劇団KAZUMAお芝居「平公の恋は浜の兄弟」&客席の縁の話

2014.1.4 夜の部@京橋羅い舞座

鼻が、間抜けに真っ赤につぶれている。
だから平公(藤美一馬座長)の顔は、いつもピエロみたいに人の笑い心をくすぐる。
でもそれって、実は切ないと思う。
「俺はお美代ちゃんの、ひひなずけ(いいなずけ)」
何を言っても、はひふへほと音が抜けてしまうって、実はけっこう哀しいと思う。

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)


遠征3日目、「平公の恋は浜の兄弟」は、恋愛を中心に据えた喜劇だった。
浜に暮らす兄は平公。
弟は京造(冴刃竜也さん)。
そして、二人から焦がれられるヒロインがお美代(霞ゆうかさん)。

平公は、幼い頃にお美代ちゃんを洪水から助けたとき、鼻を岩に派手にぶつけた。
それが原因で、今も真っ赤につぶれた鼻、ハ行に抜ける声。
「お前はもう、はえれ!…いや、なんで入って来るんだ。俺ははいれ(入れ)って言ったんじゃない、はえれ(帰れ)ってひってんだ(言ってんだ)」
一馬座長の三枚目役は、安定のゆるゆるした面白さで。
最初のうちは、ただ笑っていた。

でも、見ているうちに、かなり本気で平公が可哀そうになってきた。
だって、彼は何をしても、鼻と声のせいで道化にしかならないのだ。
お美代ちゃんに結婚を申し込んでも。
お美代ちゃんを奪う京造が憎くてならず、包丁まで(!)持ち出しても。
「京造お前、お美代ちゃんと、わかへろ(別れろ)」
どんなに真剣な思いも、苛烈な怒りすらも、赤鼻の前に霧散してしまう。

荒くれ者の虎(藤美真の助さん)にさらわれたお美代ちゃんを、またも命がけで助けたのに。
それでも、どうあっても、結局好きな人が選ぶのは、弟の京造なのだ。
「なんで俺は貧乏くじばっかり…」
そう零す平公の姿に(これはすぐギャグに回収されるんだけど)、胸のしまるような哀切を感じてしまった。

古今東西、顔に強烈なコンプレックスのあるキャラクターって、大抵問題を抱えているのは鼻だ。
大学時代から心にしまっている、フランスの戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」といい。
中学時代に図書館で見つけて、強烈なインパクトを食らった芥川龍之助の「鼻」といい。
顔のまん真ん中のパーツに、くすんだ自意識を抱えている彼らが、一馬座長の演技を見ながらよぎっていった。
真っ赤な鼻は、哀しいクラウンのシンボル。

――っていうような、めっちゃ頭固いことを、すぐ私は考えてしまうなぁ…。
悲劇好き、泣けるお芝居大好きの性質のためなんだろうか。

平公と虎とダンス対決の場面とか、普通に爆笑ポイントもたくさんあった(あの場面の真の助さんの表情が面白すぎて忘れられない)。
強い女性が大好きな友人は、平公に想いを寄せるワカメちゃん(柚姫将さん)をすっかり気に入ったみたいで、始終幸せそうだった。

早いもので、翌日は東京へ帰る日…。
カラフルな京橋羅い舞座の客席にも、ちょっとずつ馴染んで来たところだったのに、もうお別れ。

それでも、わずかな日数の間に、客席で得られた思い出もあった。
たとえばこの夜、私の隣の方は、劇団KAZUMA初めてという方だった。
私が東京から来たんです、と言うと目を丸くされて、幕間に色々聞いてきてくれた。
「どの方が花形?あの将さんって人?」
「あの背の高い方はなんていう名前?」
「座長さん、ええなあ。とってもええ」
舞踊ショーのいつもの太鼓タイムの後、目を細めておっしゃった。
「この劇団、なかなかええやん。見どころが多くて、楽しい」
ふふ。にんまり。

劇場の客席に、薄く広がる縁。
昼夜3時間限り、同じ舞台を見つめて、同じ感情の波を受け止める縁。
その薄布のような淡い繋がりに、私は深い愛着を覚える。
舞台が終われば、それじゃあ失礼します、また見かけたら声かけてください。
コートを着ながら会釈して、あっさり終わり。
3時間の喜怒哀楽を分け合った縁は、それでも袖摺り合うよりは多少強い。

もちろん、あの広まりの中には、こんな優しい繋がりだけがあるわけじゃない。
遠征中のある日、芝居の時もショーのときも、後方の席で騒々しく叫ぶ人がいた。
興奮気味で、何を言っているのかわからない。
うるさいなぁと周囲の人たちも、露骨に眉をひそめていた。
私は、せめて舞台上の皆さんにはあまり聞こえていないといいと思いながら、芝居のセリフに叫び声が重なるたびにハラハラしていた(実際はしっかり聞こえていたらしい)。
ラストショーのときには、叫び声は一段と大きくなり、なかなか舞台に集中できなかった。

悲しくなった。腹も立った。
でも、友人の見方は違った。
終演後に友人と飲んでいたら、叫んでいた人について「可哀そう」とまじめな顔で言った。
「興奮してたってことは、すごく劇団KAZUMAが好きなんだと思う。でも、他のやり方がわからないんだろうね。好きな劇団の舞台を、周りと楽しくシェアできないなんて、可哀そうだ」
――自分の浅慮を反省。
私は大衆演劇に人情を求めてるくせに、情の深さが全然足りない…

色んな人が、色んな思いを抱えて劇場に来る。
その中から、私の指は、優しいものをいくつ掬い取れるだろうか。

さて、残る1/5(日)は京橋遠征最終日。
お芝居は新作「紺屋高尾」!
この「紺屋高尾」が好き過ぎて、見てから一週間経つ今も、思い出すたびに幸せな気持ちになる。
気合いを入れて書いていきます。

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