“本気”の力―柚姫将さん(劇団KAZUMA)―

まず、床に伸びる手。
―家に着けば カサブランカ―
花を拾いあげ、掌に乗せる仕草。
―お前の花が ドアの前―
表情が、驚きと哀しみに変わる。

柚姫将さんが個人舞踊でよく踊る「カサブランカ・グッバイ」。
私は、この部分の振りがとりわけ好きだ。

写真・柚姫将さん(2013/10/6 個人舞踊「カサブランカ・グッバイ」@篠原演芸場)


↑は、その一瞬を撮りたくて、頑張ってカメラを構えていた成果!
ストーリーが見えるような、熱のこもった舞踊に、ひとひら降る悲哀の色。
好きな色だという、紫を想起させる。

お芝居でも、舞踊でも。
将さんの舞台には、とにかく“空白がない”のがすごいと思う。
いつ見ても、喜怒哀楽が途切れることがない。
どこを切り取っても、物語から抜け出ることがない。

たとえばお芝居で言えば、2013年10月に篠原演芸場で見た、「直次郎一人旅」。
舞台中央で、藤美一馬座長演じる主人公が、父の遺書を読む場面。
将さん演じる太吉は、舞台の片隅に座って、一馬座長が手紙を読み終えるのを待っている……んだけど。
ただ座ってるだけではなくて。
読み上げられる手紙の内容に合わせて、将さんの表情は驚いたり、険しくなったり、葛藤の色になったり、微細に変わる。
しかも、よく見ると、手紙を覗き読みしているような…?
この舞台端での細やかな伏線が、芝居後半で意味を為したときは、うわぁ!と鳥肌モノだった。

同じ10月の篠原演芸場で、初めて気がついたこともある。
お芝居「モグラとラッキョ」の日だった。
私と友人は一番右端の席に座っていたので、役者さんが舞台右手にいると背中しか見えず、歯がゆかった…。
でも、将さん演じる親分・寅二郎の場面は、表情も仕草もとても見やすくて。
「おっかあみたいな別嬪があのジジイのどこが良くって結婚したんだ」
不満げに台にもたれつつ、若衆(藤美真の助さん)にぼやく。
体勢は客席正面に向けて。
真の助さんと会話しながらも、顔はまっすぐ客席に向けて。
――客席の全方位から、ちゃんと見えるようにしてくださってるんだ。
楽しい喜劇に私と友人が笑い転げることができたのは、将さんの客席への心配りのおかげだった。

絶え間ない公演の合間を縫って、図書館で勉強されてたこともあったらしい。
昔の人の暮らしについて、江戸の文化について。

「とにかく芝居が好きなんですよ、正解のないものなので、自分たちが考えて作っていけるんです」
そう話されていた通り。
普通の日の、普通のお芝居に対して、とことん誠実だ。

私が前からなんとなく思っていること。
この年若い役者さんには、どうしてか、ハッとする人懐かしさがある。

そう感じるのは、たとえば個人舞踊の「蒼い瞳のエリス」。
―どんなに悲しいことも わたしに伝えて―
―泣きたい夜に開く古い箱 少女でいれば叱られない―

歌の哀調が、将さん特有の澄明な空気感と響き合う。
伏せた目とか、両手で耳を閉ざすような振りとか。
昔の日本映画みたいな、目鼻立ちのくっきりした顔立ちも手伝って。
なにか古い、遠い、深いところに沈み込んでいくような、ノスタルジーがよぎる。

個人的に、最近将さんの舞踊の中で引き込まれたのは「帰らんちゃよか」かな。

写真・柚姫将さん(2013/9/22 個人舞踊「帰らんちゃよか」@浅草木馬館)


―田舎があるけん だめなら戻るけん 
 逃げ道にしとるだけなら 悲しかよ―

歌詞は、ご自身の出身地でもある、熊本の言葉。
―帰らんちゃよか 帰らんちゃよか―
―今度みかんばいっぱい 送るけん―

両手を固く握り合わせて、天を仰ぐ仕草から、故郷への強い思いが伝わってくる。
そして、切れ長の目が舞台の中央に開くとき、何か懐かしい、夢の残滓のような郷愁があらわれる。
他のどんな役者さんにも見出だせない、温かく儚い、ふるさとの香りだ。
(この系統では『帰りゃんせ』もとても好き。以前少し触れた記事)。

ところで、将さんが役者さんになる前のお話を小耳に挟むと、なんだか色々面白い。
大根の間引きが得意だった時代もあったとか…(笑)
親も役者という役者さんが、多数を占める大衆演劇界で。
一般家庭で育った役者さんには、なごやかな親しみを覚える。
自ら風変わりな世界に飛び込んだ意志が、客席には時折光って見える。
「自分たちの場合、あんまり仕事してるって感じしないんですけどね、舞台の好きな人間が集まってるだけなんで…」
以前口上で、楽しげに語っていた。

初めて将さんを見た2012年7月、浅草木馬館。
ぎりぎりと涙流しての熱演、思いがドスンと胸に落ちる声、情感の波の大きさに飲まれた。
あのとき木馬館にいたのが将さんだったから、大衆演劇の世界と出会うことができた。
以来、嬉しい恩がたくさんある。

かつて出張帰りに一人訪ねた四国健康村で、ファンの方が「将さんいいですよねー」と話しかけてくださったとき。
「ね、将さん見てると元気になります!」
と、私は反射的に答えていた。
多分、舞台や送り出しから伝わってくる人柄が、明るいからだ。
それも表面的なぴかぴかした明るさでなく、根っこが健やかに明るい。

毎日の芝居・舞踊に叩きこまれる、“本気”の量。
汗の吹き出る熱演を積み重ねて、明るいほうへ、眩しいほうへ、進んで行くのだろう。
増す光の中で、降り注ぐ色はなお、慈愛の紫だろう。

ここからきっと、いくらでも高みへ昇る。
さあ本日、日付は5月19日。



昇る。

HAPPY BIRTHDAY!!

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コメント

初めまして(^。^)
ブログはよく見せて頂いていましたが、コメントは始めてです。
よろしくお願いします(^.^)


将ちゃんのお誕生日に素晴らしい文面を贈られるとは、粋ですね〜(((o(*゚▽゚*)o)))
私も全く同じ心で将ちゃんを感じています。
大衆演劇を観劇すよようになったのも、将ちゃんです(^。^)
将ちゃんのお芝居は私自身もそこに連れて行ってくれますよね(^_−)−☆
大衆演劇を観劇すよようになって、まだ1年半くらいなので、これからもっと将ちゃんにハマって行きたいです!

またブログ覗かせて頂きます(^。^)
ありがとうございました。

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Re: タイトルなし

>あん様

いらっしゃいませ!コメントありがとうございます。
将さんファンの方に読んでいただいて、本当に嬉しいです(*^^*)

あんさんも将さんがきっかけで観劇するようになったんですね♪
2年前の木馬館の感動の記憶、今もハッキリ覚えています。
私が観たお芝居は、初見が「文七元結」、2回目が「生首仁義」でした。
たまたま、ほんの偶然で、良い役者さんに出会えて幸運だなぁと思います(^_^)v

「私自身もそこに連れて行ってくれる」ってとっても素敵な表現ですね!

実は先週末、やま幸にも行っておりました。
これからぽつぽつ、やま幸での観劇記事もあげていきますので、よろしければまた見てくださいませ。

Re: タイトルなし

>非公開コメントの方

いつも読んでくださり、ありがとうございます!
この記事は書いてる間もすごく楽しかったです(*^^)v
将さんハッピーバースデー!

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