剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「甲州二人旅」

2014.2.23 昼の部@大島劇場

〈倭組〉の若き女優・宝華紗宮子さんの、声が抜群に好きだ。
「ちょっと待って!」
紗宮子さんの初登場の場面、花道の向こうから響いてくる清さ、美しさ。

写真・宝華紗宮子さん(右)と叶夕茶々さん(左)の相舞踊(当日舞踊ショーより)


「甲州二人旅」で紗宮子さんが演じていたのは、女スリのおせんという役。
おせん自身はスリを辞めたがっている。
「もうあたし、スリの仕事がつくづく嫌になりました。どうか、足を洗わせてください」
と嘆願しても、泥棒一味の親分(宝華弥寿さん)には一蹴される。
「どうせ、ばばあがいるんだからね、おせんは逃げられやしないよ」
老いた母親(叶夕晏さん)を人質にとられているため、10年間という長きに渡って、おせんは飼い殺しにされてきた。

紗宮子さんのみずみずしい姿もさることながら、その声ゆえに、おせんの印象はとにかく可憐だ。
たとえば冒頭、旅人の春太郎(勝小虎さん)を騙して、財布を盗むくだり。
「勝さん、ねえあなた勝さんじゃない?」
から始まって、
「勝さん、昔、あたしのこと助けてくれたでしょう。命の恩人だわ、ずっと探してたのよ」
「思い出して、三年前よ」
「勝さん、会いたかったー…!」
しゃらっと鈴を転がすような声で、淀みなく、しかも懸命に言われたら。
「そうだ、思い出したよ、俺は命の恩人だ!」
てな具合に、春太郎じゃなくたってコロッと騙されてしまうのもわかる。

「おっかさん、おっかさんも一緒に逃げましょう、早く」
「私の話も、どうかひととおり聞いてください…!」
高いところも低いところも、清廉に澄む。
個人的には、これぞ時代劇のヒロインの声。

お母さんの弥寿さんゆずりなのかな。
群舞のときちょくちょく聞ける、母娘のそーれっ!っていう掛け声は、通りの良さに惚れ惚れする。

紗宮子さんの声には、はる駒座に出会って間もない2013年3月に既にうっとりした覚えがある。
浅草木馬館で見た「河内十人斬り」は、自分の中で伝説みたいなお芝居だ(そのときの観賞録)。
そのときも、おやな役の紗宮子さんについてこんなことを書いていた。

“鈴が鳴るような声、とは言うけれど。
宝華紗宮子さんの声は、もっとか細く、もっと切なく、吐息のように消え入りそうだ。
その声に、観ているこちらの胸は引き絞られて、締めつけられて。
「なあ兄やん、行かんとって」”


ああ、思い出したらたまらなくなってきた…
これぞ!ヒロインの声!

あとちょっとだけ「甲州二人旅」の話。
「二人旅」というのは、春太郎(勝小虎さん)・秋太郎(不動倭座長)のやくざ二人のこと。
倭さん・小虎さんの股旅姿も久々に見て、すっかり見惚れた。

写真・不動倭座長(当日舞踊ショーより)


写真・勝小虎代表代行(当日舞踊ショーより)


倭さんの秋太郎は、口調も手足の運びも軽やか。
「やい、お前、泥棒の親玉なんだろう。とぼけるな、みんな婆さんに聞いて知ってるんだぞ」
おせんをヒロインとすると、秋太郎はこのお芝居のヒーローポジション。
倭さんに似合った、強気で明るい、愛すべきヒーロー像だった。

小虎さんの春太郎も、三度笠を抱え直す、ちょっとした仕草まで気風が良い。
「待て、番所に突き出すのは可哀そうだろう。こんな若え娘さんがスリなんてやってんだ、きっと深いわけがあるに違いねえ」
春太郎は、秋太郎よりもだいぶ情に流されがち。
その分、親しみ深い人格が現れる。

なんて言うか、このご兄弟はわりと本気で何でもできるな…

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