劇団暁お芝居「母ちゃんて呼んでみたい」

2013.12.15 昼の部@篠原演芸場

飛竜貴さんのお芝居は、良いなぁ。
まだ数本しか見ていないので、わずかな印象で語るしかないけれど。
真摯なのだ。
真剣なのだ。
「十年経てば、人の心も、世の中も、変わるもんだなぁ…」
飛竜さんが舞台に出てきただけで、物語がピンと糸を通されたように脈打つ。

写真・飛竜貴さん(当日個人舞踊「惚れた女が死んだ夜は」より)

個人舞踊の時も、歌詞の物語の奥へ奥へと、入り込んで行くようだ。

お芝居「母ちゃんて呼んでみたい」は、「子役がいいよ!」と評判を聞いていた。
なので入場のときにお外題を見て、おおラッキー!と喜んだ。

お話の主軸は、商家の山城屋に渦巻く継子いじめ。
「なんだい、この米は…?買い直しておいで、買い直して来るまで家には入れないからね」
継母・お浜(三咲さつきさん)は、血の繋がらない娘・お美代(三咲愛羅さん)をこき使っている。
お美代の態度が気に入らなければ、髪の毛をつかんで引きずり回す。
生々しいいじめの場面は、『レ・ミゼラブル』のコゼットとティナルディエ夫人の面影を想起させる。

そして飛竜さんは、山城屋の主人であり、お浜の夫の役。
が、この主人はティナルディエのように、妻と一緒になってかわいそうな娘をいじめるわけにはいかない。
立場はもっと複雑だ。
主人は、お美代の実の父親なのだ。

「お美代、その傷はどうしたんだ!」
だからお美代が顔にひどい火傷を負わされたときには、瞬時に気づいて娘の肩を抱く。
そして、非道をはたらいたお浜に、険しさ極まる眼差しを向ける。

「毎日毎日、山城屋からは子どもの泣き声が聞こえて来ると言われる」
「躾けるのもいい、だがお前のお美代に対する仕打ちはあんまりだ!」
怒りをこめて妻をなじる。
飛竜さんのこわばった表情に、父としての愛情が滲んていた。

だが、お美代を庇えば庇うほど、お浜のいじめはひどくなるのだ。
それがわかっているので、強く出ることもできず。
「頼むから、お美代にもう少し、優しくしてやってくれ…」
結局主人は、無力にそう呟くしかない。

そもそも、なぜこんな事態になったか?
かつては、前妻であり、お美代の実母・お島(三咲夏樹さん)がいた。
だがお島は、罪を被って10年の島流しの刑になった。
残されたのは、主人と幼いお美代二人きり。

飛竜さんが、噛みしめるように過去を述懐する場面がある。
「私は死に物狂いで頑張った、それでも店は傾くばかりだった。なにしろ、この山城屋から縄付きが出たんだ」
そんな折、聞かされた。
お島は流刑先の島で死んだと。
「私は第二の妻を迎えた…」

だが、お浜の人格は最初から疑わしかった。
熱が下がらなくなったお美代に、お浜がどこかから手に入れた薬を飲ませた。
夜が明けると、お美代は口がきけなくなっていた。
「あの薬は一体なんだったんだ――あの薬は一体なんだったんだ!」
飛竜さんが、このセリフを二度繰り返すのが好きだ。
一度目は、ただお浜を糾弾する口調で。
二度目は、恐ろしい悪夢を否定したいという願い混じりで。

主人の10年は、悔恨と諦めの10年。
他にやりようがなく、生きるために良心を押し殺しながら、自らの弱さを見つめさせられ続けた歳月。

刑を終えて戻って来たお島に、主人は遠くを見て呟く。
「10年経てば、人の心も、世の中も変わるものだなぁ…」
彼が諦めたもの、手放さざるを得なかったものの大きさが迫って来る、秀逸なセリフだったと思う。

飛竜さん、あの上手さは一体何者なんだろう。
お芝居でも舞踊でも決して自己主張は強くない、送り出しでもサラッとした丁寧な応対。
それだけに、尚更気になる。

それから、この日の同行者は、大衆演劇初体験の同僚だった。
彼女が何度も言っていたのが、
「子役がめっちゃ可愛い!」
というわけで、このお芝居はやっぱり子役の愛羅さんありきだと思う。
あの可愛さ、哀れさ、尋常じゃない。

写真・三咲愛羅さん(当日舞踊ショーより)


序幕、重いお米を背負って花道から登場する愛羅さんは、もう完全にコゼットの風情。
くるりと客席を振り返った時、その虚ろな表情に驚いた。
悲しい顔や悔しい顔より、空洞のような瞳に、苛まれている子どもの心がリアルに映し出される。

暁さんのところの子役達は、芸達者で可愛いだけじゃなく、愛情をたっぷり注がれて育っている感じがする。
彼らが(全部で7人かな?)舞踊ショーでわらわらと出て来ると、篠原演芸場の空気はなんともぬくい。
お花をもらい忘れて引っ込んでしまう子が、「ちょっと、こっちも、こっちも!もらっていきな!」と声をかけられる光景も何度か目にした。


飛竜さんのお芝居を見に、忙しない師走だけどなんとしても篠原行きの時間を作りたい…。

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