劇団花吹雪お芝居「馬の足玉三郎」②桜春之丞座長の海老蔵編

2012.12.22夜の部@川越温泉湯遊ランド

前回の兄・玉三郎編に続き、今回は弟・海老蔵の感想。

写真・桜春之丞座長(12/22舞踊ショーより)


もう、春之丞七変化とか名付けてもいいんじゃないかな。
昼の部のお芝居「太助と家光」から数時間しか経たずに観てるから、余計に変化ぶりを感じる。
お昼のお芝居と声の出し方から違うんだもの。

序盤、海老蔵が所属する劇団の座長(桜愛之介さん)に呼ばれ、幕の外から返事をする場面がある。
姿が見えないから声だけの演技で。
「はい、ただいま」
この一言の言い方、しなやかな声で、全部伝わる。
真面目で、控えめな海老蔵の人格。

さて、海老蔵というキャラクターには、このお芝居の旨味がぎゅっと詰まっていると思うのです。
優男で生真面目で兄思い、そんな二枚目キャラで玉三郎の三枚目と好対照。
これで最後まで行くのかと思いきや。
後半、失望した兄を慰める辺りから、段々二枚目の皮が向けてくる。

玉三郎が一人で静かに寝たがってるのに、
「こんな古い話がある!」
と故事を引っ張り出して忍耐の大切さを説き(しかも春之丞さんの大声がよく通るんだ)、
「だから兄さんも今はこらえてくれ!」
と、納得出来るんだか出来ないんだかよくわからない結論を出して、
華麗に去………らない。

延々と玉三郎の枕元をうろつき、
「なぁ兄さん、こんな話もある」
「だから兄さんも~」云々のループ。
しかもいちいち大声で調子をつけてやるもんだから。
思わず玉三郎でなくとも、
「うるせえぇぇ!」
と怒鳴ってしまいたくなる。

でも怒鳴られても海老蔵はめげない。
というか、聞いてない。
兄思いのようでいて全然兄の話聞いてないよ。

「なぁ兄さん!」
真っ直ぐな眼差しで、弟は兄を慕う。
が、真っ直ぐに突き抜けてどこだかわからない方向へ向かっていく。
とことん真面目な性格が、ぶれることなく、きっぱりとズレた道を行く。

終盤、弟とお嬢さんを思って劇団を去ることにした玉三郎。
だけど、花道を行こうとすると後ろから海老蔵が、
「兄さん、もう行くのかい」
と悲しげに声をかけ、以下の決めぜりふが始まる。

兄が「恋に破れて恋に泣く~」
弟が「俺もなりたや兄弟星に~」(ちゃんと覚えられなかった…)
兄弟は客席に向かって交互に決めて、手を取り合って見得を切る。
拍手喝采。

…っていうのを3回繰り返す。
3回だよ。
なぜかというと、決める場面が終わって玉三郎が行きかけると、
「兄さん、もう行くのかい」
またも後ろから声がかかるからだ。
(花吹雪はまだ3回で済んでたけど、KAZUMAは確かもう1、2回やってたなぁ…笑)

「もう本当に行くからな!」
段々疲れ気味になってきた(笑)玉三郎が今度こそと行こうとすると、海老蔵の表情は悲しげに曇る。
そして、
「兄さん、もう行くのかい」
リピート!

前半は玉三郎が笑いを取り、海老蔵が冷静に突っ込む構造だったのに。
後半は気づけば逆転、海老蔵の突き抜けた行動が笑いを呼び、玉三郎がそれに呆れる構造に変化している。
…っていうのが「馬の足玉三郎」の実は精緻な作りだと思うのです。

春之丞さんの演じる海老蔵は、とりわけ押しが強そう。
声を大きく張るせいか。
きりりとした眉に堅固な意志を感じるせいか。

「俺は兄さんの傍を離れないからな!」
真剣に兄を思い、兄のために語る言葉。
その調子の強さが兄の声をかき消していることに、本人は全く気づかない。
そんなちょっと困ったキャラクターを、うまい具合に笑いに転じさせていました。

ちなみに劇団KAZUMAでは柚姫将さんが演じていた海老蔵。
こちらは優しさ・真面目さが前面に出ていて、喋り方もわりかし柔和。
そのテイストを崩さないまま、優しく兄に布団をかけてやりながら、
「なぁ兄さん、こんな話もある」
やっぱり海老蔵なので人の話は聞いてない。
輪をかけまくった生真面目の果て、みたいなキャラクターでこっちも爆笑ものだった…。

同じ役でも、それぞれの役者さんのカラーが透けて見えるとめちゃめちゃ面白い。


さて、この「馬の足玉三郎」で、今年の観劇はおしまい。
次の観劇は年明けです。

新年こそ厳冬本番。
白い息吐きつつ、手をさすり合わせつつ、劇場へなら足は軽い。
寒さ突き刺すような季節をほっこり幸福にしてくれる、冬の観劇タイムは来年も続くのです。

この記事を書いている25日で、全国の大衆演劇劇場・センターは千秋楽ですね。
いつも忙しい役者の皆さま、裏方の皆さま、劇場・センターのスタッフの皆さま、
一年間心からお疲れ様でした!
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