
腕の一振り、脚の一筋で、ボカロのハイテンポな曲を操っているようだ。
劇団荒城ゲストに来ていた6月、菊乃助さんを初めて観た。
まだ23歳なのに、面立ちの雰囲気が静かなせいか。
舞台姿は水を打つように清く、涼しい。
12月の座長襲名、おめでとうございます。
ゆりかもめでコミケへ向かう、オタクの座長さん…どんな舞台世界を見せてくれるだろう。
⇒当時の記事

荒城真吾座長(劇団荒城) 「歌麿」
2014.6.14 夜の部@浅草木馬館
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右手には絵筆。
引き絞るような厳しい眼差しで、自分が描く“女”を見つめる。
真吾さんが演じるのは絵師だ。
――私 まるで浮世絵 歌麿――
曲が進むにつれて、絵の中の女に恋情を燃やし、やがて狂気に陥る。
耳慣れた『歌麿』だけど、こんな表現方法があるのか…。
真吾さんの頭の中では独自の世界観が尖っている感じがして、恐る恐る覗きたくなる。

柚姫将副座長(劇団KAZUMA) 「夢一夜」
2014.6.20 昼の部@八尾グランドホテル



今年の将さんの舞踊を思い出すと、本当に女形が美しくなられたなぁと思う。
将さんの女形からは、演じられる“女性”の健気さや真面目さが薫る。
『夢一夜』を選んだのは、ある一シーンに心奪われたから。
――最後の仕上げに 手鏡見れば――
のところで、大方整えた髪に手をやって、右、左、と軽く首を曲げ、そっと髪に触れて。
手鏡をひっそり覗きこむ。
女の人の小さな部屋に、客席ごと閉じこもっていくような感覚に陥った。
⇒当時の記事

桜春之丞座長(劇団花吹雪) 「化粧」
2014.7.13 夜の部@三吉演芸場



墨色の着物に、儚い花が咲いていた。
春之丞さんが演じるのは、好きな人に去られた女。
顔を覆って、独り泣く。
――バカだね バカだね バカのくせに
愛してもらえるつもりでいたなんて――

華やかで可憐な女形が、恋に破れてしおれる。
勝気に歩んでいる人の、ふとした心弱さを見る思いがして、涙してしまった。
⇒当時の記事

大川竜之助座長(劇団竜之助) 「大きな古時計」
2014.8.20 夜の部@三吉演芸場



チクタク、チクタク。
時計の針に見立てられた扇子が動く。
たまたま三吉演芸場の近くに用があった際、あの大川竜之助さんが劇団十六夜のゲストに来ていると聞いて、急きょ飛び込んだ。
『大きな古時計』の中盤、竜之助さんの白い袴姿がぴたりと固まる。
手元の扇子だけが時を刻み、空気が張りつめる。
――今はもう動かない その時計――
お花を付けた方も、舞踊の最中には入らず、曲が終わってから渡されていた。
止まっていく時計の物語は、誰も入れない、一人の世界だった。

橘小次郎さん(橘劇団) 「夜叉のように」
2014.9.21 夜の部@篠原演芸場



私の2014年の大衆演劇は、この舞踊抜きでは語れない。
目に止まらない速度で、付け替えられる面。
技術的なすごさに加えて、表される情念の生々しさに衝撃を受けた。
ぎり、ぎりと、地の底で悶える痛みが、私の胸にも差し込まれるようだった。
一の面は、女。
二の面は、怨。
三の面は、夜叉。
四の面は…
入れ替わり立ち替わり、現れる恨みの貌。
その合間に挟まる小次郎さんの素顔が、穏やかな目つきなのがかえって憑依めいている。
ああ、芸を観た!という高揚がいつまでも残った。
⇒当時の記事

「2014年 珠玉の一本」シリーズ、これにておしまい。
長い振り返りにお付き合いいただき、ありがとうございました。

大みそかですので、いつも読んでくださる方へご挨拶。
「お江戸の夢桟敷」は、開始からようやく2年が経ったところ。
おぼつかない筆ながら、舞台から受け取ったものを、私の手から貴方の手にお分けする気持ちで、書いております。
今年もありがとうございました。
来年も、大衆演劇の世界にひしめく息づかいを、敬意をこめて書き残していきたいです。
どうか、貴方もご一緒に。
良いお年を!

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いつも本当にありがとうございます。
珠玉の一本シリーズ、こんな良い芝居・舞踊がありました!すごいですよね!とお伝えする気持ちで書いていました。
楽しいと言っていただけて、心底嬉しいです。

大衆演劇、本当、楽しいですよね!
色々あっても変化を寂しく思っても、やっぱり楽しいです。

劇団KAZUMAはやっぱり大好きです。
あの温かさ、アットホーム感、言葉にならない魅力…一体何なんでしょう(笑)
一馬座長のお人柄なのだろうとつくづく感じます。

1~3月の劇団KAZUMA関西公演にはちょこちょこいる予定ですので、お会いできることを祈っています。
良いお年を、そして来年もよろしくお願いします♪

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