新生劇団春お芝居「質屋の娘」

2014.11.2 昼の部@大宮健康センターゆの郷

質屋の一人娘、ヒロインの名はお玉ちゃん。
「お父様、わたし、きれいー?」
三枚目メイクに歯抜けの顔で、笑み崩れるように尋ねる。
姫川寿賀座長に抱く、愛おしさ。
「お玉ちゃんに惚れた!」
と、一緒に見ていた友人は言っていた。

ただ可愛くて間抜けなキャラクターなんじゃなくって。
女座長さんが、演じているためなんだろうか。
その息遣いに、生の女の人の痛みが滲むのだ。

たとえば、このセリフなんか、ずきずきするくらい痛い。
「ねえ清次郎、このお金、みんな清次郎にあげる。だからお玉を、好きだと言って?」
惚れている手代の清次郎を前にして、お玉ちゃんは愛の言葉を得ようと一生懸命だ。

姫川寿賀座長(11/2舞踊ショーより)


新生劇団春が面白いという話は、色んな人から聞いていたので。
久々に、ゆの郷まで足を伸ばした。
ゆの郷は、今後の外題案内・歴代の劇団紹介などが壁にわかりやすく並べられていて、スタッフの誠意を感じる。

初めての新生劇団春は、つんのめるくらい元気に前に走っていた。
そして姫川寿賀座長は、花の開くような役者さんだった。
それも陽光を呼吸して、強く香る、生花の美しさ。

と思ったのは、お芝居でのお玉ちゃんの言動だ。
リアリティをごくんと飲み込んだように、かなりセリフが生々しい。

姫川小台美さん演じる父(実際は祖父)との会話では、こんな風。
「ねえお父様、お玉、お玉ね…男が欲しい…」
これは、ぐふふ、という笑いつきで。
「いっぱい簪を挿していたほうが綺麗だから、男の人がみんな見るのです」
これは、ごてごてした山車みたいに、簪が大量に乗っかった頭で、えへへと笑って。
「お父様、お玉、最近眠れないのです。体が疼くのです」
これは…実際はもっとどぎついセリフだったんだけど、書きづらい…(笑)

女座長さんだからなのか、お顔の愛くるしさのためか、それとも喋り方が「~のです」と柔らかなせいか。
欲求的なことを口にしても、決して下品にならない。

このお玉ちゃんは、手代の清次郎(姫川春之助座長)に惚れていて、一緒になりたがっている。
だが、清次郎は密かに、お玉ちゃんのお付きのおさよ(姫川世李さん)と恋仲にあった。

つまり、お玉ちゃんはフラレてしまう運命にあるのだ。
「清次郎、おさよが好きなの?」
「はい…!申し訳ありません、お玉お嬢様」
頭を垂れる清次郎を前に、困った子供のような表情。

なんとか清次郎の気を自分に向けさせようと、大枚の小判やら、高値がつく国定忠治の刀やら、質屋の蔵の鍵やらを持ってくる。
「私と一緒になったら、これ全部、清次郎のものよ。だから、お玉を、好きだと言って?」
歯抜けの顔で、にへら。
けど、清次郎は頑としてなびかない。
「これだけ頼んでも、ダメなのですか…?」
お玉ちゃんの頑張りは、痛々しく胸に落ちる。

女の人の、ひたすら身を削る懸命さ。
なんかこれ、覚えのある感じの痛みだ。
自分ばっかり一生懸命で、でも欲しいものは全然手に入らなかった、そんな記憶がぼやぼやと頭の中に沸いてきてしまう…

結局、基本的に人の良いお玉ちゃんは、清次郎を諦める。
気丈に笑ってみせて、故郷へ旅立ったおさよの下へ、清次郎を送り出す。
「さらばじゃ!」
おどけて腕を高く掲げて。
そして、清次郎が見えなくなった瞬間。

じわじわ。
腕が下がる。
ふるふる。
笑顔が崩れる。
一つの恋が終わってしまった。

う・う・う…
そんな泣き声が聞こえてきそうな、寿賀さんの表情。
ゆの郷の柱の後ろで、私はもらい泣きしました。

「お父様、お玉はつくづく男の人と縁がないのですねえ…」
質屋の娘・お玉ちゃんは不細工で、でもいつもヘラヘラ能天気。
そんな演技の向こうから、無類の哀しみが滲んでくる。
「お父様死なないでね。でないと、お玉は一人になってしまいます」
報われない者の哀しみが、舞台にヒリヒリ塗りこまれる。

むき出しの情感が、熱たぎる九州のお芝居っぽいのかな?なんてわかったような口をきいてみる。
両座長とも福岡出身の新生劇団春は、ひたすら元気な劇団さんだった。
お芝居も、舞踊ショーも、座員同士の絡み合いがとにかく多くて、元気が迸っている感じ。

ショー後の挨拶では、座長の言葉の隙間に、若手さんが茶々を入れるので。
「あんたたち、うるさい、ホントに!」
と、寿賀さんは笑い混じりに叱る。
「バカと元気だけが取り柄の劇団ですが、どうぞよろしくお願いします」
そのトップに、この女座長さんがいるというバランスが、私は好きだ。

陽の熱に巻かれて、なまめく花の香。

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