劇団KAZUMA「紺屋高尾」② ―柚姫将さんの高尾役―

2014.1.5 昼の部@京橋羅い舞座

写真・柚姫将さん(当日個人舞踊「たまゆら」より)


明日の新作では、将さんが花魁役!
と、前日の夜の部の際に伺ってから、ワクワク感が半端じゃないことに。
お芝居で花魁ってことは、花魁衣装+花魁言葉のコラボじゃないですか。

前日の夜は大阪最後の夜を楽しもうと遅くまで飲んだので、ホテルの目覚ましアラームが鳴ったときは泥のように眠かった。
だけど脳裏で、あ、今日将さんの花魁、と思ったらスッと体が起き上がったので、我ながらよほど楽しみだったんだなぁと思う(笑)。

前の「紺屋高尾」①でも書いたように、高尾太夫が実際に登場するまでがけっこう長め。
だから、うずうずと焦らされてる間に、久蔵にしっかり感情移入できる作りになっている。

いよいよ久蔵と高尾の対面の場面。
舞台右手で緊張しきっている久蔵に向かって、左手から高尾が現れる。
頭にはごってり桃色を放つ太い簪、豪奢な姿が大ぶりに舞台に咲いて、わぁと内心声を上げた。

最初、高尾の言葉は鷹揚で、口数は少なめだ。
「いつ?」
久蔵が、え?と聞き返せば、
「次は、いつ?」
三年経ったらまた来ます――
蚊の鳴くような久蔵の言葉を聞いて、
「三年は長いざぁます…もっと、早く」
高位の花魁というだけあって、高尾の表情は動かない。
それは、久蔵の思いの丈がこもった独白が始まっても、同じだった。

「三年前に一目見たときからどうしても忘れられず、この三年、十五両貯めれぱ花魁に会える、それだけ、そのことだけを考えて働いてきました…」

じいっと聞いている傾城の横顔は、綺麗だけど近づきがたく。
何を考えて聞いているのか、気になって仕方なかった。

だからこそ、胸の底から晴れていくような気がした。
「ぬしの女房に、なりに行きましょう」
この言葉を聞いたときは。
硬直していた二人の空間から、奇跡の糸がゆるりと伸び、温かく脈打っていく。

当惑の限りを尽くした顔の久蔵に、花魁は凍りついたかんばせをくしゃっと崩し、歯を見せて笑む。
「ぬしの正直に、惚れんした!」
このセリフと、将さんの横顔の笑み。
その瞬間、パッと心に爆ぜた、安堵感といったら!
高尾の慈しみに満ちた人格が、弾けるように伝わってくる。

高尾は、三十両と証拠の髪差しを丁寧に包んで、久蔵に手渡す。
「あちきという女がいるのだから、もうこんな店へは来てはなりませんえ」
別れの言葉に、うっすら迫力じみたものまで滲ませるのも、根底には情の厚さがあるから。
この情があってこそ、高尾の印象は、濃く深い。
「来年、三月十五日!」
将さんの切れ長の目に、生き生きと意志が光り始める。

それから、一番感情が盛り上がる最後の場面。
花魁の重い衣服を脱ぎ捨て、高尾は晴れやかな訪問着(この着物の白がまた美しいのだ)で紺屋を訪れる。
「久さん、…元気?」
久蔵は感動のあまり立てなくなってしまう。
佑馬さん演じる親方が、久蔵に「太夫を大事にしなきゃいけないぞ」と説き、久蔵が泣き混じりに頷いている横で。

――ふと見ると、立っていた高尾はしゃがみこんでいる。
久蔵の位置まで腰を下ろして、膝を地につけて。
まなざしの高さを、久蔵に合わせて。

この間まで、豪華絢爛な衣装を纏っていたこの人が。
夫になるべき人に寄り添って、あっさり膝を突く。
そのさりげないゆかしさ。

高尾太夫は、考えてみればかなり破天荒な性格だ。
いくら久蔵の誠実な思いに感動したからって、いきなり初対面の紺屋に嫁入りを決断してしまうのだから。
その行動が、将さんの創り出す高尾太夫の輪郭を見ていると、なんとなく納得されるのだ。

ただ綺麗な女形で花魁役というのではなく。
心親しさに満ちた将さんの高尾太夫を見ることができたから、「紺屋高尾」は大好きな一本になった。
遠征最終日はいつも寂しいけど、今回は甘やかな物語を胸いっぱいに収めて、幸せ気分で帰路に着いた。

年明けの遠征記事はこれにておしまい。
京橋でも、たくさんのファンの方にお世話になりました。
お萩と友人に親切にしてくださった方、お土産を持たせてくださった方、幕間に楽しくお喋りしてくださった方、ありがとうございました。
ドーナツもお煎餅もおかきもラーメンも美味しかったです!(結局食い気)

次にKAZUMAの客席の一員になれるのはいつの日か…
まぁそんなに長いこと我慢できず、数か月後にはしれっと感想記事を書いているような気がします。

劇団KAZUMAの皆さまは、ちょうど中日を終えたばかり。
今日も元気に楽しくやってらっしゃるのだろうな。

彼らの旅生活に一つでも多くの楽しい出会いがあればいい、一つでも多くの喜びが転がっているといい。
遠方のファンとしては、ただそれを願うのみ。
いただいた幸せな舞台景色を、一つ一つ思い出しながら。

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コメント

素敵でしたo(^-^)o

>しぃゃん(^O^) 様

ありがとうございます♪
劇団KAZUMAの舞台は見てるときも書いてるときも幸せです(*^^)v

愛ちゃんが

先日、KAZUMAを観てきました。やっぱり趣味でやってますーって、言ってました。ミニショーの終わりの座員紹介で、佑馬さんに猪木をふりましたが見事に似てました。ただし、いまいち盛り上がらなかったんですけど。今月で愛ちゃんが退団するということで、寂しくなります。いい劇団ですが座員が少ないのがツライとこですね。弟の藤千代之助がゲストでしたが、ゲストに頼らなくてはならないのかもしれません。一馬座長にはずーっと頑張っていただきたいと思います。

Re: 愛ちゃんが

KAZUMAの近況報告、ありがとうございます(^^)
私がいた1/2~5は愛さんがいなかったので、10月に東京公演でお会いしたのが最後になりそうです。
都合のいいときたまにでいいから、一曲踊るだけでいいから、また出てくれないかな…と遠征仲間と語ってます。

なんだか常々人数が少なめなので、まだ名無しの若手さんの成長に期待大です。
私も一馬座長にはずっと劇団KAZUMAを率いていてほしいなあと思います。

お久しぶりです。
中々コメントできなくて申し訳ないです(。>﹏<。)

座長が口上のときに言っている
姿がめちゃくちゃ頭に浮かびます♪
「紺屋高尾」本当に観てみたいです!!
これは観ないと絶対損ですね!

先日、小倉であった座長大会行けませんでした…
ようやく座長に会えると思ったのに…残念でした(TдT)

また、コメントさせてもらいます(*^_^*)

>来夢様

来夢さんがいつもここを見ててくれるだけで、本当に嬉しいです♪
とっても励まされます。

「紺屋高尾」、見てから20日経った今でもありありと場面が思い出せます。
私ももう一度必ず見たいです。

座長大会、残念でしたね(>_<)
私もいつか、KAZUMAの皆さんの本拠地である九州で演技する皆さんを観てみたいなぁ…と思っています。

またのご訪問、心待ちにしております。

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