橘小竜丸劇団お芝居「修善寺の決闘」

2014.1.18 昼の部@川越温泉湯遊ランド

「姿がいい」という表現。
演劇評論でよく目に止まる、役者さんへの褒め言葉。
追分三五郎を演じる橘鈴丸さんを見ていると、自然にこの言葉が浮かんだ。
旅人の着物を軽くまとって、口笛をひゅうと肩の上あたりに流して歩く。
その姿の良さ、姿の粋!

写真・橘鈴丸副座長(当日個人舞踊「ジュリアに傷心」より)


友人と一緒に「演劇グラフ」2月号を眺めていたら。
「この人きれい!かっこいい!関東の役者さんなの?」
彼女の指差した先は、読者の方の投稿コーナーにあった鈴丸さんのお写真。
これがきっかけで、二人して、かの副座長を見に行った。

お芝居「修善寺の決闘」で、鈴丸さんの役どころは清水次郎長の子分・追分三五郎。
次郎長一家は金策に困り、かつて金を貸した修善寺藤五郎親分(ゲスト・大門力也さん)に借りを返してもらえないかと、三五郎が使いに来たのだった。

「おー、着いた着いた……ちょっと酒飲んでいくかなぁ」
三五郎が、舞台袖からひょいと踊り出た瞬間。
パッと空気が軽やかになったのがわかった。
猫みたいに潤む目が、とっても楽しげだ。

鈴丸さんの三五郎は、ちょっとした動作・仕草が、ふと目を引く。
たとえば。
「うう~ん…」
と茶店の椅子に腰かけて、眠たそうに伸びをする、腕の溌剌とした線だとか。
「そんなすぐ酔いの覚める酒じゃつまんねぇな」
酒の銘柄に迷う、軽く寄せられた眉だとか。
「すまねぇ、俺のふところはすっからかんだ!」
言い捨てて、韋駄天走りで茶店から食い逃げする場面なんかは、走る手足の躍動感が、花道を駆け抜けていく。

元気いっぱい、若木みたいなやくざもの。
加えて、女優さんならではの色香が細く絡んで。
ニッと笑う目が唇が、きれいな弧を客席に投げかける。

…素直に超かっこよかった。
超かっこよかった!(大事なことなので二回言った)

特に瞠目したのは、三五郎が修善寺一家を訪ね、若衆の菊松(橘龍丸座長)相手に仁義を切る場面。
「おひけえなすって!」
サッと腰は落とされ頭が下げられ、体が観客のまなざしから隠れるのと反対に、前方に差し出された腕には指先まで力がこもっている。
このときの、“絵”のバランスの美しさ。

以前、「演劇グラフ」で読んだ鈴丸さんのインタビューでは、晴れやかな笑顔からは想像できないほど、これまで大きな苦労をされたようだった。
大衆演劇の世界は、素人の私の目から見ても男性の社会なんだろうなと思う(もちろんそれだけが苦労の理由ではないのだろうけど)。
最近読んでいる、戦後の大衆演劇の本たちの中でも、登場する名優さんはほとんど男優さん。

でも、縞の着物に長ドス差して、手には大きな三度笠。
無数の名優さんが着てこられたであろう、やくざ姿が美しい役者さんは?と自問すると。
私の頭には、先日の鈴丸さんのお姿が焼きついている。
時代って、こんな風にさりげなく変わっていくのかも。

舞踊ショーで「ジュリアに傷心」をリズミカルに踊る鈴丸さんは、ファンの女の子たちから高い歓声を受けていた。
当の私も、「今のめっちゃかっこよかった!今の!」と興奮気味に友人を振り返っていた。

笠の下から町の景色をのぞいて、縞の着物で飄々と歩く。
かの女優さんの追分三五郎、その姿の優しさ。

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