劇団悠お芝居「弁天小僧」

2014.6.1 昼の部@三吉演芸場

振袖姿で、ヤンキー座り。
松井悠座長の丸みを帯びた目が、客席を覗きこむ。
可愛らしい顔をコテンと曲げて、かったるそうに首をポリポリ掻く。
弁天小僧のちょっとした仕草から、仇っぽい色気が飛んで来てどっきりした。

写真・松井悠座長(当日個人舞踊「千本桜」より)


劇団悠は、必ずもう一度見たいと、去年のお正月から思っていた。
たった一度きり見ただけだけど、全員ののびやかな演技と親しみやすい空気が印象に残っていたからだ。

ブログとツイッターを通して知り合った方が、たまたま遠方から東京にいらっしゃるというので。
お会いするのを機に、うちからやや遠い三吉演芸場へGO。

開演前、座員さん一人一人、そして座長さんまで、「いらっしゃいー!」「お久しぶりです!」と客席にご挨拶に来たのに驚いた。
みなさん、客席を一列一列見ながら、笑顔で。
そういえば去年観た時も、こんな風に挨拶されていた記憶がある。
感服して、隣席に「丁寧ですねえ…」と何度も言ってしまった。

お芝居「弁天小僧」では、松井悠座長の弁天小僧菊之助が痛快に活躍する。
藪蛇一家に乗り込んで、新五郎親分(竹内春樹さん)をやりこめ、女郎屋に売られそうになっていた娘二人(高野花子さん・なおとさん)を救い出す。

私の心に焼きついたのは、本当になんでもない場面。
「親分、今、えれえべっぴんがやってきましたぜ!」
玄関口に現われた菊之助に、藪蛇一家の若衆たち(嵐山錦之助さん・吉田将基さん・田中勇馬さん)がワイワイ騒ぐ。
戸一枚、隔てられたところで。
菊之助は実につまらなそうに、足を開いてしゃがみこんでいる。
戸の向こう側で、べっぴんだと色めき立つ若衆たちを、小馬鹿にするように首をポーリポリ。

赤い袖が床に振りかかって、色っぽぉい…と私は見惚れた。
悠座長の拗ねたみたいな口元が、艶めいている。
華やぐ姿を支えるのは、丈夫の骨ばった足。
甘やかな女の子の容れ物にくるまれた、男が零れて来る。

「お待たせいたしやした、どうぞお入りくだせえ」
戸が開けば、足をシュスと閉じて、また女。
「失礼いたしますぅ…」
声も可愛く、しとやかにお嬢さん。

弁天小僧、好きっていう人が多いの、わかるなぁ。
島田を結った“女”の中から、花びらが目覚ましく開くように、“男”の肌が飛び出してくる。
「心配いらねぇ、万事は俺に任せておけい!」
お嬢さんの振袖から、突如として男性の生の手足が突き出すときの、活力に満ちたみずみずしさ。
もちろん見せ場の「知らざあ言って聞かせやしょう…」もあったよ!

―牡丹のようなお嬢さん 
 しっぽ出すぜと浜松屋―

ラストの立ち回りのときには、小粋に歌謡曲がかかって(多分三浦洸一?)、舞台の雰囲気は軽快に明るい。

それからもう一方、気になる役者さんがいらした。
物語冒頭で藪蛇一家に騙される、百姓を演じていた北城竜さんだ。

写真・北城竜さん(当日舞踊ショーより)


北城さん演じる百姓は、断腸の思いで娘を売ったのに。
手にした二十両を藪蛇一家に奪われ、失望の底。
「ああ、今まで気がつかなかったが、あんなところに松の木が。いっそ、あそこで首をくくって、きゅっと……いや、やめとこ、やめとこう」
悲愴なんだけど、ユーモラス。
訥々としたセリフが、絶妙なおかしさを連れて来る。

結局、川に飛び込もうと覚悟を決めて、川=客席を向く。
「この川、なぜだか笑い声が聞こえて来る…普通は年寄りが死のうとしたらかわいそうだと言うところじゃが、なぜだか笑い声じゃ」
恐る恐る、客席をじぃっとのぞきこんで、
「川の底をよく見れば、でかい石ころがごろごろしとるわい」
石ころ(笑)
北城さんの表情が真剣なので、やたらおかしかった。

見えないけど、84歳になられるらしい。
きびきびした個人舞踊の後で、「どうぞ松井悠をよろしくお願いします」と、深深と挨拶されていた。

艶やかな弁天小僧も見れて、お会いしたかった方とも会えて、嬉しい昼下がり。
隣席で楽しい観劇タイムにしてくださり、改めて、ありがとうございました!

送り出しで、悠座長の「ありがとね!」と言う笑顔が眩しかった。
若いパワーに加えて、歪んだもののない、極めて健やかな印象を受ける。

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