劇団KAZUMAお芝居「男一匹千両のぼり」&やま幸の胡蝶蘭の話

2014.5.18 昼の部@やま幸

この人一人がいるだけで、こんなにも違うものか!
「今、帰ったぞ」
役どころは、やくざ一家の親分。
華原涼さんが堂々とした足取りで登場したとき、私は驚きと嬉しさで手を叩いていた。
前日もいなかったので、今回の遠征では涼さんの舞台を拝見できないかと思ってた…
客席がワァっと沸いたように思うのは、気のせいじゃないはず。

写真・華原涼さん(当日舞踊ショーより)


「男一匹千両のぼり」はお正月の羅い舞座以来、見るのは2度目だった。
涼さん演じる親分の留守中、親分の妻(千咲菜野芭さん)と代貸しの源十郎(柚姫将さん)が通じて、一家を我が者にしようとする。

が、親分は予想より早く帰って来た。
この帰還の場面が、私は衝撃だった。
舞台左手の幕の向こうから、まず、3人の子分(藤美真の助さん・響こうたさん・KEITAさん)が、先に出て来る。
そして、子分が幕を持ち上げて、親分が姿を現す。
かつかつと重心を刻むように、威風堂々、涼さんが舞台に足を踏み入れる。
目元はいつもの通り涼しく、姿にはどこか軽みがある。
この方が登場するだけで、舞台に漂っている色がひとつの軸に収斂されるのがわかった。

親分は、よそよそしい妻の裏切りを既に見抜いている。
妻と差し向かいになり、冷静に告げる。
「お前、源十郎と間男しているそうだな。そんなふしだらな女は要らん、とっとと出て行け」
親分の怒りから逃れようと、妻も必死に訴える。
「違うんだよ、あたしは嫌だって言ったのに、源十郎に無理やり手籠にされたんだよ」
が、親分は眉一つ動かさず。
「嘘をつけ、お前から誘ったんだろう」とバッサリ。
(ここでは書けないような、下ネタ的にどぎついセリフもサラッとおっしゃる)

妻は親分を殺そうと毒を盛る。
が、親分は毒にかかったフリをしていただけだった。
「殺すには忍びないと思っていたが…」
静かに刀を抜く。
逃げようともがく裏切り者の妻を、寸断の迷いもなく斬り捨てる。
そしてやっぱり眉一つ動かさず、子分に指示を出す。
「妹のおぬい(霞ゆうかさん)を探せ、大事な家系図が危ない」
涼さんの演技の中にピシリと立つ、容赦のない厳しさ。

「今日見られたのはホント、ラッキーかも。涼さん、もう2か月半出てなかったんだよ」
幕間に、常連さんが耳打ちしてくれた。
立ち回りのときに、刀で右手をお怪我されたらしい。
ずっと病院に通っていらっしゃるそうだ。
お芝居の涼さんは、ブランクも怪我も、微塵も感じさせなかったけれど。

舞踊ショーの涼さんの女形は、久々に見るせいもあってか、とりわけ艶やかに見えた。
「今は踊りでも扇子も刀も使わんよね。右手が治るまでは…」
常連さんは、心底心配そうに言った後、噛みしめるように呟いた。
「でも、やっぱり涼さんは綺麗やねぇ」

写真・華原涼さん(当日舞踊ショーより)


やっぱり、綺麗やねえ。
しみじみ、綺麗やねえ。
この日の客席に満ち満ちていた気持ちは、私も同じ。
またたくさん、見せていただける日が来ますように。

再び、お芝居の話に戻りまして。
もうひとかた、書き残しておきたいのは、親分の妻を演じていた千咲菜野芭さんだ。

写真・千咲菜野芭さん(当日個人舞踊「香港」より)


菜野芭さんは5月いっぱい、劇団千咲からお手伝いに来られているそう。
この女優さんは、第一に、声が可愛い。
前日のお芝居「次郎長と旅役者」では、末妹・お峰の役だった。
「どうしたの、お姉ちゃん」
幕の外から霞ゆうかさんに呼びかけた、声音の柔らかさ。
私はこの一言で、思わず顔がとろけてしまった。

うって変わって、「男一匹千両のぼり」で菜野芭さんの演じる役は、間男した挙句に義妹の命を狙うという、かなりの悪役なのだけど。
「おぬい、ちょっとあんた。立ち聞きしてたのかい、あたしと源十郎の話」
菜野芭さんの可愛さが先に立つのか、妙な毒気がない。
「お前さんが今飲んだ酒にはねえ、たっぷり毒が入ってたんだよ」
夫に毒を盛る場面でも、仕草に愛嬌があって、胸に苦いものを残さない。
明るい喜劇の風景には、ちょうどいい塩梅だった。

この日のお昼は、上のお写真の格好で送り出し。
思わず「お姫様みたいですね!」と言ったら、照れ笑いされていた。

ちょっと余談。
昼の部の終演後、夜の部を待つ間に、やま幸の山本会長とたまたまお話していただく機会に恵まれた。
大衆演劇の役者さんのこと、ファンのことを、深く、温かく考えていらっしゃる方だった。
山本会長の思想が行き届いているのか、施設全体で大衆演劇を大事にしているのが伝わってくる。
個人的には、大衆演劇場の入り口に入る前に、階段があるのがいい。
階段の下に、大きな胡蝶蘭が据えられているのもいい。
ここから始まる別世界に、敬意を示しているみたいだ。

ところで日曜日ということは、夜の部もお芝居があるんですよ!
やったね!
しかも外題が大好きな「男の人生」と聞けば、期待は大きく膨らんで。
気合を入れて書いていきます。

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