剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「匕首六之助」

2014.3.22 昼の部@スパランドホテル内藤

〈倭組〉のお芝居が見たいよーと騒ぐ心に、素直に従って。
手にはうきうきと特急列車の切符。
甲州・石和温泉へ、週末弾丸旅行して参りました!

スパランド内藤の観劇処・「夢屋」は、とってもきれいでスタッフさんもきびきびしているところだった。
土曜のお昼のお外題ば「匕首六之助」。

幕が開くと、叶夕茶々さんが辻占売りの姿で、舞台をトコトコ歩いていた。
―淡路島 通う千鳥の 恋の辻占―
茶々さんが歌っている歌は、じんと沁みる哀調だ。
この辻占売りの少年・与吉と、スリの六之助(不動倭座長)が出会うところで話が始まる。
「なぁ与吉、さっき辻占を売るとき、何か歌ってたなぁ。もう一回聞かせてくれ」
「うん、いいよ」
通う千鳥の恋の辻占……冒頭の風景は、芝居全景を寂寞と包む。

写真・叶夕茶々さん(当日舞踊ショーより)


写真・不動倭座長(当日舞踊ショーより)


六之助は、母のお民(宝華弥寿さん)の待つふるさとに帰って来た。
だが、悪名高い盗人になってしまった今、親子名乗りができるはずもない。

私が胸を衝かれたのは、六之助が家の外でひっそり聞き耳を立てている場面。
家の中から、お民と妹のお美代(宝華紗宮子さん)のお喋りが、弾んで聞こえて来る。
「お美代、お前の縁談も決まってよかったなあ」
六之助は少し目を丸くし、縁談…となぞって言う。
「あとは、せがれの六之助さえ帰って来てくれればなぁ」
お民の諦念混じりの言葉が聞こえると、六之助の目が切なそうに縮まる。

家の中の母と妹、家の外の兄。
戸に寄りかかる倭さんの表情に、断ち切れない肉親への愛情が語られる。

そして結局、母子の縁は、嘆きの中に引きちぎられる。
母と妹を脅す高利貸しの金兵衛(勝小虎さん)を、怒りにまかせて殺してしまい、六之助はお民の前で役人(勝彪華さん)に捕えられる。
お民は目が見えない。
けれど声から、すぐそこにいるのが六之助ではないかと察する。
「目が開きたや、目が開きたや、ああ!」
骨ばった指が、見えない目を何度もこする。
息子を求めて、這うように手のひらで地面を探る。
弥寿さんの苦しいくらい肉薄した演技に、客席で目元を押さえる人が多数。
私も感涙…。

写真・宝華弥寿さん(当日舞踊ショーより)

この方の老け役は本当に至芸だと思う。

そして、深い構造だなぁと思ったのが、もう一組の母子が配されていること。
冒頭に出てきた辻占売りの与吉は、ふるさとの両親が死んでしまい、姉のおぎん(叶夕晏さん)を探していた。
お芝居の中盤に、六之助がおぎんを見つけ出すエピソードがある。
亡き母の縫った着物を抱きしめ、おぎんが手を合わせて叫ぶ。
「おっかさん、声よ届けば十万里、ここからお詫びを申し上げます…!」
晏さん、涙を流しての熱演だった。

おぎんの場合、母の死後とはいえ、おっかさんと呼び慕う心を口にできる。
けれど六之助の場合は、母が生きているにも関わらず、子だと名乗れない。
眼前で「六之助」と泣く母に、震える手を差し伸べても、決して触れられない。
「すまねえ、すまねぇ、おっかさん…」
空を仰ぐ倭さんの、心を噛み切るような表情が、余計に悲痛に響く。

あわじしま かようちどりの こいのつじうら…
何度か繰り返される歌は、母子の悲しみにもつれ、影を落として遠ざかる。

…と、六之助とお民の悲劇に着目して書いたけど、実はそれは一つの切り口にすぎない。
7人の登場人物全員に見せ場があって、かつスピーディーでテンポが良くて、ぴたぴたっ!とパズルがはめこまれている。
山梨行きに同行してくれた知人は、今まで見た〈倭組〉の芝居で「匕首六之助」が一番好きとのこと。

そして、皆さんやっぱり山梨のお客さんにも愛されているのが、とても伝わってきた。
倭座長の口上が始まると、すぐにアイスコーヒーが小ジョッキで差し入れられる。
倭さんが、あの人懐っこい笑顔で感謝を述べて、
「一口だけいただきます」
と言って一気飲みするのが恒例化しているようだ。

再会の嬉しさいっぱいに、山梨編は夜の部へ続きます。

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