剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「浅間時雨」&千秋楽舞台模様

2013.2.26 夜の部@大島劇場

水曜の夜だけど絶対千秋楽には駆けつける!
それだけ考えて、なんとか仕事を片付けて、職場最寄りの駅から電車に飛び乗って。
ホッと一息ついてから、じわじわ喜びが込み上げてきた。
行けるんだ、見れるんだ、〈倭組〉千秋楽に参加できるんだ!

大島劇場に着くと、すでにいっぱいに埋め尽くされていた。
幕開けを待つ人々の顔は、楽しみと名残り惜しさを半分ずつ抱えている。
何度か劇場で遭遇した方は、
「一ヶ月ずっと、一日おきくらいに来てた。楽しかったぁ~」
劇場のお近くに住んでいるという方は、
「この劇団、今まで見た中で一番良かった。来月は寂しくなるねぇ」
会うたびにお菓子をくれる方は、
「倭さんたちを見て、元気をもらって、それでまた仕事を頑張れた。大好きなお芝居を見て、仕事に還元できるって最高!」

口々に話すお客さんの笑みが、幕開けをいまかいまかと待つ瞳が。
〈倭組〉の皆さんが、初めての川崎で、この一ヶ月で築いたものの証なのだろう。

千秋楽のお芝居は「浅間時雨」。
やくざ者の浅間の喜太郎(勝小虎さん)が、出奔した故郷に帰ってこれからは親孝行に生きようとするも。
年老いたおっかさん(宝華弥寿さん)はなかなか喜太郎を許してくれない…という話。
“帰郷”を主軸にした物語、こういうのを千秋楽に持って来てくれるの嬉しいなぁ。

まず、弥寿さん演じるおっかさんが、愛しくって切ないのだ。

写真・宝華弥寿さん(当日舞踊ショー「自慢じゃないが女だよ」より)


「わしには子どもはおらんと思うとる。お前様は、赤の他人じゃ」
帰って来た喜太郎に、おっかさんがこんなキツい言葉を浴びせるのには、わけがある。
「ああもう、おっかさんじゃ話にならねぇ、とっつぁんに会わせてくれ」
憎まれ口を叩く喜太郎の目を、じっとのぞきこんで。
「喜太郎、お前の会いたい、優しいとっつぁんはなぁ…」

おっかさんが親不孝な息子に突きつけたのは、位牌。

沈黙の降りた親子の間に位牌が置かれ、おっかさんはとつとつと語る。
「とっつぁんはなぁ、喜太郎が帰って来たとき不自由せんようにって、働いて働いて…心労と過労で体を壊してしもうた」
「寝ていても、戸口で物音がすれば目を覚まして、枯れ木のような手を伸ばして“喜太郎が帰って来た”って…」
弥寿さんの声が、田舎の寒々しい家の情景を立ち起こす。
おっかさんの冷たい態度の裏には、息子を恋しがりながら死んでいったとっつぁんの姿が枷のように引っかかっている。

それでも、喜太郎が家を出て行った後。
「とっつぁん、喜太郎が帰って来た、喜太郎が帰って来たでなぁ、良かったなぁ…」
前掛けで位牌を大切そうにさすりながら、良かったなぁと繰り返す。
弥寿さんのほっそりした体から、どこまでも素朴な、いとけない愛情が染み出る。
私は、涙が滲んで来てしまって。
見れば、お隣の女性もハンカチを取り出していた。
幕間に「今のは、泣く所だったよね…!」と頷きあった。

弥寿さん、とにかく明るくてパワフルな感じなのに。
お芝居でのお婆さん役は、リアルな老人の命の頼りなさがおぼろげにまとわりついて、涙線を刺激する。

それから、小虎さんの喜太郎役。
個人的に面白いポイントは、序盤で立派なやくざ者だった喜太郎が、懐かしい母親を前にして、段々子どもの顔に戻って行く様だ。

写真・勝小虎代表代行(当日舞踊ショーより)

このたおやかな女形もしばらく見納め…。

「お品さん、なんで来なすった。こんなとこに来るんじゃねぇ、俺が勝手にすることだ」
冒頭で、情を交わしたお品(宝華紗宮子さん)のため、藤屋藤兵衛親分(不動倭座長)の下へ単身乗り込んで行く様は、実にストイック。
だけど、故郷に帰って、実家を恐る恐るのぞくあたりから、行動も表情も子どもっぽくなっていく。
「ずっと帰ってなかったからな…入りづれぇな~…」
と戸口で悩んだ挙句、
「ごめんくださーい!」
と声だけかけて、おっかさんが出て来るとすぐ物影に引っ込む。
このピンポンダッシュまがい(笑)のことを3回繰り返す。

感情に正直で不作法なところを見ると、喜太郎って多分若者の設定なんだろうな…
と思ってたら、ラストの大団円で。
「俺はこう見えても、まだ21だ!」
小虎さん本人も笑い混じりのセリフ(笑)

とにかく、一か月間いつ見ても、お芝居が胸に迫って来た。
2013年3-4月に見ていた、大所帯だった頃のはる駒座が無敵すぎて。
正直、二座に分かれたとき、大好きだったあの舞台景色がどこにもなくなってしまったんだろうかと不安だった。
正直、見る前は、たった大人7人のお芝居が、こんなにすごいと思ってなかった。
――見事に全部覆された。
すごいよ。
いや、すごいよ(大事なことなので2回言いました)。

「我々は山梨へ移ります。また、山梨のお客さんを元気にして、癒してきます!」
力強く言っていた倭座長。

写真・不動倭座長(当日アンコール「Liar!Liar!」より)


この大きな笑顔で。
今日3/1から、山梨のお客さんにパワーを分け与えているんだろうな。
そしてまた、たくさんのお客さんに愛されていくのだろうな。

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コメント

こんにちはー

お萩さんのリポートを読んでたら涙がつーっと出てきました。絵が浮かんできて、自然に出てくるんです。それと不動倭座長や小虎さんたちの活躍ぶりが目に浮かんでうれしくなります。もう少し近くに来てほしいです。早く観に行きたい♪ 楽しいに決まってる!! それまではお萩さんのリポートを読み返してテンション上げて待ってます。また、いろんな劇団のリポートも楽しみにしてますので、よろしくお願いします。

Re: こんにちはー

いらっしゃいませ(*^_^*)
絵が浮かんできて涙が出てくる…なんて、文章を書いていて一番嬉しいお言葉です。ありがとうございます。
倭組、7人というのが信じられないくらいパワフルな舞台です。一分たりとも飽きたり退屈させるっていうことがないです。ただただ楽しい!元気さがすごい!
3~4月は関東の劇団をいくつか見に行こうと思ってます。山梨の倭組にも、一度温泉旅行兼ねて行く予定です♪
またお待ちしています。

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