剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「馬鹿の幸吉」

2014.5.3 昼の部@梅南座

むーっと口を固く結んで、顎を引いている。
手はトントンと休みなく、木槌でワラを叩いている。
時々、ぷぅっと頬を膨らませ、唇を尖らせて。
それが、倭座長のつくり出す、幸吉の表情だ。

写真・不動倭座長(当日デジカメ忘れたため5/4舞踊ショーより)


連休ですから!
金曜の夜、いそいそ乗ったのは新宿発の夜行バス、降車場所は天王寺駅。
大阪も3度目、少しは地下鉄にも慣れました。
それでもちょっと迷いながら梅南座を目指し、商店街の真ん中に「不動倭」の幟が立っているのを見たとき、嬉しかったこと、懐かしかったこと。

「馬鹿の幸吉」はファンの方のブログで泣けるお芝居と書かれていて、前から見たいと思っていた。
なんと言っても倭さんの演じる、頭の弱い青年・幸吉が素晴らしかった。
近所のお加代(叶夕茶々さん)に、祭で何かおみやげを買ってきてあげる、と言われて。
幸吉の口からたどたどしい言葉が、じたじたともがくように飛び出す。
「飴とな、しょうが焼きと、饅頭と、飴と、しょうが焼きと…」
「面はいらんの?幸吉、面、好きやと思うで」
「面?面て、なんや。面より、饅頭買うてきて、飴とな、しょうが焼きと…」

幸吉と一緒に暮らしているのは、庄屋の主人(勝龍治総裁)と、娘のお美代(宝華紗宮子さん)。
優しい“おじさん”と“お嬢さん”が、幸吉は大好きだ。
でももう一人、大嫌いな同居人がいる。
「幸吉、ただいま。うちの人はいないのかい」
主人の後妻のお滝(宝華弥寿さん)が帰って来ると、幸吉はじろりとねめつける。
お滝は幸吉の嫌悪をものともせず、お美代を呼びつけて罵る。
「お美代、あたしが呼んだらすぐに出てこいって言ってるだろう!お前ときたら、本当にしつけされてないんだから」
「おっかさん、すみません、すみません」
幸吉にとってお滝は、お嬢さんをいじめる “悪いおばはん”なのだ。

幸吉の定位置は、庄屋の入り口。
そこに腰を下ろして、休むことなく、草鞋を作り続けている。
「幸吉、奥にもらってきたお饅頭があるから、一緒に食べよう」
とお美代が声をかけても、
「駄目、幸吉、仕事ちゅるわ」
作った草鞋を、町に売りに行き、ひたすらお金を溜める。

実は幸吉は、一年前に飢えていたところを庄屋に助けられた居候だ。
故郷はどこなのか、家族はどうしたのか、誰にもわからない。

役人の健三(勝小虎代表代行)が、幼子をなだめるように、幸吉に問いかける。
「もうずいぶんお金がたまったろう、何に使うんだ?」
「幸吉の金とちゃう、幸吉の姉やんの金や。姉やんにあげるの」
この言葉で、庄屋の主人もお美代も、幸吉に姉がいたことを初めて知る。
「そうか、お前には姉さんがいたのか。姉さんは今、どこにいるんだ?」
「わからんど」

お前はどこから来たんだ?
わからんど。
お前の親は、さぞ心配しているのではないか?
わからんど。

幸吉は、素性の見えない男なんだけど。
いつか会う“姉やん”のため、無心にトントンと草鞋を作る姿には、童心の清さがぎゅっと詰まっていて。
倭さんの編み出す純粋さに、胸を衝かれた。
この方の演技は、本当に、一番素直な種類の感動を呼び覚ます。

物語は、月明かりの中、悲劇に終わる。
明らかになる“姉やん”の正体と、流血の惨事。
幸吉の泣き顔が、照明を落とした舞台に、ぎりぎり焼きつく。

私は、伏線を溜めて溜めて、最後でそれを一気に回収して泣かせるっていうパターンが一番涙線に来るので。
前半で、“姉やん”を思って働く幸吉の姿を、もう少し長く見たかったな…と欲が出たりもするけど。
「姉やんに会いたい、どうやったら会えるん?」
幸吉が泣きながら、姉やんのいる月に向かって手を合わせて。
突っかえながら、唱える文言。
「なみゅあみ、なむあみ、だぶつ。これで姉やんに会える?」
この場面には、やはり切なさ・哀れさが極まっていた。

7か月ぶりの関西公演。
大入りの客席には、「やっと戻って来てくれた~」と笑顔の関西ファンの方もいらした。
〈倭組〉の皆さんも、懐かしい関西の空気で、リラックスされてるような。

私自身も、4か月ぶりの大阪の空気を満喫してきました。
ちょっと地下鉄乗ったり歩いただけで、他の大衆演劇場に出くわすのが面白い。

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