樋口征次郎一座お芝居「生きたり死んだり」

2014.12.12 夜の部@一宮芸能館SAZAN

“オリジナル”を貫く人って、きっと面白い。
『演劇グラフ』の座長大会の記事で見かけるたびに。
着物の座長さんの写真が並ぶ中で、樋口征次郎座長が着こなすファンタジックなコスチュームは目を引いた。

仕事で名古屋出張の12/12(金)に、樋口征次郎一座が一宮にいると知って。
2か月も前から楽しみにしていた、初・樋口体験。

樋口征次郎座長(当日舞踊ショーより)


「お芝居見る所はそのドアの向こうです~」
一宮芸能館SAZANで受付をすませて、案内されたドアを開けようと手を伸ばすと。
バンと向こうから開いて、驚いた。
「いらっしゃいませ、好きな所座ってくださいね!」
そして開けてくれた人の顔を見て、なおさらびっくりした。
征次郎座長ご本人!
柔らかなスマイル、すらっと高い背にピンクのTシャツがよく似合う。
いきなりお会いできてしまった。

征次郎さんと、座員の風吹千春さんが、入口でお出迎えに出てらした。
「東京から来ました!前から樋口さんのところ観たかったんです」
と言ったら、「東京から?!」と驚かれて、でも喜んでくださったみたい。

開演を待つ間、地元のお客さんにビールをいただき、お相伴にあずかった。
親しげな笑い声に振り返ると、準備前の役者さんと従業員さんたちが、入口周りで雑談中だった。
小さな館の、緩やかな空間。
常連さん御用達の、小さな酒場を思わせた。

さてお芝居は、「生きたり死んだり」という喜劇。
夫婦の亀(光條優貴さん・男役)と、お鶴(樋口征次郎座長・女役)は、借金で首が回らない。
でも、せめて正月くらいは人並みに迎えたい。
お鶴が指折ってつぶやく。
「お酒と、お餅と、門松だって飾りたいし…」

そこで亀は、うまい金策を思いつく。
「昨年の村芝居だ。川に身投げしようとして、通りかかった人に金を恵んでもらうってのがあったな。俺も、あれと同じことをしてみるか」
亀の身投げのフリはうまくいき、通りかかった大家(三波若菜さん)が慌てて止めに入る。
「女房のお鶴のやつが、豆腐に頭をぶつけて死にまして、でもその葬式をあげる金もないんです」
涙ながらの訴えで、葬式代として二、三両の金を出してくれるという約束をとりつけた。

が、その頃、妻のお鶴も全く同じことをしていた。
「四半時前、うちの人が階段から落ちて、肝硬変で死んだんです。あたしも後を追わないと」
通りかかった金貸しのお兼(風吹千春さん)から、やはり葬式代を恵んでもらうことに成功する。

「大家さんがうちに来たら、お鶴、お前が死んだことにするんだ」
「じゃあ、お兼さんが来たら、あんたが死んだことにするのね」
ごまかすために、代わる代わる、死んだ真似を繰り返す夫婦がおかしかった。

個人的な大ヒットポイント。
征次郎座長が女役を演じるのが、とにかく可愛い!

「征次郎座長の演じる女役が可愛い」と、日本語を誤ったわけではない。
女形芝居をよくされる座長さん方のような、実際の女性と見まごう可憐さ…というのとは一味違ったからだ。
征次郎さんは、高く伸びる骨っぽい体つきといい、弦を弾くように切れる目線といい、立ち役がいかにも冴える感じ。
実際、普段ほとんど女形や女役はされないそう。

持ち前の精悍さを消しきらずに、「女房・お鶴」を演じられる様が、なんだか健気なのだ。
硬質な体躯を、紺色の女の着物にくたっと折り畳んで。
夫役の優貴さんと絡むときは、高い腰をやや落として。
ラストショーの黒田節で槍をくるくる回していた、大きな手をしなりと重ねてついて。
「うちの人が死んだんですよ、なぜこんなときにお正月なんて言ってられるんです!」
泣き崩れる芝居をしてみせる。

零れる男性っぷりを、ちょっと窮屈そうに女役に押し込んでいる。
つつっと手を伸べて、この座長さんを愛でたくなってしまう。

思わず、普段は撮らない口上のお写真も撮らせていただいたので、イメージを伝えられるだろうか。↓


身投げのフリをする場面では、勢いよく、びょんっ!と川に向けてジャンプ。
通りかかったお兼=千春さんが、引き止めながら、時々引っ張られて一緒に飛ぶ!
千春さんがセリフに混ぜて、「おまえさん、夜、元気だね…」と苦笑気味に言うくらいに。

お兼が訪ねてきたときに、死体のはずの夫がウッカリ起き上がってしまって。
ちょっと、ちょっとあんた!死んでてよ!
とばかりに、必死にバシバシと、手拭いで合図するお鶴=征次郎座長。
かっ…可愛い…っ!と壁際の客席で悶えていた。

お話させていただいた印象からも、舞台からも、フランクなお人柄が伝わってきた。
こんな若造が可愛いと連呼するのは生意気かしら…と思いつつも、笑って流してくれそうな大らかさを思い出したので。

舞踊ショーでは例の、独自のキラキラファッションも観られた(最初の写真参照)。
帰り際、楽しかったです、来てよかった!と言うと、
「そう言っていただけてよかった…東京から来ていただいたんだから」
温かさが、目の奥に弾けた。

細く高いシルエットが、SAZANの小さな舞台を、きらきらと染める。
柔らかに、朗らかに。

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