まな美座お芝居「祭り太鼓に泣く親父」・1 島崎寿恵さんの父親役

2014.4.12 @メヌマラドン温泉ホテル

昨年10月から、まな美座は気になる存在だった。
「芝居が好きなんだったら、来年3月に旗揚げする、まな美座は見た方がいいよ」
昨年9-10月、劇団KAZUMA東京公演に指導に来ていた美影愛さんに、そう伺っていたからだ。
(以前美影さんについて書いた記事はこちら)

東京からローカル線を乗り継ぎ、熊谷駅からバスに揺られ、三ツ橋バス停からてくてく徒歩、合計で片道3時間。
メヌマラドン温泉のピンクの壁が、目の前に現れたときはかなりの達成感があった。
わりと朝早めに着いたけど、大広間では既に地元のお客さんたちが、お風呂グッズを手に、輪になってお喋りしていた。

「寿恵さん、この人は本当にうまいから」
美影さんに何度も名前を聞いた女優さんを、ようやく見れた!

写真・島崎寿恵座長(当日個人舞踊「くらやみ橋から」より)

(0481.jpでは寿恵さんは指導となっているけど、4/12(土)に座長として口上挨拶されていたのは寿恵さんでした。なので島崎寿恵座長と表記しています)

「祭り太鼓に泣く親父」の寿恵さんは、まさかのお爺ちゃん役!
頬をこけさせたお爺ちゃんメイクに、ぱちぱち瞬く目が可愛い。
ひょうたんとおかめが描かれた履き物がユーモラスだ。

寿恵さん演じる老いたとっつぁんは、江戸に嫁いだ娘・お鷹に会いに、田舎からはるばる娘の嫁ぎ先へやって来る。
「ああようやく着いた、本当に会えた、会えた、婿殿!」
娘婿の佐太郎(里見剣次郎さん)に迎えられて、歓声を上げる。

佐太郎は、腕のいい大工の親方になっていた。
その評判を聞き、とっつぁんは上機嫌だ。
「ここまで来る途中、人に案内してもろうたんじゃが、婿殿のことを、若いのにあの人は大したもんじゃと言うとったぞ」
それになぁ、と照れ混じりに続ける。
「わしの娘のことも、褒められた褒められた…。佐太やんの成功は、半分以上が嫁の力じゃとな」
“あの家の女将さんは素晴らしい”と人から褒められて、とっつぁんは娘のお鷹が誇らしくって仕方ない。
演じる寿恵さんの全身から、娘への慈しみがいっぱいに滲み出てくる。

喜色満面のとっつぁんは、気づかない。
佐太郎の顔が、ずっと曇っていることに。

佐太郎が出かけ、とっつぁんが一人留守番をしていると、子方大工の虎五郎(市川新さん)が戸を叩く。
一緒に酒盛りしたのが間違いだった。
泥酔した虎五郎の口から、真実が飛び出してしまう。
「親方も、前の女房はろくなもんじゃなかったぜ、あのお鷹のやつはよ!それに比べて今のお島姐さんは、観音菩薩だよ、ホント」

とっつぁんの顔が凍りつく。
喜劇から哀歌への転調。

全ては、とっつぁんの誤解だった。
“嫁の力が半分以上”
寄せられた賛辞は、佐太郎の後妻のお島(夢一途さん)へのものだった。
お鷹は、浮世絵師と浮気し、佐太郎の金を持って駆け落ちという恥知らずを犯した後だった。

喜びに満ちた前半の分、後半の哀しみはひたひたと染み入る。
「たとえどんなに出来の悪い子であっても、お鷹はわしの娘じゃ。わしにとっては、たった一人のかけがえのない娘なんじゃ」
寿恵さんは瞼をきつく閉じて、体を震わせ、両手を重ね合わせて。
親心の悲しさ、盲愛の愚かさまでありありと紡ぎ出される。

佐太郎とお島の夫婦は、お鷹との縁は切れても、とっつぁんとの縁は切れないと言う。
「いつでも、うちにいらしてくださいね」
優しく言うお島を見つめ、とっつぁんはぽつりとつぶやく。
「優しいのう…わしの娘があんたのようだったなら…」
夕闇の中、遠くからぴぃぴぃと祭りの楽器の音が響いてくる。
親子の風景は、祭りの浮かれ気分に取り残されたような寂寥に包まれる。

幕が閉まる直前、田舎に帰って行くとっつぁんのぼやきが印象的だった。
「付けた名前が悪かったかな…お鷹なんて名にしたから、どこへ飛んでいったかわからんようになってしもうた。お亀とかにしておけばよかったかもしれん」
客席になだらかな笑いの波が起きた。
「お鷹よ、お鷹よう…」
寿恵さんが目を潤ませながら、杖にすがるように、舞台袖の道をはけていく。
田舎から出てきた娘思いの父親は、悲しくて、でもユーモラスで、同情すべきで、同時におかしい。
悲しすぎず、笑いにも転がらず、そのさじ加減が見事だった。

そして寿恵さんの口上挨拶の丁寧なこと!
「お客様の少年・少女のような笑顔を見るのが、私にとって何よりの喜びでございます。今日は宝物のような日になりました!」
最前列に座っていたので、寿恵さんのきらきらした目を間近で見られた。
若者のような勢いのある語り口に、一気にこの方を好きになってしまった。
送り出しで少しお話ししていただくと、
「東京からわざわざ、ありがとうございます」
パッと心に飛び込んでくる朗らかさ、笑顔の大きさ。

そんなわけで、寿恵さんがあまりに圧倒的な存在感を放っていたけど。
里見剣次郎さんと市川新さんの巧さにも目を見張った。
②に続きます。

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