剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「闇簪」

2014.3.22 夜の部@スパランドホテル内藤

黄色い縞の着物で、元気な足をむき出して、花道の間をバタバタ走ってくる。
「兄貴―!安太郎の兄貴!」
夜の部の「闇簪」はなんと言っても、晏さん演じる三枚目・“もんじ”の楽しさが抜群!

写真・叶夕晏さん(3/23個人舞踊「Love Love Love」より)


この個人はとっても優しくて可愛かった。先月大島劇場で仲良くなった方に、「晏さんの舞踊が大好きで毎回楽しみ」という方がいたのも頷ける。

さて、もんじは、倭座長演じる主人公・安太郎の弟分に当たる。
旅に出ていた安太郎ともんじが、白木屋一家に帰って来ると、親分が亡くなっていた。
安太郎が跡目を継ぎ、お嬢さん(宝華紗宮子さん)ももらい受けることになる。

「なんだよそれー、跡目もお嬢さんも兄貴がもらうってのかよ、やってらんねえや」
拗ねるもんじをなだめようと、安太郎は知恵を使う。
「もんじ、お前には俺の後見をやってもらおうと思うんだ」
一家を城にたとえて、
「お殿様なんてのはなぁ、馬鹿でもできる。実際に裏でお殿様を動かしてるのは後見だ。後見は賢くなくっちゃあできない。だからお前に頼むんだ」
ここでもんじの曇り顔が一点、輝く。
「俺は賢いから後見かぁ!馬鹿な兄貴は親分をやって、賢い俺が後見…わかったよ兄貴!」
シンプルかつ自分への自信満々な思考回路が、いっそ清々しい。
晏さんが演じると、輪郭に率直さが滲み出て、可愛さまで増してくる。

私が好きなシーンは、もんじがお嬢さんに旅の面白話を聞かせる場面。
「ホントにこんなことがあったんだよ!安太郎の兄貴ってば、困ったもんだぜ。女とくれば見境なし!」
父親が死んで落ち込むお嬢さんを笑わせて、少しでも元気づけようとする。
単なるお馬鹿さんではない、人格の優しさが描かれていて、何より満面の笑みで威勢よく演じる晏さんを見ていると、温かい気持ちになる。
まあこの後、旅の話が段々安太郎の悪口になるっていうオチはつくのだけど(笑)

つくづく、晏さんの芝居の魅力を味わえたことは、山梨遠征の大きな収穫だった。
丸っこい顔に乗っかる表情が、弾けるように変わる。
締まった唇がぱかっと開いて、高音のセリフがつんのめるように走る。
昼の部の「匕首六之助」のおぎん役も、大熱演だったし。

もんじの生み出す笑いが「闇簪」の明の部分だとすると。
暗の部分を引き受けるのが、白木屋一家親分の後妻のお巻(宝華弥寿さん)。
神楽獅子の親分(勝小虎さん)と取引して、夫を殺させた黒幕である。

写真・宝華弥寿さん(3/23舞踊ショーより)


まず、大衆演劇で女性の悪役っていうのが珍しい気がして、悪役好きとしては注目せずにいられない。
私の中でお巻のキャラクターは、“傘を持つ女性”というイメージ。
弥寿さんの傘の使い方が、とても巧みで象徴的だったから。

たとえば、お巻と情人の吉松(勝彪華さん)の場面。
お巻が親分を殺してしまったことに、吉松は慄いているが、お巻はねっとりと艶のある声を投げかける。
「吉松、お前の欲しいのは…これだろう?」
お巻の持っていた大きな傘で、二人の男女の姿はすっぽり覆われる。
すぐ傍に親分の遺体が転がっているというのに、二人からは見えなくなる。
血の罪悪が傘に隠され、代わりに睦みの匂いが立ちこめる。

傘って、“隠す”道具になりうる。
後にお巻は吉松とも情がもつれ、口封じに吉松をも殺してしまうのだけど。
そのときも傘を持っていて、広げられた骨と布の向こうから、ぬっと小刀が突き出す。

「ねえ吉松、あたしと別れるのはわかったからさ。これで今生の別れになるかもしれないんだよ、別れ酒の一杯くらい、つきあっとくれよ」
とても毒婦には見えない、お巻の洒脱な笑い方。
粋な女性が、風情をまとって大きな傘をぱらり広げる。
傘の内側、隠された奥、殺意が閃く。
お巻と傘、シンボリックな組み合わせが印象的だった。

晏さん・弥寿さんをはじめ、卓抜した女優さんを見ると。
沸く思いは憧れと、ほのかな切なさ。
一応この身も女だから?
勝手に感じてしまう共感と愛情は、かっこいい男優さんに対する高らかなファン心よりも、ひょっとするとざらりと深い。
大衆演劇ファンの友達や、客席で仲良くなった方の話を聞くと、実は心に「ひいきの女優さん」を秘めている方の多いこと。

凛とした女優さんのまなざし、大好き。

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