剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「虎の改心」

2014.3.23 昼の部@スパランドホテル内藤

心底好きな喜劇って、思い返すたび、ほっこりとした笑いが改めて胸にほころぶ。
「虎の改心」は、見てるときも楽しかったけど、見た後で何回思い出しても楽しい!

不動倭座長演じる酔っぱらいの虎が、舞台端からよれよれ歩いてくる。
「酔ってない、ひょってないってぇ、言うてるやん」
呂律の回らない舌といい、絡むような千鳥足といい、倭さんの虎は酒くささまで客席に臭ってきそうだ。
頬は真っ赤、そして、羽織る着物も能天気な赤色。

写真・不動倭座長(当日舞踊ショーより)

最近、初めて倭さんを見た友人が、「すごくきれいな顔立ちの人」って評していた。こういうお写真を見るとそれがよくわかる。

さて大工の虎は、基本的にはいい人なのに、酒を飲むと豹変してしまう。
その日も、気持ちよく昼間から酒を煽った途端、女房(叶夕晏さん)に喧嘩をふっかけ始めた。
義父(宝華弥寿さん)が止めに入ると、あろうことか。
「お前ら、そうかわかった、実の親子で間男しとるやろ!」
そんな馬鹿な…と言う暇もなく、出してきたのは出刃包丁。
女房と義父は慌てふためき、
「虎に殺される、殺される!」
と、虎の面倒を見ている棟梁(勝小虎さん)の家に逃げこむ。

倭さんの前日の口上で、酒癖の悪い男の話だっていうのは聞いてたけど。
わりと深刻なレベルのドメスティック・バイオレンスだった…!

虎は、べろべろに酔ったまま棟梁の家にやって来る。
「うちのかかあとじじい、ここに来とりますやろ。あいつら間男しよるねん、間男成敗したるんや」
ここで、棟梁はひとつ芝居を打つ。
「なら、飛び道具を使い。これで撃ったら一発や」
出刃包丁の代わりに渡したのは、黒光りするピストル。
ただし、玩具の。

虎に悩まされる周囲の人々を集めて、棟梁は筋書きを説明する。
「ええか、みんな、虎に撃たれて死ぬっちゅう芝居をしてほしい。この機会に、酒癖の悪さを直したらんとな」
芝居の参加者は5人。
虎の女房、義父、茶店の豆吉(宝華紗宮子さん)、後輩の大工(勝彪華さん)、それに少々頭のぼんやりした棟梁の息子(叶夕茶々さん)。

この5人の“死に方”がそれぞれに強烈で、舞台を賑々しく盛り立てる。
個人的に好きだったのは、紗宮子さん演じる豆吉かな。
「わし、もう人生に疲れたー!なあ、頼むから殺したって、殺してえなー!」
と、舞台に大の字になって、駄々っ子のように死をせがむ場面のシュールさ(笑)

「虎の改心」は、明るく描き出される嘘の世界だ。
酔いが回って頭を突っ込んだ先は、キッチュな彩りの玩具箱。
ぱぁんと玩具のピストルが鳴れば、冗談みたいな殺人が起きる。

でもその中に、確かな深い息遣いが現れる。
「みんな、みんな死んどる、どないしよう」
ようやく我に返った虎の嘆きは、それまでの笑いとの落差で、より沁みる。
「ああ、わしは、なんてこと、ホンマになんてことをしてもうたんやろ」
倭さんのくしゃくしゃの泣き顔が、物語の奥に埋まっていた吐息を掘り出す。

玩具箱みたいなお芝居の奥底に、さりげなく配された温もりがたまらなく好きだ。
小虎さんの棟梁にも、年期の入った苦労人の風情が織り込まれている。

写真・勝小虎代表代行(当日舞踊ショーより)


棟梁が可愛がっている息子には、やや事情があったりする。
「お前、いくつになった、言うてみ?」
問われて、茶々さん演じる息子は、楽しそうに指を八本立てる。
棟梁は額を押さえて、ため息をつく。
「あのなあ、お前もう二十歳や。八つの歳に頭を打ってから、ずっと頭の中が八つで止まってしもうたけど、お前もう立派な大人なんやで」
茶々さんのぽややんとした笑顔は、劇中では笑いにしか転化されないけど。
実は、棟梁のけっこうな苦労をほのめかせる設定じゃないだろうか。

「わしの大事なせがれに、何しとんねん!」
彪華さん演じる若大工が、息子に乗っかって苛めていると、すぐに飛んできて檄を飛ばす。
永遠の八歳児と暮らしてきた日々が積もって、棟梁の家の居間が、うっすらと情けの透ける風景になる。
小虎さんの悪役の話は再三してるけど、情の伝わる苦労人の役も良いですよねえ。
(懐かしいところでは「七福神」の番頭役とか)

ぱぁんと鳴る、玩具の銃声の向こう。
ほろりと溶ける、心のひだ。
「虎の改心」、今まで見たはる駒喜劇で一番好きかもってくらい好きになった!
スパランドホテル内藤ではきっちり1時間に収めていたけど、劇場で上演するときはもっと長めに演ったりするんだろうか。
たっぷり、じっくり…いつか必ず劇場で見たい。

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