飛ぶ教室―都若丸劇団の話―

2014.10 三吉演芸場公演から

題は懐かしの児童文学。

10月、三吉演芸場を一杯にしていた都若丸さんは、去ってしまいました…
来年の関東公演はないとのこと。
寂しいことに、あの明るい空間にはご無沙汰になりそうだ。

ミックスジュースの時間になると、若丸さんを先頭に、座員さんがゾロゾロ並んで。
座長は、奔放な口火を切る。
「こんな雨の中、台風来てる中、お客さん来てくれてるんですよ!ありがたいでしょ、もっとサービスせんと!」
恒例の歌が終わっても、
「これだけで終わるん?5人、残って!今日来てくれたお客さんのために、なんか踊ってください」
若丸さんは、始終楽しそうだ。
さあ予想してなかっただろう、君たちどうする?と言わんばかりのスマイル。

残った5人の若手さんは、虎徹さん中心に、ポンポンを使って、その場を盛り上げてくれた。
奮闘に、拍手が沸いたあと。
茶目っ気たっぷりに、座長が中央に進み出る。
「これは、皆さん覚えておいてほしいんですけど……座長になるとね、気分次第で5人も踊らせることができるんです(笑)」

私は、こんな風に、座員さんみんなを可愛がっている若丸さんが、一番好きだ。
リーダーとしての、都若丸。
元気な教室の、とびきり元気な“先生”としての、都若丸が好きだ。

若手さんの中でも、まだ経験の浅いメンバーに対しては、もはや親心が沸くらしい。
たとえば、紗助さんのファンの方が、舞台に差し入れをして、紗助さんと握手されていたとき。
ご本人以上に、若丸さんがニコニコしていた。
「紗助はね、元々なかなか前に出られない子だったんで…こういう風にお客さんに好かれてるの見ると、嬉しいんですよ。本当に、嬉しい」

また、雅輝さんと紗助さんの頑張りに話が及ぶと。
「雅輝や紗助は、劇団に入って来た頃、踊っても足元も全然おぼつかなくて…それが、今しっかり踊って、一生懸命お客さんにアピールしてるの見ると、こう、感慨深いんですよね」

そして、共に劇団を支えてきた、長年のメンバーへのねぎらいも忘れない。
花形の星矢さんが、お客さんの笑いをとったとき。
若丸さん自身も笑いながら、
「これからも頑張ってくださいよ!」

全員が中にはけて行くとき、副座長の剛さんに一声。
「剛、いつもありがとう!」

こういう先生にならついて行きたい…
と、思わずつぶやいてしまう。
お客さんの前で若手を褒める・人をねぎらう・労わる。
組織としてのモチベーションの高め方を、実演で見せられている…!
『都若丸に学ぶ教育論』とか本が出せそうな気がします。

若丸さんとそのお弟子さんたちのやり取りに、笑い転げていると。
風通しのいいベンチャー企業とか、健全な熱血指導の部活を連想する。
大衆演劇独特のくさみ(これが魅力と個人的には思っているけど)がなく、空気が爽やかだ。

もちろん、舞台の表側に出てこない人間関係は、たくさんあるのだろう。
口上だっておふざけだって、演芸の一部なのだから。

けれど、若丸さんが休演日にディズニーに行きたかったという話をした後に。
「また、ディズニーみんなで行こうな!」
と声をかけたら、
「「「「「「「はい!」」」」」」」
と、舞台上の全員が笑顔で返していた。
そこにはやはり、相手を慕う心の大きさが読みとれる。

普段、こんな風に見えているだけに。
10/5(土)のお芝居「しじみ売りと八兵衛」の、“指導”場面は面白かった。
やくざの仏一家は、しじみ売りの娘(都ひかるさん)の懇願で、一日だけ織物問屋の振りをすることになって。
若丸さん扮する親分が、子分たちに織物問屋らしい振る舞いを教える。

みんなで、「いらっしゃいませー」の練習をしていたはずが。
「らっしゃっせー、らっしゃっせー、らっしゃっせの、せっ!」
いつの間にか伸びやかに歌い出した親分に、7人の子分が続ける。
「らっしゃっせー、らっしゃっせー、らっしゃっせの、せっ!」
7人全員、ちゃんと背筋を伸ばして、手を前で組んで。
この場面は絶妙におかしかった。

愉快な指導役と、笑いながらついていく生徒たち。
舞台の上の教室を見ているうちに。
なんだか、私にとっても、若丸さんが先生みたいに思えてきたりする。

「一本釣り」で釣られて飛び上がるの、私は慣れない劇団さんだと、なかなか恥ずかしくてためらってしまうんだけど…
若丸さんの場合は、しっかり参加してます。
だって、もう汗だくの“先生”が、2度目のアンコールで、それでも一本釣りをかけるのだもの。
そのサービス精神への敬意を表現するため、釣り竿目がけて、飛びます。
いっせいに飛び上がる、三吉演芸場の客席前方と一緒に。

きらきらした目で、客席=教室を見回して、おっしゃるのだもの。
「今日も釣るぞ~!」
飛びますとも、ぴょんぴょんと!

都若丸座長(10/25送り出しより)


↑ようやく慣れて、ブレずに撮れました、“先生”!

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コメント

関東公演

来年5月、三吉演芸場と聞いています。

>Carlos様

わ、朗報ありがとうございます!待ち遠しいですねー。若丸さんファンの知人に知らせたら、喜色満面でした(*^_^*)

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