剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「三人島造」

2014.5.4 昼の部@梅南座

稲荷「次にここを通りすがるのが女だったら、手籠にしちまえばいいだろ。俺の後でお前も楽しませてやるよ」
丸太「兄貴の後は嫌だ!なんか嫌だ!」

「三人島造」の悪役コンビ、“稲荷”(勝小虎さん)と“丸太”(叶夕晏さん)。
すっごく嬉しいな。
心の中でいつまでも温かい、お芝居の大好きなキャラクターがまた増えた。

言動も行動もヒドい二人組なんだけど。
小虎さんと晏さんのほのぼのした雰囲気のせいか、テンポのいい会話のせいか、憎めない可愛らしさがあるのだ。

写真・勝小虎代表代行(当日舞踊ショーより)


写真・叶夕晏さん(当日舞踊ショーより)


お芝居は、囚人の流刑島に飛び込んできたニュースから始まる。
囚人の島造(勝彪華さん)が、島から出られるというのだ
「おいら、生まれた時から身よりがなかったけど、おっかあが見つかったんだ」
喜色満面の島造の手には、生き別れの母が集めた、島造の赦免を願う千人の嘆願書。

囚人の稲荷と丸太は、島造を殺して島造に成り変わり、自分たちが島を出ようと企む。
が、島造を刺したところで、島造の兄貴分・白鷺(不動倭座長)に見つかってしまう。

それでも稲荷と丸太は、なんとか島の外に脱出する。
「船の底に隠れて島を出られたまでは良かったが…まさか途中でバレちまうなんてな…」
と稲荷がぼやけば、
「だから俺は最初から無理だって言ったんだ!なのに兄貴が無理やり」
と丸太が言い返す。

場所は、役人の目を逃れるため、人気のない古いお堂。
時刻は、辺りが真っ暗な夜半。
疲れきった二人がやいやい言い合う、この場面の風情が、私には一番印象的だった。

「島造の実家の相模屋に、丸太、お前が島造だって名乗って出るんだ。だが、この格好じゃ行けねえな。まずは金だ。この次、ここを通るやつから奪えばいいだろう」
小虎さん演じる稲荷は、我欲に正直で、目的のためなら手段を選ばない。
鋭い輪郭に、悪の色気がぶれる。
「ホントにそんなこと出来るのかよ…わあったよ、兄貴は、もう」
晏さん演じる丸太は、終始困り顔で、兄貴に文句を言いながらも着いて行く。
「ドン・キホーテ」のサンチョ・パンサみたいな従者の哀愁が、親しみやすいキャラクターだった。

このコンビの何が好きって、劇中で何度白鷺に追い払われても、またひょっこりと悪だくみをしながら現れる、しぶとさ。
互いに文句をつけあいながらも、二人一緒に行動している仲の良さ。

それから、見た目の可愛さもある。
小虎さんがしゅっと背が高く硬質で、晏さんがちんまり丸くて。
二人が並んでいるだけで、自然とユーモラスになる。
そのことがよくわかる場面は、島造の実家の相模屋。
若旦那風の着物に着替えた二人が、花道から登場する。
「丸太、お前、せっかく良い服着てるんだからちゃんと着ろよ。良い所の坊ちゃんに見えなきゃいけないだろ」
「そんなこと言ったって、こんなもん初めて着るんだからわかんねえよ」
ぶつくさ言う丸太の着物の襟を、稲荷が直してやる。
着飾った二人の体型が対照的で、やり取りが微笑ましくて、悪人だって忘れそう。

目の見えない島造の母親(宝華弥寿さん)を騙して、丸太が島造だと信じ込ませようとするも。
アッサリ白鷺に正体を暴かれる。
「お前ら、稲荷と丸太じゃねえか!おっかさん、騙されちゃいけません、島で島造を殺したのは、他の誰でもないこいつらだ!」
稲荷が忌々しげに、
「ばれちまったんならしょうがない…」
舞台の照明が落ち、稲荷と丸太にスポットライトが当たる。

ここで小虎さんが朗々とした声で名乗りを上げるのだけど、これが私的には劇中で一番きれいなセリフだった。
「春は花、夏は橘、秋は菊、冬は玉椿、長い徳川の世、世間の暗い裏道を鼠のように生き抜いてきた、稲荷の黒助、丸太の二人だ」
申し訳ないことにうろ覚え…実際はもっと長かったし素敵なセリフだったので、未見の方にはぜひ本物を聴いてほしいです。
しかし、やたらカッコいいセリフだったのは事実(笑)
やってることのえげつなさとのギャップが、おかしくってツボだった。

悪人なので、やっぱり最後には白鷺に斬られてしまう。
先に斬られた丸太を見て、稲荷が目を見開いて丸太!と呼び、直後に稲荷も斬られる。
何気ない演出なんだけど、なんだかんだ、兄弟分は互いが大事だったんだろうなぁと思わせられた。

お芝居の幕が閉じるやいなや、横に座っていたおばあちゃんが、私の肘を突っついた。
「私、今まで三つ大衆演劇の劇団を見てるんだけど、ここ一番上手だった!」
ねえ!ですよねえ!とひとしきり盛り上がっていると。
おばあちゃんの連れのご婦人が、しみじみ呟いた。
「芝居、すごく考えられてる。ここの座長、頭良いわ。賢いわ」
私も、改めて感じた。
全員の演技力の高さは、もう言うまでもないけれど。
スピーディーな展開や、絵になる場面が随所随所に織り込まれているところには、倭座長の知性が光っていると思った。

東京に戻ってから、ファンの方のブログをチェックしていると、梅南座は連休明けも大入り続きのようだ。
7か月の関東公演で、各地に明るい旋風を起こして行かれたように。
懐かしい関西でも、馴染みのお客さんに愛されまくっているのだろうな。

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