あきらさん個人舞踊「雨じゃんじゃん」(都若丸劇団)

2014.10.13 昼の部@三吉演芸場

「あきらさんの踊りって、本当、体に糸を通したみたいですね!」
興奮のまま言った私に、
「いやぁ…ありがとうございます」
と笑ってくれた。
表情が緩むと、茫洋とした陽気さがあらわれる。

芸歴の長さは、30年以上らしい。
慣れた感じのお芝居といい。
糸を手繰るような踊りといい。
あきらさんの舞台には、心惹かれる色づきが、さりげなく散らばっている。

写真・あきらさん(10/13送り出しより)


若丸さんちの内容たっぷりの舞踊ショーでも、とりわけあきらさんの個人舞踊は、私には至福の時間だ。
まず、毎回曲が面白い。
これまで見た7本の個人舞踊は、全部、ド演歌でもなく、ノリノリのJポップでもなく。
Alanとか、「君をのせて」とか、不思議な透明感を持つ曲が多かったように思う。

踊っているときの表情は、常々ポーカーフェイス。
上方をつーっと見つめて、淡々と音にのる。
感情を全然見せない踊りなのに、どうしてか…
反転する体に、ほのかな抒情があるのだ。

10/13(月)の「雨じゃんじゃん」では、降りしきる雨の慕情を見せてくれた。
紺色の着物に、薄紅色の半纏。
手ぬぐいを首にお洒落に巻いて、出てきた。

――雨じゃんじゃん 雨じゃんじゃん
この肩に この胸に 
また嘆きの激しい雨が降る――


この歌は後で調べたら香田晋の歌らしいのだけど。
じゃんじゃん、と歌う独特のリズムが、雨だれを思わせる。

その旋律の上に、あきらさんが足をしゅるりと滑らせる。

舞台中央から、舞台の右端へ移るとき。
右腕を、進む方向に向かって差し出して。
体全体を、すいっと右腕で釣り上げるように、進む。
浅見だけれど、この動き、あきらさん特有のものじゃないだろうか…?

鋼みたいに、まっすぐ差し出された右腕。
そこを軸に、体を巻き取る。
限りなくなめらかな、操り人形の美に近い。
手足の一本一本に、糸が通されていて、糸の跳躍をなぞっているようだ。

――雨じゃんじゃん 雨じゃんじゃん
涸れるまで降るがいい 
身も心もいつしかびしょ濡れて――


曲を聴くうちに、つるつるとした足さばきを見るうちに。
雨の滴が、空間に染み出てくる。
水滴が冷えるあの感じが、肌に思い出される。

不思議なのは、あきらさんの舞踊には、当て振りっぽい動作は一つもないのだ(私は舞踊の当て振り大好きだけど)。
でも、気づけば空気はしとしと湿る。
気づけば、静かな雨音の中。
揺れる半纏の袖が、重みと温もりを乗せる。

――雨じゃんじゃん 雨じゃんじゃん
傷ついた胸の底
もう涙があふれる水たまり――


この“水たまり”のところ、印象的だった。
あきらさんは軽く、ほんの一瞬、手のひらを上に向けたように見えた。
それだけで、水の感触が記憶に触る。

踊り手の目線は、始終遠くへ向けられている。
三吉の舞台を抜けて、客席を越えて。
ずっと遠くに行きっぱなしかと思いきや、ふと動きを止めたり、腕を組んで客席にポーズを決めたりして、体に意識を折り畳む。

恥ずかしながら、私は舞踊の知識が全くないので…
お隣のご婦人に、
「あきらさんって、日本舞踊の動きよね」
と教えていただいて初めて、そうなんだ!と合点がいき。
ご本人に聞いてみると、
「ああ、日舞は昔やってましたねぇ」
とほのぼの答えてくれた。

それにしたって、ショーの写真掲載なしのルールで、舞踊の記事を書く難しさ…!
普段、いかに写真に頼っているかを思い知った…

Twitterで「あきらさんの舞踊が素晴らしい」とつぶやいたところ、共感を寄せてくれた方がたくさんいて嬉しかった。
20代の男の子たちが、元気よく弾けている隣で。
自分の定まった居所に立って、自分の中の景色を柔らかく開いてくれる。
その姿が美しい。

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コメント

あきらさんというので、花道あきら
あるいは、紅あきら会長かと思いました
くだらないコメントで、誠にすみません

>山口ジジイ様

いえいえ、いつもコメントありがとうございます( ^^) _旦~~
都のあきらさんも素敵ですよ~!

花道あきらさん、紅あきらさん、いまだお目にかかったことがありません。
長いことこの世界を見てればそのうちチャンスが来るはず…と悠長に構えています。

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