2013年 珠玉の一本―ラストショー編―

観劇の最後の楽しみ、ラストショー。
いわばディナーの最後のデザート的な存在。
デザート目当てに劇場に行く日を決めることだって、もちろん多々ある(特に女形大会とか聞いちゃうとあっさり乗せられる)。
張りきって書いていきます!

劇団花吹雪「六人花魁」
2013.1.26 夜の部@浅草木馬館


写真・桜春之丞座長(奥)・桜京之介座長(前)「六人花魁」より


1月から最大級のインパクトを食らってしまった。
花吹雪の男優陣6人が、一人ずつ花魁姿で踊るという豪華絢爛なショー。
5人目の花魁は、桜京之介座長。
セリーヌ・ディオンの「My heart will go on」の美声に乗って、しなやかに登場した。
その格好はギラギラの金色お着物、頭には発光する巨大な髪飾り…って言っていいのか迷うくらいでっかい(笑)

しかし、5人目でこれだけ壮大な見せ方をすると、最後の6人目はどうするのだろう…?
――疑問は、登場した春之丞座長を見て吹っ飛んだ。
衣装は純白、曲は「Can you celebrate?」。
呆気に取られていると、会場を飲み込む春之丞さんの艶然スマイル。
後ろから差し込む照明に、純白の衣装が照り映える。
「妖精だ…」「妖精だね…」
思わず隣の友人と言い合ってしまった。
この友人とは、いまだに「あれはすごかった…」「ウェディングドレスすごかった…」と語り草になるほど。


近江飛龍劇団「Ti amo」
2013.6.22 夜の部@篠原演芸場


写真・近江飛龍座長(左)・近江春之介さん(右) 「Ti amo」より


大衆演劇頻出曲「Ti amo」について、友人と深く合意したこと。
「あの歌はきっと、照れを全て捨てきらないと表現できない!」
だって、 ―「愛してるってフランス語でなんて言うの?」―
このセリフ聞いただけで、私はもう照れ混じりに笑ってしまう…
役者さんたちは舞台に立つと照れなんて吹っ飛ぶのだろうか。

そんな「Ti amo」の中でも、照れのての字もなく。
ためらいなく清々しく勢いよく、ラテンの愛の世界を見せつけてくれたのが、近江飛龍座長。
お衣装の肌露出もガッツリ多く、持ち前の熱量を全開に放って。
赤ソファの上で足を組み、相手役の春之介さんに「Ti amo」のメロディに沿って語りかける。
―「Je t'aime」「ドイツ語では?」―
飛龍座長は普段のコミカルな色をすっかり消して、精悍な顔つきがくらりと締まる。
睦言の真似、接吻の真似、繰り広げられる熱愛の世界。
―「…じゃあ、イタリア語では?」―
篠原演芸場にあんなに濃い色気が立ちこめているのを、初めて体験した。


たつみ演劇BOX「桜小町」
2013.8.9 夜の部@篠原演芸場


写真・小泉ダイヤ座長「桜小町」より


私の中では、The たつみ演劇BOXのイメージのラストショー。
形がきちんと整っていて、でも華やかで現代的!
―桜 花ビラ ヒラヒラ
風ニ揺ラレ 舞ヒ踊レ―

ナオト・インティライミの歌詞に乗った、群舞の身のこなしの洒脱なこと。

たつみ演劇BOXはお芝居でもショーでも、古い色と新しい色がきれいに混ざっている感じが好きだ。
寝かせきった粋の中に、パッと明るいモダンカラーが見事に咲く。
特に「桜小町」ではダイヤ座長の女形(写真参照)の美しさが印象的だった。
凛と、しゃんと、墨で描いたような女形。
でも、軽やかでモダンな、お姫様。

「珠玉の一本」シリーズを書くために一年分の写真フォルダを見返していると、たつみ演劇BOXの写真は、一目見て“きれい”と思う。
客がそう感じるように、苦心の衣装選び、舞台作りをされているのだろう。
その絵姿、2014年もきっと東京で見られる…よね?


劇団KAZUMA「曽根崎心中」
2013.9.16 昼の部・夜の部@浅草木馬館


写真・藤美一馬座長(左)・柚姫将さん(右)「曽根崎心中」より


劇団KAZUMAのラストショーの中でも、今のところベストの一本が「曽根崎心中」。
宇崎竜堂さんのロックナンバーを使用しているため、すごく斬新で、ミュージカルみたいにテンポがいい心中物だ。

でも、私が「曽根崎心中」を推す最大の理由は別にある。
それは、心中に至るまでのストーリーを丁寧に見せてくれること!

まず冒頭は、お初徳兵衛の会話の場面。
なぜ便りをちっともくれないのか、と柚姫将さん演じるお初が、一馬座長演じる徳兵衛を責める。
将さんのお初は拗ねたり困惑したり、純な可愛さ。
徳兵衛の窮状を聞けば、知らずに責めた自分を恥じて、
―言うたこの身は 恥知らず―
かぶりを振る姿に、お初の生真面目さが滲む。

続いて、九平次が往来で徳兵衛との約束を反故にする場面。
―寄るな 寄るな この嘘つきめ!―
ここでは龍美佑馬さんの、いかにも根っこの曲がった感じの九平次役が好きだ。

徳兵衛は友人に殴られ蹴られ、世間に見捨てられ、悔し涙を零す。
―無念でござる 悔しゅうござる―
よろよろと身を起こし、惨めな自分を自嘲する。
灯りを落とした舞台の上、一馬座長の全身から、哀れさが滴るようだ。

そしてお初徳兵衛は、天神森へ向かうのである。
一つ一つのシーンを積んで、このカップルが心中にまで追い詰められていく様が描かれる(しかも曲自体のノリがいい)。
すっかり感情移入しているゆえに、最後の心中はより悲しく、よりカタルシスは深い。


剣戟はる駒座<倭組>「お里沢市」
2013.11.3 昼の部@千代田ラドン健康センター


写真・勝小虎さん「お里沢市」より

お写真がぼやけてしまった…

このラストショーを見られたのは、遠く土浦まで行った甲斐があると思った。
浪曲に合わせた、短いお芝居のようなラストショーだ。
目の見えない夫・沢市に倭座長、献身的な妻・お里に小虎さん。
このご兄弟が夫婦役を演じると、二人の間に濃い慕情が醸し出されて、ひたひたと沁みる。
実際に仲の良いご兄弟なんだろうなぁ、と想像されるのだ。

とりわけ、小虎さんのお里が胸を打つ。
―妻は夫をいたわりつ 夫は妻に慕いつつ―
夫が盲目というハンデを背負っているゆえに、お里は妻だけど夫を守る側。
だから健気に尽くすばっかりじゃなく、気丈でしっかり者だ。
―「沢市さん 心確かにくだしゃんせ」―
一途さ、芯の強さ、しっとりした色気、それらのバランスが、小虎さんの女形にしなやかに収まっていてとても良かった。


以上5本が、ラストショーの私的ベスト!

「珠玉の一本」シリーズ、選ぶときも書いてるときも、すごく楽しかった。
2013年、良い劇団さんたちがたくさん東京に来てくださったんだなと、つくづく思います。
来年の今頃、2014年の「珠玉の一本」では、どんなお芝居・ショーを並べることができるだろう?

このブログをお読みいただいている方の2013年ベストも、とても知りたいので…
もしよろしければ、コメントや拍手コメントで教えていただけると喜びます。

にほんブログ村 演劇ブログ 大衆演劇へ
にほんブログ村


関連記事
スポンサーサイト

コメント

他の方のベストも‥とお書きいただいたので、私のお気に入りを。観劇の多くが劇団kazumaなのでそこから。お芝居では「藤沢涙雨」悲しいけど情があるお芝居でした。とても良かったです。関西で初めて上演されるということでしたので、これからどんな色になるのかも楽しみです。個人舞踊は、お萩さんと同じく一馬座長の「銀座のトンビ」。座長の舞踊は他にも好きな曲が多くて!新年も大好きな劇団の観劇からスタートの予定で幸せです。
お萩さんのブログもとても楽しく読ませていただきました。ありがとうございましたm(__)m 新しい年も楽しみにしています。良いお年を。

>うさぎ様

ベスト、教えてくださってありがとうございます!
「藤沢涙雨」、いいお話ですよね。
たしか10月の篠原演芸場で初お披露目だったと思います。まだ出来たてほやほやで、新鮮なお芝居でした。
おっしゃるように、これからどんな色になって、KAZUMAのレパートリーに加わっていくんでしょう。楽しみです。

一馬座長の「銀座のトンビ」はやっぱり名品ですね。
実に楽しそうな良いお顔で踊る座長を見てると、こっちまで幸せなような、なんだか泣けてくるような…

こちらこそ、いつも読んでくださる方がいることがが何よりの励みです。楽しみにしているとの言葉、すごく、すごく嬉しいです。ありがとうございます。
うさぎさんも良いお年をお迎えください♪

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)