2013年 珠玉の一本―喜劇・人情劇編―

悲劇・真面目なお芝居編に続き、今回のピックアップは2013年に観た喜劇・人情劇の珠玉たち。
だけど、「泣いた」という涙の重さが肌に残る悲劇と違って、「笑った!」っていう喜色は軽々、お芝居が終われば肌から抜け落ちてしまう。
ひとときケラケラ笑って、半日も経てばなんであんなに笑ってたのか思い出せない。

だからこそ、今になっても私の奥に残っている笑いの粒は、ただおかしいだけじゃなく。
泣きがあり、情があり、悲しみさえもその中に溶けているように思います。
今回も1月から順番に、見た順。


劇団悠「山の兄妹 おちょこの嫁入り物語」
2013.1.3 夜の部@三吉演芸場


写真・高橋茂紀さん(当日舞踊ショーより)


兄妹愛を描いた温かいお芝居から、2013年の観劇をスタートできたのは実にラッキーだった。
とりわけ沁みるのが、木こりの兄(高橋茂紀さん)が、不細工な妹(松井悠座長)に注ぐ情愛だ。
妹が自分の醜さに気づかないよう、
「おちょこ、お前はかわいいから、鏡を見る必要なんてない」
家中の鏡を割って。
「おちょこ、お前はかわいい、かわいい」
繰り返し言い続けて。
二親を亡くし、山の中で、たった一人で妹を守ってきた兄。
嫁入り化粧を過剰に施して、かなりお化けじみてしまった妹の顔を見ても、
「いつもにも増してきれいだなぁ!」

……この情の深さ、たまらんです。

高橋茂紀さんは、結局この一回きりしか見れていないんだけど、すごく晴れやかな笑顔の印象的な役者さんだった。
6月、名古屋で劇団悠を見た知人も「高橋さんが良かった!」と話していて納得。


劇団花吹雪「踏切番」
2013.2.3 昼の部@篠原演芸場


写真・桜京之介座長(当日舞踊ショーより)


話の本筋となるのは、社長に見初められた妹(桜恵介さん)と、妹の生き方を案じる兄(桜春之丞座長)。
が、もう一人、強烈なトリックスターがいる。
「よかったなぁ!すごいやん!」
兄妹の真剣な会話に後ろから茶々を入れる、春之丞さんの弟分。
桜京之介さんが、健康的でお調子者の青年を元気いっぱいに演じる。

兄妹二人きりで話がしたいと言っているのに。
「大丈夫です。そこは空気読みます。KYだけどそこは読める!」
と自信たっぷりに言って、奥に引っ込んだかと思いきや。
引き戸の向こうには、張り付いた聞き耳!

「踏切番」は本筋は切ないのに、このお笑いキャラクターゆえに、明るい笑いばかりを思い出す。
最近本で知ったことだけど、佐賀にわかの筑紫美主子さんも演じられていた名物キャラクターらしい。


たつみ演劇BOX「掏摸(すり)の家」
2013.8.14 夜の部@篠原演芸場


写真・小泉たつみ座長(当日舞踊ショーより)


「竹さん、食べたことのないもの食べに行こう。あれだ、“ハヤシライス”!」
たつみ演劇BOXの「掏摸(すり)の家」のすごいところは、明治の東京の浮かれ気分がいきいきと表されていることだと思う。
それは、工夫された演出のたまもの。
たとえば、お芝居の幕が開く前に、ポポーッ、シューッと汽車の音がスピーカーから聞こえてきたり。
スリの庄吉(小泉たつみ座長)が得意げに身につけるのは、金縁眼鏡にハットにコートだったり。
やたらとキラキラ輝く指差しが、華やかなたつみさんにまたよく似合うのだ(笑)

後半、庄吉は盗んだ大金が、善良な一家のなけなしのお金だったと知る。
「あの、あの百二十円はなぁ、あれは盗んじゃいけない金だったんだ!」
真っ青になって、半泣きになりながら、女房(辰巳小龍さん)と金策に走る。
スリの家は、おかしくて、かなしい景色に変わる。


たつみ演劇BOX「稲荷札」
2013.8.18 昼の部@篠原演芸場


写真・辰巳満月さん(当日舞踊ショーより)


「掏摸(すり)の家」と同様、小泉たつみ座長が紡ぐ、おかしさの中のかなしさ。
「ここまでお願いしたんや、そろそろ数字戻してくれたやろ……ってなんでや、なんで戻っとらんのや~」
守銭奴で有名な、山城屋の御寮はん。
当たったはずの富くじの数字が変わったと、頼みの綱のお稲荷様に泣きつく。
たつみさんの三枚目役は、座っているだけでおかしいのに、笑っているうちに涙線がふいに緩んでしまう。

「稲荷札」では、御寮はんの愛娘・お七(辰巳満月さん)も私の心をとらえて放さない。
大好きな“お嬢さん”キャラクターの中でも、2013年のベスト。
手代の清七(小泉ダイヤ座長)との駆け落ちに、持って来た荷物は、
「三月のお雛様!」
子どもの心を映し取ったような、能天気極まりない思考が可愛いのなんの。

しかし、このお芝居とっても古いっぽい。
1935年頃には曾我廼家五郎さんがやっていたという回想を読み、びっくり。
ドケチなお婆さんって、昔からみんなの共感を得られるキャラクターなんだろうなぁ。


劇団KAZUMA「モグラとラッキョ」
2013.10.14 夜の部@篠原演芸場


写真・香月友華さん(当日舞踊ショーより)


「あの馬鹿息子」「あのクソジジイ」
美影愛さんと柚姫将さんの、犬猿の仲の父子役がとにかく良い。
「男はまた別のも星の数ほどいるけど、子どもは一人しかいないでしょ?」
香月友華さんの、たくましいお母さん役が重ねて良い。

まず、嫌いあっている父子が、同族嫌悪なのでは?と思うくらい、思考がそっくりなのがおかしくってしょうがない。
美人座長(霞ゆうかさん)が、自分に一目惚れしたと聞けば。
父「昔はそんな話は降るほどあったが、ここ最近はめっきりだった…」
子「そろそろ俺にも嫁が必要だと思ってたところだ…」
と疑いもせずに浮かれるんだもの。

私の目に映った限り、美影さんと将さんのテンポはぴたり噛み合っていて。
大先輩がいらした2か月で、将さんの舞台の紡ぎ方にはさらに糸が足されたのかな、とかワクワクしながら思っています。

そして友さん演じる“おっかあ”の、旅人(藤美一馬座長)とのやりとりは白眉だった。
「旦那も子どももいなくなった今、両方の一家の財産があんたのものってことだぞ」
「そうよね!あたし、また新しい男つかまえて新しい人生送るわ!」
このときの、破顔一笑の眩しさといったら(笑)


以上5本が、私的喜劇ベスト。
喜劇の殿堂入りは、劇団KAZUMAの「文七元結」。
笑い、情、泣き、人の弱さ、強さ、うずくような人懐かしさ。
私が大衆演劇の中に探しているものの、全ての切れ端が「文七元結」の橋の風景から覗いているような気がする。
KAZUMA遠征で一緒の友人が、最も愛するお芝居でもある。
今年は2013.2.11 昼の部@くだまつ健康パーク2013.5.5@夢劇場で見た。

さて、書き残しておきたいのはお芝居ばかりじゃない。
次回は―個人舞踊編―です。

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