たつみ演劇BOX・辰巳小龍さん個人舞踊「飢餓海峡」

2014.5.3 夜の部@浪速クラブ

―「あの人は 私の大恩人ですもの
  一日たりとも 忘れたことはありません」―

八重の10年間が、迫ってきた。

写真・辰巳小龍さん(個人舞踊「飢餓海峡」より)


敬愛する小龍さんの「飢餓海峡」は、昨年10月に初めて見て感涙した。
(「2013年 珠玉の一本―個人舞踊編―」を書いたときに振り返っている)

5/3(土)の夜、浪速クラブでこの「飢餓海峡」に再会したら。
初見よりもさらに大きな、肌に降るような衝撃があった。
なので再び、小龍ワールドの至芸について書きたい。

小龍さんが、新聞記事を大切そうに抱えて、ふらりと舞台に出て来る。
黒のショールに頼るように立ち、惑いながら。
それでも、恩人を懸命に見つけようと、視線を彷徨わせる。

―「トロッコ列車で 会いましたね
あなたは私にタバコくれて 私はあなたに握りままをあげました」―


「飢餓海峡」を踊る役者さんはたくさんいるけど。
少なくとも私が見た中で、こんなに、生身の八重の人生がのしかかって見えたのは、小龍さんの舞踊だけだ。

落ち着かなげに空を仰いだり、身を守るように胸を押さえたり。
ほんの一振り一振りの動きから。
“犬飼さん”を思い続けた一日一日が、滲み出て来る。

―「お金で女の花を売る 貧しい女の言うことだから」―
世間に後ろ指を指されてきた娼妓が。
偶然受け取った、かするような優しさを、固く握りしめてきた。

小龍さんは、固く目を閉じて、
懐かしい面影の載った新聞記事に、しがみつくような頬ずりをする。



八重の、10年。
それは、世の裏道を生き抜いてきた年月だ。
それは、孤独な恋を積もらせる年月だ。
―「自然に涙が出てきて 血が騒ぐの
あなたに会いたい 会いたいって…」―

ひとり暗い海を漂ってきた、飢えつく心の航路だ。

だから、“犬飼さん”が人違いだと言われたとき。
たったひとつの希望の光が、たち消えてしまう。
―「犬飼さんだ 犬飼さんだぁ!」―
望みは終わり。
恋は終わり。

だから、八重の望みは、望みとともにこの世から消えることに変わる。
赤い紅の唇が、赤い布を噛む。
それから、自分の首を締めあげる。
―愛して愛して 身を束ね
 たとえ地獄の果てまでも 連れてって―


一筋の人生が終わっていく様が、舞台に閃いて。
私はハンドタオル手に号泣…。
周りにも泣いてるお客さんいたように思う。

送り出しで、小龍さんに感動しましたとお伝えすると、あの優しさ満点スマイルで「伝わってるといいんですけど」と微笑まれた。
伝わって!ます!たっぷり!

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