剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「静岡土産」

2014.2.11 昼の部@大島劇場

どたばた喜劇の、ラスト2分。
セリフのない、不動倭座長の表情と手ぶりだけの2分。
笑いが涙に転換され、一気にせり上がる。

写真・不動倭座長(当日ミニショーより)


「静岡土産」は、周囲からよく好きと耳にするお外題だったので、ようやく見られて嬉しかった。
現代の建設会社で起こる、人情喜劇だ。
とはいえ、FAXが通信手段の主役っぽかったので20年くらい前だろうか?

倭さんが演じるのは、バーコード頭の建設会社社長。
社長は、我が子のように育ててきた進公(勝彪華さん)を、愛娘(叶夕茶々さん)と一緒にさせて、次期社長に据えようとしている。

「大丈夫や、進公は子どもの頃から、わしの言うことに嫌て言うたこと、いっぺんもない。わしが娘と一緒になれ!言えばハイて従うわ」
少々自分勝手で、調子が良くって。
「そうか、好きな人できたんか、お前もそんな年になったかぁ。花柄なんか着て、なぁ」
でも、娘に向ける満面の喜色は、しっかり子煩悩。

「進公、お前が社長になったら全部お前にやる。この机もやる、椅子もやる、この家もやる、ついでに娘もやる!」
デリカシーはあんまりなさそうだけど、いったん懐に入れた者には大粒の愛情を注ぐ。
そんなあっけらかんとした人柄が温かかった。

社長の望みを吹っ飛ばすのは、突如事務所に現れた芸者・清香(宝華紗宮子さん)だ。
「私、進ちゃんと結婚の約束をしているんです」
清香は進公に会うために静岡から出て来たのだった。

ここで、もう一つの物語が動き出す。
清香は実は、生き別れた父を探していた。
清香が持ち歩いている古い写真を見て、進公は仰天する。
「これ、髪ふさふさやけど、社長や…」

家族の歴史。
家族の秘密。
それがみんな見事に結実する、ラスト2分は白眉だ。

「お父さん!」と社長に抱きつく清香。
スポットライトが、倭さんの顔を照らし出す。
困惑の表情が、わずかずつ、変わっていく。

まず迷い、驚き、訝しがる。
やがて思い出し、気づき、なお驚く。
そして納得し、後悔し、懺悔する。
進公のほうを伺ったり、清香の歳を指折って数えたり。
無言の表情と動きだけで、秘密を巻き戻していく。

……最後に渾身の愛情を込めて、清香に伸ばされる腕。

劇中散々笑ったはずなのに、ほろっと涙が零れた。

それから個人的にはもう一つ、「静岡土産」で目を見張った所があった。
進公を演じた、彪華さんの鳶職姿のハマり具合!

写真・勝彪華さん(当日舞踊ショーより)


上の宮本武蔵の姿もカッコいいけど、お芝居での鳶職姿はひらりと決まっていた。
濃紺の鳶服に、若々しい細身が映える。
無駄のない労働着なのが、進公の働き者ぶりを象徴するようでまた良いのだ。

元々鳶服に美学めいたものを感じる私にとって、この日の彪華さんを見れたのは幸運だった。
「あの子、鳶の格好とっても似合う。良さが引き立つ!」と、一緒だった知人からも同意を得た。

2/2(日)の「嵐山の夕暮れ」といい、〈倭組〉では現代劇でもリアルなドラマが見れて嬉しい限り。

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