劇団KAZUMAお芝居「土方一代」

2014.8.7 昼の部・夜の部@和歌山ぶらくり劇場

私の夏休みも最終日。
以前から見たかった「土方一代」に当たった!
しかも柚姫将さんが主演と、ラッキーずくめ。
今回は2日間しか、ぶらくりにいられなかったのに、我ながら強運…
日頃、清く正しく生きている甲斐があるってもんです!

写真・柚姫将副座長(当日個人舞踊「イチマディン~永遠に…」より)


山中の飯場で繰り広げられる、父子の再会と、仁義のお話。

飯場に、渡り土工の傷の半太郎(柚姫将副座長)が流れ着く。
半太郎は、生き別れた父親を探して、あちこち渡り土工をして旅していた。
同じ飯場の松蔵(龍美佑馬さん)が、実は父親だが、半太郎は気づかない。

一つ、胸に痛切に差し込まれた光景がある。
朝の日差しの差し込む中で。
半太郎と松蔵が、隣に腰かけて身の上話をする場面。

「若いの、その若さで渡り土工をやっとるのは、よっぽどわけがあるんじゃろう。よければわしに話してくれ。なぁに、年寄りの暇つぶしじゃ」
松蔵に促されて。
ためらっていた半太郎も、「そうか、暇つぶしか」と緊張をほぐして、語り始める。

「俺のおとっつぁんも土工だったんだ。おっかさんは飯場の飯炊き女。その間にできたのが、俺だ」
「俺は、おとっつぁんが仕事から帰って来るのを、いつも橋の所で待ってた。おとっつぁんは俺を見つけると、“半太郎、お迎えご苦労さん”って言って、俺を肩車してくれるんだ」

話す将さんの視線は伏せがちで、たまに、少し遠くを見やったりする。
わずかに笑んでいるのが、子供時代の幸福を醸し出していて。
「おとっつぁんに肩車されるのが好きで好きで、俺はいつも橋の所まで迎えに行ってた」
温かな風情が、とても味わい深い。

けれど、半太郎の両親は、ある夜から、いさかいばかりになって。
父親は、仕事からまっすぐ帰って来ないようになった。

「その日から、橋でどんなに待っても、待っても。夕暮れ時におとっつぁんが帰って来ることは、二度となかった…」
将さんの“語る”という行為が、持つ力。
声のぬくもりのためか、落とされる感情の深さのためか。
聞いていると、頭に浮かぶ。
黄昏に包まれる大きな橋、そのたもとに、小さな半太郎の姿。

やがて父は、母と半太郎を捨て、出て行ってしまった。
「おっかさんが迎えに来てくれても、嫌だ、嫌だ、俺はおとっつぁんと一緒に、肩車してもらって帰るんだって…」
流れ流れる、渡り土工の心の中。
原風景は、寂しい色合いに埋もれている。

また、将さんの話を聞いている、松蔵=佑馬さんにも惹きつけられた。
まさか自分が父だとは言い出せず、心苦しそうに目をそらしている。
母親が、苦労の果てに病死したと聞いたときには、悲痛に顔を覆う。

半太郎は身の上話を終えると、
「今度はお年寄りの話を聞かせてくれ。いいじゃねえか、暇つぶしだ」
と、ややいたずらっぽく笑いかける。
松蔵も、「そうじゃな」と相好を崩す。

前日の「浅草三兄弟」同様、私は昼夜連続で「土方一代」を見ているけど。
個人的には夜の部のほうが響いた。
「なぁに、年寄りの暇つぶしじゃ」「いいじゃねえか、暇つぶしだ」のセリフが、夜の部しかなかったから。
このセリフのとき、佑馬さんと将さんの間に流れる、実にほのぼのした空気が好きだった。

芝居後半は、飯場の裏の稼業である阿片製造が焦点になる。
仁義とかバトルシーンとか、やくざものの芝居っぽいカッコよさが足される。

後半、殺伐とした展開になっていくからこそ。
前半の半太郎と松蔵の対話は、つかの間の父子の情景として、いっそう切なさを増す。
障子越しに、朝日の注ぐ中。
右に松蔵、左に半太郎。
名乗れない父と、気づかない息子が、心を交わしたわずかな時。

…で、なんでこの場面が、“朝日”の中だとわかるかというと。
それはやっぱり、将さんの芸の細かさのおかげだったりする。

松蔵との場面の前、半太郎が目覚めるシーンがある。
起き上がって、戸を少し開けて。
それは眩しそうに、手を額にかざす。
外に出て、両の手をばちっと合わせて、太陽を拝む。

ああ、外は見事な晴天なんだ。
と、手に取るようにわかる。
将さんファンの方には、この晴れた空を仰ぐ仕草の、爽やかな風情だけでも必見だと思います。

こころのところ、メンバーの入れ替わりがあったり、将さん自身、副座長という新たな立場になったり。
もしかしたら、やや疲弊の日々だったのかも。
それでも、芝居のあちこちに、将さん独自の工夫が差し込まれていた。



↑涼しげな一枚が撮れたので(8/7(木)夜の部舞踊ショーより)。
いつ行っても、普通の日の普通のお芝居に、誠実なところに立っていてくれる。
毎日、昼夜、それを続けるまめまめしさ。

だからこそ、この役者さんのお芝居に、客席から身を乗り出して、見入って。
身を乗り出しっぱなしのまま、丸2年になる。

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コメント

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>非公開コメントの方

いつも本当にありがとうございます( ^^) _U~~

率直にお気持ちを書いていただいて、とても嬉しく、ありがたく思っています。
淋しい気持ち…おこがましいですが、私にも少しわかる気がします。

本当に大好きだった光景が、変わっていく…
今の舞台も楽しいけど、自分が惚れ込んだかつての温度とは違う…
あの光景はどこへ行ったんだろう。
そんな思いがよぎることもあります。
いなくなられた役者さんの穴は、代わりの誰も埋められないものだと思いますし。

でも、一生懸命最善を尽くされてる皆さんを実際見たら、やっぱりこの劇団が大好きだなって思いました。
多分、この思いは一緒ですよね…
劇団KAZUMAは本当にとにかく一生懸命で、いつも汗だくで(笑)
新しく来られた方も含めて、全力で楽しませてくれる…
それが、劇団の不変のカラーなんだろうなあと思います。
メンバーが変わっても、変わらないものも確かにあると、勝手に思っています。

返信のつもりが自分の思いの丈を書いてしまいまして、すみません。
私も、ぜひお会いしたいと思っています。
おそらく大阪の方…でしょうか?
私が次に大阪に行くのは来年1月のオーエス公演かなと思います。
だいーぶ先ですが…^_^;
もし1月に覚えてらっしゃいましたら、haginohara0481@gmail.comにお気軽にメール下さいませ。

次の記事では、一馬座長の話をしたいと思っています。
お読みいただけたら嬉しいです。

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