2013年 珠玉の一本―個人舞踊編―

普段はお芝居の話ばかり書いてるけど、私の記憶の中では舞踊ショーの名品も光っています。
特に個人舞踊は、その役者さん一人が紡ぐ舞台。
曲が流れている数分間、私の心を取り込むのは、一つの歌、一つのお衣装、ただ一つの世界だ。
紡ぎ手はその奥にたたずんで、自分の色に染め上げた糸を、面白そうに投げかける。
今も思い出せる、2013年の色鮮やかな糸たちを引っ張ってみましょう。


不動倭座長「恋」(剣戟はる駒座<倭組>座長 当時は花形)
2013.5.26 昼の部@ユラックス


―咲かないつぼみのように 報われない恋でした―

(この舞踊のみ、感動ゆえに記事まで書いています。
なのに写真は痛恨のミスで消えてしまった…)

倭さんの「恋」は、一種の衝撃体験だった。
歌の出だしと同時に、情景が、水が流れるように頭の中に流れこんできたのだ。
恋する女性に想いを伝えられずに、相手を陰から見つめる青年の姿が。

―せめて一度くらい 振り向いて欲しかった
せめて風のように ただそばにいたかった―

倭さんが演じる青年は、恋する相手に自分をうまく見せることなんて出来なかったんだろうな。
もしかしたら、器用に恋敵に出し抜かれたりもしたのかもしれない。
これはお芝居じゃあないのに、頭の中で切ない想像が止まなかった。


三河屋諒さん「夢日記」(劇団炎舞ゲスト)
2013.6.23 昼の部@川越温泉湯遊ランド


―ほのかな命の私には 大きな愛はいりません―
写真・三河屋諒さん「夢日記」より


セリフ入りの歌が始まった途端、川越温泉の「小江戸座」からは一つのざわめきすら消えた。
お食事をしていたお客さんも、箸を止めた。
暗闇の中に一粒、灯りを落としたかのように。
諒さんが語りかける。歌いかける。

―なにが欲しいと聞かれたら 夢が欲しいと答えます―
どうして夢かと問われたら 明日(あした)が見たいと答えます―

黒い着物、きゅっと上げた髪が、原爆症と闘う女性・夢千代の儚さ、それでも折れない輪郭の強さを伝える。
夢千代の物語をまとって、舞台の上の呼吸はひっそりと、けれど確かに。

恥ずかしながら、この時点では三河屋諒さんについて全く知らなかった。
「夢日記」を見て、すごい女優さんがいる…!と色々検索し、名優として高名な方であることを知ったのだった。


彩子さん「お嫁においで」(劇団KAZUMAゲスト)
2013.9.16 昼の部・夜の部@浅草木馬館


―月もなく淋しい 闇い夜も 僕にうたう君の微笑み―
写真・彩子さん「お嫁においで」より


可愛い、可愛い、可愛いー!
と何度胸中で叫びながら、写真を撮りまくったかわからない。
ピンク振袖×白黒パラソル×彩子さんの必殺スマイル。
たとえるなら、見た目も可愛くて甘いお菓子をたっぷり詰め込んで、さあどうぞ!って差し出されたキャンディボックス。

―舟が見えたなら ぬれた身体で 駆けてこい―
包み込むような彩子さんの懐の深さ、弾ける明るさが、凝縮された一曲だと思う。
台風18号直撃の日、それでも浅草まで行った甲斐は、この舞踊が見れただけで全て報われた。


辰巳小龍さん「飢餓海峡」(たつみ演劇BOX)
2013.10.13 昼の部@ユラックス


―漕いでも漕いでも たどる岸ない 飢餓海峡―
写真・辰巳小龍さん「飢餓海峡」より


こんな記事まで書くほど好きな小龍さんの、成りきる系舞踊は選ぶのに迷いに迷った。
「朝日の当たる家」とか「お玉」とか「母ざんげ」とか…。
名品揃いの中で結局「飢餓海峡」にしたのは、仕事の出張の合間に足を伸ばしたら、たまたま見れたという、自分の幸運に感謝して。

小龍さんの「飢餓海峡」は、泣かせる後半も圧巻だけど、思うに鍵は前半だ。
―「私にはあのときの犬飼さんだってことが、すぐわかりました!」―
“犬飼さん”に会えて、ああ、緊張するけどすごく嬉しい。
照れながら懸命に話す乙女のような“八重”が、あんまり可愛らしくって、健気で。
だからその後の悲劇が、より響いてくる。


藤美一馬座長「銀座のトンビ」(劇団KAZUMA)
2013.10.30 千秋楽@篠原演芸場


―俺は俺で最後まで ド派手にやってやるけどね―
写真・藤美一馬座長「銀座のトンビ」より


どこまでも和らげな面差しの、その人生が、じわり滲んでくる。
ただでさえ泣ける一馬座長の「銀座のトンビ」、それも東京公演千秋楽とあれば思い入れもひとしお(千秋楽の記事はこちら)。

「演劇グラフ」6月号掲載の「劇団漫遊記」は、劇団KAZUMAだった(当然即買い)。
一馬座長のインタビューは、何度も読み返した。
座長さんというのは、どんなに背負うものの多いことか。
毎日舞台に立ち続けるというのは、どんなに固い拳を握りしめなくてはできないことか。
でも、“死ぬまで役者でいたい”と語られていたから。

―俺は俺のやり方で ハッピーにやってやるけどね―
俺は俺で最後まで ド派手にやってやるけどね―

ハッピーに、ド派手に、いつまでも魅せてくれるのだろう。
あの、白く溶ける笑みとともに。


二代目・恋川純さん「翼をください」(桐龍座恋川劇団)
2013.11.27 夜の部@篠原演芸場


―今 私の願いごとが 叶うならば 翼がほしい―
写真・恋川純さん「翼をください」


もっと前へ。もっと上へ。
上へ、上へ、上へ!
そんな思いが爆発していた光景が、忘れられない。

二代目・恋川純さんからは、エネルギーが常々迸っているように見える。
9-10月の東京公演では、恋川劇団は次々と初挑戦のお芝居をやっていらしたそう。
そのうち「一本刀土俵入り」は私も見て、瑞々しい駒形茂兵衛(二代目さん)とお蔦さん(鈴川桃子さん)に拍手を送った。

「二代目を見てると元気になる」
「二代目が頑張ってるから、私も頑張ろうって気になる」
恋川劇団ファンの友人たちが、本当に楽しそうに語っていた。

―この大空に翼を広げ 飛んでいきたいよ―
芸の高みを見つめて。
強い強い眼力が、空に昇って行く。
上昇気流のただ中にいる、22歳の二代目さんは、きっと2014年も大衆演劇界を大きく揺さぶるのだろう。


以上6本、今年の忘れられない個人舞踊。
役者さんごとに、お芝居とは全く違う顔を見せてくれるのが本当に楽しい!
イントロと同時に、毎回高揚感があります。

珠玉の一本シリーズは、次で最後。
最後は―ラストショー編―です。


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