新喜楽座お芝居「信州決風記 小諸の夜嵐」

2014.6.28 夜の部@大島劇場

本当に死んでしまった、弟が。
自分で腹突いて、俺の言うとおりにして死んだ、死んでしまった、俺の弟が。
松川翔也さんの、目は愕然と見開かれ、唇はわなないていて。
表情から、そんな言葉が破裂しそうだ。

兄(翔也さん)が見つめるのは、突っ伏して動かなくなった弟(大和歩夢さん)。
先刻、腹突いて死んだ弟は、あどけない少年の顔をしていた。
そして、切腹を命じた兄も、まだ少年なのだ。
「銀次郎~!」
やくざ一家の親分という立場を忘れ、一人の兄として、声を限りに叫ぶ。

悲惨な場面なんだけど、翔也さんの絶叫が、不思議とみずみずしい。
…若さだなぁ!

写真・松川翔也副座長(当日個人舞踊「一千一秒」より)


私の友達で、新喜楽座がお気に入りという人が多いので、前から気になっていた。
すごいイケメン兄弟だとか、そのお母さんが素晴らしい女優さんだとか、花形のお芝居が好きという友達も。

「信州決風記 小諸の夜嵐」の幕が開いてすぐ、気づいて驚いた。
――これ、外題が違うだけで、劇団KAZUMAでいうところの「生首仁義」だ!
(私が大衆演劇にここまでハマったきっかけの芝居。かつて熱く語った記事はこちら)

血桜一家の三代目・銀次郎(大和歩夢さん)は、やくざなのに争いが嫌いで、気が小さい。
「何かあると、すぐに斬った張ったって…乱暴なことばっかりだ。だから、おいら、やくざは大嫌いなんだ」

血桜一家と敵対する横車大八親分(金井保夫さん)と、娘のおりゅう(松若さやかさん)は、三代目を陥れる。
三代目は、策略にまんまと引っ掛かり、おりゅうを無理やり茶屋に連れ込もうとした罪をでっち上げられてしまう。
「よくも、うちの大事な娘に手を出しやがったな」
「今日の七つまでに、血桜一家の縄張りよこすか、三代目の首を差し出すか、決めてこい」

兄の二代目(松川翔也副座長)は、弟の不始末に激昂する。
「銀次郎!お前、なんてぇ馬鹿な真似をしたんだ…先代から受け継いだ、この血桜一家の縄張りを!」
あろうことか、父親からの土地を守るため、実の弟に切腹しろと言う。
恐怖に泣く弟の手に、半ば無理やり刀を取らせる。

無慈悲にも見える二代目の行動。
父親への義理のため?
親分としての責任のため?

「銀次郎、お前みたいな甘ったれに育っちまったのも、無理もねえ」
――いや、二代目のセリフをじっくり聞いていると。
「親父は俺を厳しく育てても、お前は小さい頃から、ただただ可愛がられた…」
もっと単純な、父に溺愛された弟への嫉妬が混じる。

「赤ん坊のお前なら、親父にまたがって、その頭叩き割ろうとも、親父に許されただろう―!」
振り絞るような口調と、きりきり歪む翔也さんの横顔。
気弱な弟ばかりだけでなく、一見毅然とした親分の兄も、心にはまだ子ども時代が住んでいる。
演ずる翔也さんが、本当に若いのもあって(まだ20歳!)。
互いへの嫉妬や比較でごちゃごちゃ苦しむ、リアルな兄弟像が描き出される。

でも、小さい頃から一緒だった弟への愛情だって、当然あるのだ。
切腹の痛苦に呻く弟の声に、兄は背を向け、必死に両耳を塞ぐ。
そして遂に、背後で弟が絶命してしまったとき。
振り返った翔也さんの表情で、私は一気に涙が出た。

自分が死を命じたのに。
震える手に、自分が刀を握らせたのに。
いざ本当に弟が事切れてしまうと、肉親の死の重みを受け止めきれずに。
途方にくれた目で、わずかに首を振りながら立ち尽くす。

これまで、「生首仁義」の二代目といえば、成熟の中に悲哀が滲む、藤美一馬座長の演技しか知らなかったから。
翔也さんの、みずみずしい等身大の二代目は、とても新鮮だった。

それにしても翔也さん、感情が高ぶる箇所では「銀次郎~!」って声の限りに叫びまくっていた。
もうちょっと、抑え目な箇所もあってもいいんじゃ…?
ていうか、喉が心配!とハラハラ思っていたら、口上のときも、しばらくまともに喋れないほどだった。
そんな演技も、若さならではかな?

この物語に強いこだわりを持つ者としては、金井さん演じる横車大八のセリフで、こんなのを聞けたのも収穫。
「生首引っさげて、生首仁義と洒落こむつもりかい」
新喜楽座バージョンでは、「生首仁義」って言葉が入ってるんだ…!
この芝居のルーツが気になって仕方ない。

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