劇団KAZUMAお芝居「次郎長と旅役者」

2014.5.17 昼の部@やま幸

お正月の京橋羅い舞座観劇から、実に長い4か月半。
劇団KAZUMAにハマってから、今までで最長に空いた。

ひたすら待ち続けた5/16(金)、新宿発の夜行バス。
朝の岡山駅で連れと落ち合い、まずは、駅前の喫茶店でモーニングトースト。
喫茶店の女性店主さんが、私たちのキャリーケースを見て、これから旅行?と尋ねた。
「これからやま幸へ行きます」
「あら、温泉?」
「東京から、劇団KAZUMAを見に来たんです!」
うきうき答えて、目指すは瀬戸大橋温泉・やま幸!

遠征初日のお芝居「次郎長と旅役者」は、初見だった。
旅役者の市川蟹蔵(冴刃竜也さん) と市川団五郎(藤美真の助さん)。
この賑々しいペアが、お芝居をとびきり明るく彩る。

写真・冴刃竜也さん(当日個人舞踊「酒供養」より)

竜也さんはこの日がお誕生日で、たくさんのファンの方に祝福されていた。

写真・藤美真の助さん(当日舞踊ショーより)


「あーあ、座員も一人減り二人減り、とうとうあんたと私二人だけになっちゃったわね。二人でどうやって芝居やるのよ」
「そうですね~…師匠」
真の助さん演じる団五郎のぼやきを、竜也さん演じる蟹蔵は、ぼんやり聞いている。
まあるい頬紅につぶらな瞳の、竜也さん特有の三枚目メイク。

旅役者二人は、頭を悩ませながら、おにぎりをもぎゅもぎゅ食べる。
劇中、ものを食べるお芝居はしょっちゅう見るけど。
この場面のお二人の場合、食べっぷりが抜群。
「座員を増やさなきゃ(もぐもぐ)。スカウトすれば(もぐもぐ)、いいわ。どっかに(もぐもぐ)いないかしら、良い男」
セリフ言いづらいんじゃないだろうか?ってくらい、元気よくたいらげていく。
ペットボトルのお茶もがぶ飲み。

そこに、たまたま通りかかった清水次郎長親分(藤美一馬座長)。
舞台左手から、合羽を颯爽となびかせて、立ち姿も美しく登場する。
が、舞台右手には、道端で、もりもりおにぎりを頬張る二人連れ。
左右の絵がバチッ!とぶつかり、精悍な次郎長が珍妙な二人にギョッとする、この瞬間のおかしさったらなかった。

「師匠、いい男いましたよ、いい男!あれですよ」
「馬鹿、腰にあんな人斬り包丁差して、あれはやくざ者よ。…でも、本当にいい男ね」
二人は、あろうことか次郎長をおにぎりで釣って(!)、スカウトに成功する。

話が一転するのは、みんなで団五郎の実家に帰ってからだ。
団五郎の妹(霞ゆうかさん)が、久しく会っていなかった兄に泣きつく。
「この土地の大川のハゲ蔵親分(龍美佑馬さん)に、五両を借りちゃったの。それが今じゃ利がついて、三十二両と五分にまでなってるって言うのよ!お金を返せなければ、末妹のお峰ちゃん(千咲菜野芭さん)を嫁に寄こせって!」

団五郎は困り果てるも、そこは妹二人を守るため。
蟹蔵を呼んで、一計を案じる。
「私たち役者じゃない、ここは一芝居打つのよ。――やくざの長さんの名前を借りようと思うの」
当然話の流れから言って、長さんというのは清水次郎長のことなのだけど。
蟹蔵はとぼけた返事をする。
「長さん…ってのはあの人ですか。片岡長次郎」
予想外な名前が出てきた(笑)
「違うわよ、あの人は役者さんよ!」
「あの人、役者だったんですか!俺はてっきり、やくざかと思ってました」
正直、これは笑った…!

「私は女形だもの、お蝶姐さんを演るから、蟹蔵、あんたが長さんになるの」
蟹蔵は一生懸命、次郎長を名乗る“稽古”をする。
「俺は清水の…」
溜めるために息を吸って、吸って、頬がひくひく歪んでも、まだ吸って…
これは、竜也さん、見てるだけで苦しそう。
「出してー!」
って後方の団五郎に言われてから、ぶはぁっと息を吐き出す。
必死の稽古風景は、客席に爆笑を巻き起こしていた。

私は笑いながらも、切ないものが込み上げてきた。
小さな旅一座が、権力を振りかざすやくざに、知恵をしぼって立ち向かう。
ちっぽけな者が大きな者に噛みつく光景は、大好きな「甲州の鬼」にも似ている。

お芝居の最後の最後には、スカウトした新人が本物の次郎長だった事実が発覚する。
この場面の一馬座長演じる次郎長のセリフが、すこぶる滋味深い。

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)


恐れおののいて土下座する団五郎と蟹蔵に、次郎長は慈しむように声をかける。
「お師匠、兄弟子、どうか頭をあげておくんなさい。お二人のおかげで、随分とも楽しい道中になりました」
お師匠・兄弟子…
大親分の正体が発覚して、小政(柚姫将さん)も従えて。
この状況でなお、次郎長が旅役者二人にこの呼び方をするのが良い。

大親分・清水次郎長にとって、かしましい旅役者は、どんな風に心の中に居座ったんだろう。
“名もなく身分も低い無力な者が、主人公の正義の心を支えている”
思い出したのは、そんなフレーズ。
先月KAZUMA遠征仲間とメール中、彼女が引いた本の一節だ。
KAZUMAのお芝居のそこに、彼女は美を感じるのだそう。

「俺が清水の…(引きつけ起こしそうなくらい息を吸う)」
「出して、出してー!」
名もなく、無力で、でもやかましいくらいに明るい彩りで通り過ぎていく、旅役者の姿。

続くやま幸の夜の部は、お芝居がないのが残念だったけど。
今までで最も好きかもしれない将さんの女形舞踊に出会ったので、次の記事は舞踊語りになります。

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