柚姫将さん個人舞踊「夢一夜」(劇団KAZUMA)

2014.6.20 昼の部@八尾グランドホテル

小さな部屋の中を、覗き見るようだ。

――素肌に片袖 通しただけで
   色とりどりに 脱ぎ散らかした
   床にひろがる 絹の海――


箪笥の前、散らばった帯が見えるよう。
畳に積み重なっていく、抜け殻の着物の形がわかるよう。
舞台に紡ぎ出された、ほの暗い部屋に漂う、夢一夜。

写真・柚姫将さん個人舞踊「夢一夜」より


最近の将さんの舞踊には、ますます、お話を魅せる力がはたらいているように見えて。
客席で、私のワクワク感は大変募っている。

中でも、この女形舞踊の引力はすごかった。
物寂しいイントロに聴き入って、南こうせつの歌声を味わっているうちに。
気づいたら“身支度する女性”の情景が眼前に広がっていた。

――着てゆく服が まだ決まらない
   いらだたしさに 唇かんで
   私ほんのり 涙ぐむ――


将さんの目が、どこか悔しそうに床を眺める。
その視線の先に、脱ぎ捨てられた着物の輪郭が浮かび上がる。
布の隙間に忍ぶ、持ち主のためらいまで。

――貴方に逢う日の ときめきは
   あこがれよりも 苦しみめいて――


歌詞を聞くと、女性がせわしなく支度しているのは、これから部屋を出て、逢引きするためらしい。

曲が二番に入って、将さんは花道を歩いてきた。
少し客席の中に進み出てから、ぺったりとしゃがみこむ。
この次の瞬間の仕草が、一滴の墨のように私の心に落ちた。

――最後の仕上げに 手鏡見れば
   明かりの下で 笑ったはずが
   影を集める 泣きぼくろ――


もうほとんど支度できたけど、ほんの少し、最後の色直し。
整えたはずの髪に手をやって、右、左、と軽く首を曲げ、わずかに髪に触れて。
手鏡をひっそり覗きこむ振りの後、目を伏せる。

鳥肌……!
この場面の美しさ。
加えて、現れる心の苦しさが、見る側の胸に絡みつく。

将さんが花道から立ち上がり、舞台へゆっくり戻っていく。
舞踊の最初のほうでは、舞台の上に女の人の部屋を見ていたのに。
今や、自分の座っている客席含めて、白粉の匂いのこもる、部屋の中に閉じ込められたような感覚があった。

――貴方に逢う日の ときめきは
   喜びよりも せつなさばかり――


曇った未来を想像しながら、着物を選んで。

――ああ 夢一夜
   一夜限りと言いきかせては 紅をひく――


身を破る結末をうっすらと見ながら、化粧を施す。

曲の始めから終わりまで。
将さんが紡いでくれる世界観は、女性の着物の散らばる部屋の中で完結するのだけど。
その世界のさらに向こう、部屋の外側から、予感された悲恋が打ち響いてくる。

でも、悲苦が行き過ぎることがないのは、たまの微笑のためだろうか。

↑眼差しがとても印象的な瞬間だったのに、ライトの線さえ入らなければ…!
もっとカメラの腕を磨こうと思いました。

Youtubeにも「夢一夜」があったので、この舞踊を見てからずっと、ブログ書いてるときのBGMになっています。
2000回以上再生されてるうち、すでに50回くらいは私が貢献しているはず。

曲を聴いているうち、八尾グラの光景が蘇る。
将さんが、舞台に膝をついて、大きな目で遠くを見やる。
その姿に霞む、迷いと、儚い望み。

――ああ 夢一夜
  一夜限りで醒めてく夢に 身をまかす――


夢抱く、夢散る、夢一夜。

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コメント

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こんにちは(^。^)
この舞踊も観た事無いですが、お萩さんの文面と音楽を聴くと、将ちゃんが現れました😍
いつも詩を大切に踊って下さるので
、まるでドラマを見ているかのようで、涙が溢れることもあります😂
あの笑みで目と目が合うと危険ですよね(笑)

またブログ楽しみにしています^ - ^

>非公開コメントの方

将さんも一馬座長も、見るたび新たなものを身につけていかれるように見えます。
だから何度観ても飽きないし、むしろ発見ばかりなんですよね。

私は21日の夜の部までいました。
ちょっとずつ書いていきますので、また見てやってくださいませ。
いつもありがとうございます(*^_^*)

>あん様

私の文面と音楽で“将さんが現れた”とは、なんと嬉しいことを言ってくださるのかo(*゚▽゚*)o
本当、ドラマですよね。
将さんの舞踊の後は、物語を胸一杯にもらった気がします。

将さんの目の力、すごいですよねぇ…
元々の目力の強さに加えて、曲の雰囲気に合わせて和らげだったり、切なかったり、多彩な色が現れるので、客席で惑わされっぱなしです(笑)

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