2013年 珠玉の一本―悲劇・真面目なお芝居編―

大衆演劇にハマって2年目の2013年。
木馬・篠原・遠征先の劇場で、通り過ぎていった、たくさんの夢の影。
中でも、いつまでも私の中で光り続けるであろう、個人的な“珠玉の一本”を。
今年の観劇録として、振り返ってみたいと思います。

まずは、このブログでも一番記事数の多い、悲劇・真面目なお芝居からのセレクション。
1月から順番に、見た順。

劇団花吹雪「道中夢枕」
2013.1.13昼の部@浅草木馬館


写真・桜春之丞座長(当日舞踊ショーより)


「またすごいものを観てしまった…」
今年の1-2月は、春之丞座長の舞台を見るたびに、そうつぶやくのが恒例だった。
華やかな容色と合わせて、あまりに鮮やかな手腕と変幻自在の声を持った、底知れない座長さんだった。

「道中夢枕」は、夢と現の狭間をさまよう物語だ。
夢の中は心の中。
誰にも触らせない秘密の中。
「触らねえでおくんなせえな!」
春之丞座長演じる主人公・勘太郎の心の奥深くに、もぐりこんで行くストーリー。
終演後、自分が本当に夢から覚めたみたいな、不思議な感覚があった。


剣戟はる駒座「河内十人斬り」
2013.3.9 夜の部@浅草木馬館


写真・勝小虎さん(当日デジカメを忘れたため3/24舞踊ショーより)


「俺はもう腹一杯や、お前が食え」
「茶碗一杯で何が腹いっぱいなもんか、お前が食え」
クライマックスで、一杯の白米を分け合って食べる熊太郎(勝小虎さん)と弥五郎(津川竜総座長)の情景は、決して忘れられないだろう。
妻に、義母に、村の者に裏切られ、恨みを果たした後は山に追われて。
人の心の醜さをこれでもかと心身に焼きつけられた義兄弟二人が、最後に分ける一杯の飯。
最後に味わう、人の温もり。

9月以降は、二つに分かれたはる駒座。
「河内十人斬り」は、小虎さんと竜総座長が揃う合同公演とかだと、また上演されるんだろうか。
はる駒座の総力を尽くした凄絶なこのお芝居に、いつか再会したい。


剣戟はる駒座「八幡祭 江戸の朱月」
2013.4.7夜の部@篠原演芸場


写真・津川鶫汀座長(当日舞踊ショーより)


記事を読んでくれた友人が、「絶対見たかった…!」と言っていた。
また、鶫汀さんファンの別の友人もこれは見逃したらしく、悔しがっていた。
なので、4月に「江戸の朱月」を見たことは私のひそかな自慢だったりする(笑)

「この美代吉姐さんはねぇ、宵越しの金は持たないんだよ」
蓮っ葉、冷淡、強欲、極まれり。
溶け落ちるように妖艶なファム・ファタール=美代吉(津川鶫汀座長)。
「あの女は、うそつきだ。江戸っ子は、みぃんな、うそつきだ」
越後出身の素朴さ、生真面目さ、故郷の母を思う様が哀れを誘う。
美代吉に心をなぶられた末に、狂気に陥る縮屋新助(津川竜総座長)。

3-4月に夢中になっていたはる駒歌舞伎は、つくづく多彩だったなぁ。


たつみ演劇BOX「明治一代女」
2013.7.27 夜の部@浅草木馬館


写真・辰巳小龍さん(当日舞踊ショーより)


小龍さんの演じる「明治一代女」のお梅は、悪名高い稀代の毒婦とは異なる。
まじめで、健気で、利発で、家族思いで、小さな体に気をいっぱいに張って、懸命に生きてきた女性だ。
そんなお梅が、悲運の底へ転落していくからこそ、目が離せない。
「津の国屋の晴れ姿を、一目見てから、牢獄に行きたい…」
小龍さんが、全身を震わせながら、引き裂くように叫ぶ。
「あたしそのために、人まで殺したのに!」

生身の女性としてのお梅が、見ているうちに愛おしくなってきたものだった。


劇団KAZUMA「男の人生」
2013.9.8 昼の部@浅草木馬館


写真・柚姫将さん(当日舞踊ショーより)


好きな役者さん×悪役の組み合わせは、私には至高です。
そんな柚姫将さんの悪役の中でも、今年のベストが「男の人生」!
篠原演芸場バージョンも良かったけど、木馬館で初めて出会った衝撃は忘れられない。

将さん演じる優しい気性の二代目親分に、腹心の鉄五郎(美影愛さん)が不信を吹き込む。
伊三郎(藤美一馬座長)が二代目の襲名を妬んでいますよ、と。
素直さゆえに、疑いに踊らされる。
弱さゆえに、恩を忘れる。
「いつ伊三が俺の寝首を掻きにくるかと思うと、おちおち寝られやしねえ…」
白木屋一家の二代目は、哀しい悪役。


劇団KAZUMA「兄弟仁義 男たちの祭り」
2013.10.21 夜の部@篠原演芸場


写真・美影愛さん(当日デジカメ不調のため10/6舞踊ショーより)


美影愛さんが立てられたという、まるでノワール映画のような。
白と黒の陰影の中、独特のしんとした緊張感が、絶えず張りつめている。
親しみたっぷりの劇団KAZUMAの皆さんは、このお芝居に限り別人のように見えると思う。

とりわけ私が撃たれたのは、柚姫将さん演じる政吉の名場面。
強者のおごりで虫けらのように刺され、死んでいくときに、思い返す。
故郷の大分を捨てて、兄貴分の辰二(冴刃竜也さん)についてきたこと。
血を吹きながら、なお清々しく、
「俺はついて来る人を間違えなかった!」
セリフ一つという単位で考えると、2013年涙をしぼったセリフNo.1である。


劇団KAZUMA「戻り橋」
2013.10.27 昼の部@篠原演芸場


写真・龍美佑馬さん(当日舞踊ショーより)


龍美佑馬さんの老け役がいかに深い情を紡ぐのか、思い知らされた。

戻り橋のたもとの、小さな甘酒屋。
佑馬さん演じる好々爺の主人には、拭いきれない過去がある。
かつて貧窮し、戻り橋のたもとに息子・文太郎を置き去りにしたことだ。
「とっつぁん、早く帰って来てな、紅葉みたいな手を一生懸命に振っていた――あの姿が、忘れられんのです」
橋はずっとそこにあって、主人を絶え間なく過去へ引き戻す。
佑馬さんが身をかがめて注ぐ甘酒一杯一杯は、“生きることの切なさ”を訴えるようだ。
中盤からラストまでは、私も友人もほぼ泣きっぱなしだった。


以上7つ、2013年の私的悲劇ベスト!

劇団KAZUMAの「生首仁義」は、思い入れがあんまり強いので、もう殿堂入りということで上記には書かず。
私はこのお芝居がきっかけで大衆演劇に目覚めて、これからもこのお芝居を追って行くんだろうなと思っている。
今年は2013.2.10 昼の部@くだまつ健康パークと、2013.9.20 昼の部@浅草木馬館で観ることができた。

次は――喜劇・人情劇編――に続きます。


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いつもありがとうございます!
私は悲劇好きなので、あれも良いこれも良かったと、なかなか選びきれなかったです。
また読んでやってくださいませ♪

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