精悍で、甘やかで―剣戟はる駒座〈倭組〉・勝小虎代表代行―

虎という動物は、強靭な牙を持つ一方で。
眠たいときのとろんとした瞳は、ネコ科らしい愛らしさ。

勝小虎さんを見ていると、名は体を表すなぁとつくづく思う。
――鋭くて精悍。
――甘やかで柔和。
真逆の形容が、すとんと一人の役者さんの両肩に乗ってしまうのを見ると。

写真・2/9舞踊ショーより


こないだの倭座長を語る記事に続き、今回はその後見役・勝小虎さんについて、もそもそ管見を綴りたい。

はる駒座を初めて見たのは、今日からちょうど1年前、2013年3月3日の浅草木馬館。
そのときから、私の印象に最も焼きついた役者さんはこの方だったりする。
理由は、お芝居「秋葉の宗太」で極めて黒い悪役を演じていたから…!
(そのときの鑑賞録。メインに書いているのは勝龍治総裁の凄まじい名演だけれど)

小虎さんの役名は鉄五郎。
義理ある親分を冤罪で島流しにし、目をつぶすという非道ぶり。
目くらになった親分がよろめきながらつく杖を、鉄五郎はべきっとへし折る。
昏い歓びに満ちた薄ら笑いに、この役者さんは一体何者なのだろう…?!とゾクゾクした。

それから1年。
「河内十人斬り」の熊太郎「亀甲組」の神南「やくざの花道」の剛三
小虎さんの創る役はどれも、質感がぬっと肌に乗るようなリアリティに驚嘆する。

それは、所作の細やかさや感情の深くからみついた声といった、芸に裏打ちされているのはもちろん。
シャープな容貌と雰囲気が、演技にぴたりハマるせいもあると思う。

大島劇場で近くの席だった団体さんいわく、
「目が素敵よね、シュッしてて、色っぽくて」
また千代田ラドンセンターでおかずを分けてくれた方いわく、
「私はあの男らしい眉が好き。いまどきの役者さんってあんまりくっきり眉描かないけど、小虎さんの眉の描き方は凛々しくって好きだわ」

切れ長の目とか、尖り気味の輪郭とか。
その面差しの艶は一つ一つが硬質で、各役柄を引き締める。

が、話はここで終わらない。
へにゃっ、と。
硬派な丈夫は、柔和に笑み崩れる。
「秋葉の宗太」の後、小虎さんの個人舞踊は衝撃だった。
目を細めて満面の笑みで踊っているのを見て、鉄五郎役だった人と同じと思えず、呆気に取られたものだ。

優しげで、なごやか――この方がもう一つ魅せる面は、枝垂れるような女形で結晶するのかも。

写真・2/11個人舞踊「ひばりの佐渡情話」より
(初見のとき感動して書いた感想)


動きは、しっとりとしどけなく。
眼差しは、ほろほろと淡く。
小虎さんの女形は、どこまでも柔らかな色味を宿して、ゆっくりゆっくり客席を振り向く。

――切れ味鋭い、精悍さ。
――心ほどける、甘やかさ。
虎の核には、両方が矛盾なく、隣り合って棲みつく。

何度か見た兎のイラスト入りのお着物は、とても象徴的だ。
男らしさを引き立てるような深い黒の一方で、足元に可愛い兎がいる着物。
あと余談だけれど、ご本人かなりの甘党らしい。
兎とか甘党とか、まつわる要素がやたら可愛い寄りなのが面白い。

お芝居が良かったとか舞踊が良かったとかの言葉には、「何もしてないんですけどね~」とニコニコ応じられる。
弟の倭座長が、感情を熱く投げ放って来る芸風なのに対し。
お兄ちゃん側には、自分を主張する欲があまりなさそう。
ラストショーではいつも、座長としてエネルギーいっぱいに輝く弟さんの後ろで、それは楽しそうに踊っていた。

ずっと、こんな風にさらりしなやかに、やってこられたんだろうか。
これからも、そんな風にあっさり飄々と、やっていかれるんだろうな。

写真・2/16舞踊ショーより


名門の大所帯だったこれまでと。
旗揚げして走り始めたばかりのこれからを。
全部心地良さげに飲みこんで、虎がほのぼの笑う。

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