剣戟はる駒座〈倭組〉お芝居「浜の兄弟」

2014.2.1 夜の部@大島劇場

元気。パワー。爆発する生命力。
「あー楽しい、川崎最高やん!」とは不動倭座長の歌謡途中での言葉。
弾けきった笑顔の力強さに、気持ちよく引きずりこまれる。
3か月ぶりに見た<倭組>の川崎での初日は、とにかく力に満ちていた。

写真・不動倭座長(当日舞踊ショーより)

この笑顔は倭さんの純な感じの魅力が出ていて、我ながらよく撮れたと思う。

幕開けのミニショーから、倭さんの女形3連続、加えて勝小虎さんの女形2連続。
見どころてんこ盛りで、全力でお客さんを楽しませようという心意気がぐいぐい伝わって来る。

写真・勝小虎代表代行(当日ミニショーより)

小虎さんの女形は、“きれいなお姉さん”系の女形の中で一番好きかもしれない。
枝垂れるようななまめかしさが、しとしとと胸に残る。

さてお芝居は「浜の兄弟」。
たまたま、前回11月に千代田ラドン温泉センターで見たのも、このお芝居だった。
真面目な兄・直(不動倭座長)と、不肖の弟・兼松(勝小虎さん)の人情噺だ。
11月の記事のほうで、倭さん・小虎さんご兄弟の演技について語っているので、今回は別の視点から書いてみたい。

視点その①…宝華弥寿さんのおっかさん役と“家の匂い”

はる駒座が二つに分かれてから、私が遅ればせながら気づいたことの一つは、弥寿さんという役者さんの凄さだ。

写真・宝華弥寿さん(当日舞踊ショーより)


弥寿さんが演じるのは、直と兼松の年老いた“おっかさん”。
「兼、旅をしてきてお腹が空いとるじゃろう。ご飯食べてくるといい、お前の好きななすびの浅漬けもあるからな」
5年ぶりに帰郷した兼松を、手放しで可愛がる。
たとえ、兼松が浜の人々の積立金を持って江戸に逃げたドラ息子でも。
そのせいで、残された直とおっかさんは、5年間夜なべ仕事をしてきたとしても。
おっかさんには、そんなことは関係ないのだ。
「兼、兼松、よう帰って来たなぁ」
消息不明だった息子が帰って来て嬉しくてたまらない、純朴な喜びで顔をくしゃくしゃにして笑う。

だが後半、兼松のさらなる不祥事が発覚する。
兄の直は、ついに兼松と縁を切ると宣言する。
おっかさんは、直に聞かせるため、泣きながら兼松に告げる。
「お前みたいな悪いやつは、さっさとこのうちから出て行け!」
そして直がいなくなった途端、
「嘘じゃ、嘘じゃよ」
と、小さな手を兼松の肩に乗せて、愛しげに揺する。
「なぁ、兼松、お前、なんで、なんで…」
……私はこの場面の弥寿さんに一番感涙する。
どうしようもない息子への、どうしようもない母の愛情が、弥寿さんの手指に込められている。

家の匂い。
肉親だから血縁だから、同じ家に住んでいるからこそ、親子兄弟の仲には諸々ある。
その諸々を、やるせない愛情で飲み下している、私もよく知るあのイエの匂い。
顔を覆って「兼松…」と号泣する弥寿さんから、伝わって来た。

視点その②…勝彪華さんの近所の漁師役と“浜の匂い”

<倭組>の「浜の兄弟」でもう一つすごいなと思うのは、浜の閉ざされた人間関係の怖さがフッと現れることだ。
それが顕著なのは、倭座長の直が、勝彪華さん演じる近所の漁師と会話する場面。

写真・勝彪華さん(当日舞踊ショーより)

今回はおめでたい初日なので写真多めに。

普段は、仲良さげにご近所づきあいしているのに。
帰って来た兼松の立派な姿を見た、彪華さんの一言が火をつける。
「やっぱり男は悪いことの一つもせんと、目立った出世はできんのやなあ」
この言葉で、直がいきり立つ。

「お前、何言うた、今」
直は、いつもの感情の蓋が外れている。
思い出すのは、5年前、兼松が金を持って逃げた後、浜の連中が家に押し寄せたときのことだ。
「松明持って先頭に立って、お前の弟や、どうすんのやて、うちに駆け込んできたのは誰や。火ぃ付けられるかと思うたで。それが、兼松がちょっときれいな格好して帰って来たからって、なんや」
5年間、抑え込んでいるわだかまりが、息を吹き返す。

どんなしがらみがあっても、そこを逃げ出すことの叶わない、浜社会の狭さ。
舞台にせり上がって来る、リアルな浜の匂い。

こういう良いお芝居をガッツリ見ると、満足感でお腹一杯になる。
「はる駒座のお芝居はすごいって言ってたけど、ホントにそうね。特に倭座長、うまい、すごい!」
誘った知人にもそう耳打ちされて、幸福一杯な夜だった。

ところで大島劇場は初めて行った。
極めてレトロ・コンパクトだっていうのは、噂に聞いていたのでそれほど驚かなかったけど。
衝撃だったのは、畳の床がやや前傾して斜めになっていたこと!
後ろの人が見やすいよう後方の座席位置が高くなっているのは、椅子席の劇場だと普通だけど、畳でそれを実践するなんて…(笑)
考えた人の発想がダイナミックすぎて、かなり笑った。

この面白い劇場で、<倭組>を一ヶ月見られると思うとワクワクして仕方がない。


にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村

関連記事
スポンサーサイト

コメント

新開地で

昨日2日にはる駒Gのらいちょう組を観てきました。二つになる前は最強劇団だったので、比較すると物足りなさを感じました。でも、芝居はやはり上手いです。いろんな方のブログを読むと倭組も行く先々で大好評のようで、関西に乗ったにはすぐに駆けつける思いです。ところで勝龍治さんの芝居ははじけて面白かったです。少人数になったのでいろんなキャラを出してるみたいです。ては、このへんで。いつも楽しく拝見してます。

Re: 新開地で

いらっしゃいませ!
合同だった頃はホント、最強軍団でしたね~
去年の東京で3・4月見ていた舞台がいかに贅沢だったことか、今更実感です。
2月14日~17日、勝龍治さんが倭組にいらっしゃるそうです。
倭さん・小虎さん×龍治さんというのも面白い組み合わせで、どんな風になるんでしょう。
またその記事も書きますね♪

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)