劇団KAZUMAお芝居「男の人生」

2014.5.18 夜の部@やま幸

私、今まで、思い違いをしていたかも。
「男の人生」鑑賞3回目にして、ようやく気がついた。
主人公・伊三郎(藤美一馬座長)は、任侠世界の理想像。
女房思いで、情に厚く、仁義を守り通す、その生き様は清いばかり…
――と思っていたけど。
「わかりました、仙蔵の女房を斬りましょう」
澄んでいたはずの道筋に、黒々と浮き上がってくる、ただ一点の罪。

写真・藤美一馬座長(当日個人舞踊「吉野に風が」より)


重いけど、暗いけど、むごいけど、私は「男の人生」が大っ好き!
題は、二人の男の生き様を指すのではないかと勝手に思っている。
一人は、一馬座長演じる伊三郎。
草津一家のブレーン的存在だったけれど、謀略により一家から追い出され、それでもなお自分の仁義を貫いて生きようとする。
いま一人は、柚姫将さん演じる大五郎。
草津一家の二代目を継ぐも、嘘を吹きこまれて疑心暗鬼に憑かれ、兄弟同然だった伊三郎を追い出してしまう。

私は1回目に見たときも、2回目に見たときも、これまでずっと、大五郎に表される人間の愚かさに注目していて。
伊三郎については、大五郎と対照的に、悲運のヒーロー像だと思っていた。

伊三郎の最大の悲劇は、大五郎一派に騙されて、刺客の女房を斬るはめになることだ。
「お前も女相手じゃ斬りにくいだろう、目隠しをしてやろう」
目隠しに視界を覆われて、伊三郎は気づかない。
今斬ろうとしているのは、自分の恋女房のお菊(霞ゆうかさん)だということに。

この背筋も凍る場面を見ながら、やま幸の客席で膝を抱えて。
以前見た時と同じように、胸中で呟いていた。
伊三郎は何一つ悪いことしていないのに、なんでこんな悲惨な目に遭うんだろうな。

横顔に葛藤の色を乗せて、一馬座長が口を開く。
「斬れば、俺は一家に戻していただけるんですね」
いや?
「わかりました、今回限りです、その仙蔵の女房、俺が斬りましょう」
何一つ、悪いことしていない…?

少し前の場面では、こんな風に言っていたのに。
「刺客の女房なんて捕まえてどうするんだ、女房には何の罪もない。女を斬ったとあればそれこそ二代目の恥だ、早く逃がしてやれ」
「俺には女は斬れません、絶対にそれだけはできやしません」

大五郎の甘言が、伊三郎を揺るがせる。
「なあ伊三、お前に一家に戻ってきてほしいんだ。お前が仙蔵の女房を斬って、それを手土産にすれば、若い者もみんな納得する。俺たちも堂々とお前を迎えてやれる」

女は斬れない、と仁義を主張していた伊三郎は。
やがて情に揺れ、お菊、と唸る。
「一家を出てから女房に苦労ばっかりかけてるものですから、あいつに少しでも楽な暮らしをさせてやりたい」
女房可愛さのために、自らの仁義を曲げた。
――わかりました、今回限りです――
それがたった一度の、してはいけない選択だったとしたら。
たった一つの、伊三郎の過ちだったとしたら?

肌が一層ヒヤッとした。
目隠しをしたまま、お菊を斬る伊三郎の刃は、なんて残酷に光っていることか。
道に背いた報いが、不吉に口を開けている舞台は、なんて深い闇に沈むことか。

真実を知った伊三郎が、お菊にかけられた筵を口でくわえて剥がす。
自分が斬った女房の姿を見つけて、唇を震わせ、引きつるように、声にならない嗚咽を漏らす。
この場面の一馬座長の姿は、絶品。
「お前との夫婦の絆のほうが、どんなに大切だったことか…―」
一度きり、志を裏切った代償はあまりに大きくて。
はたはたと伊三郎の涙が滴るようだ。

この筵を剥がす場面は、ただでさえ悲惨な光景なのだけど。
お菊の亡骸に泣き伏せる伊三郎の心には、取り返しのつかない自分の選択への悔恨が混じっているのかと思うと、切々と胸に突き刺さった。
このキャラクターを、ただ悲運に翻弄されるヒーローとして見るより、ずっと陰影が深く映る。

そして、やっぱり将さんの大五郎は外せないので今回も言及しておこう。

写真・柚姫将さん(当日個人舞踊「赤橙黄緑青藍紫」より)


大五郎は、本質的にはそんなに悪人ではない。
たとえば、「さっさと出て行きな!」と語気も荒く、伊三郎を一家から追い出した直後の場面。
「なあ鉄、俺はやっぱり、伊三にひでえことを言っちまったんじゃねえかな。今からでも伊三を呼び戻して、ちゃんと話をしたほうがいいんじゃねえかな…」
足元もおろおろと、惑いながら、腹心・鉄五郎(藤美真の助さん)を頼る。
「何を言ってるんですか、二代目。心配いりません。万事はこの鉄五郎にお任せください」
鉄五郎は、二代目の心弱さを思うがままに操っていく。

次の登場場面では、大五郎はぼんやりと目も虚ろ。
姿は小さくしぼみ、心は果てのない空洞に吸われるよう。
「伊三がいつ寝首をかきに来るかと思うと、俺は夜もおちおち眠れねえんだ」
鉄五郎の策略に、絡め取られていく不安な心が、客席には手に取るように分かる。

将さんの感情の見せ方は、いつも丁寧。
お誕生日前夜だろうと関係なく、本当に、毎日、毎公演、丁寧。

遠征最終日のお芝居「男の情炎」へ続きます

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