劇団暁お芝居「芸者の意気地」

2013.12.1 夜の部@篠原演芸場

篠原初乗りという「劇団暁」さんに、早速初日の夜に会いに行ってみた!
初乗りなので、周囲の観劇仲間からもあんまり情報がなくって。
でも、一度関東のセンターで親切にしてくださった方が、
「暁さんの雰囲気いいよー温かくってねー…」
と言っていたのを信じて。

早めに篠原に着いてびっくり。
役者さんたちが丁寧にお出迎えしていた。
「よかったら、これどうぞ」
と若手さんが配ってくれた栄養ドリンク。
もの柔らかな態度に、心がほどけて嬉しくなった。

さあ、ささ、お芝居。
初めての劇団さん、初めてのテイスト、お外題は「芸者の意気地」。

侍の一馬(三咲大樹さん)と芸者の菊次(三咲夏樹座長)は、二世を誓った恋人同士。
けれど女将(三咲さつきさん)は、一馬を菊次と別れさせようと目論む。
可愛い娘(劇団朱雀ゲスト・小雪玲奈さん)が、「一馬様と一緒になりたいの」とせがむためだ。
そこで女将は、菊次のライバル芸者・仇吉(三咲春樹座長)を手の内に引き入れる。

元々菊次が気に入らなかった仇吉は、ここぞとばかりに菊次を苛め抜く。
「菊ちゃん、あんた最近人気があって調子に乗ってるようだけど…この新橋の仇吉姐さんとじゃ格が違うねえ」
「このべっこうの簪、一体いくらかわかる?あんたの頭には、決して三百両以上の櫛なんて乗ることはないでしょうね」
嫌みたっぷりに、満座の中で菊次に冷や水を浴びせかける。

でも菊次もおとなしく黙ってはいない。
気品のある面差しで、凛と敵意を跳ね返す。
「仇吉姐さん、あんた小便垂れ芸者って呼ばれてるじゃありませんか」
「客の前で踊ろうにも、ろくに踊れないもんだから、『あたしちょっと御不浄に』。三味線弾こうにも、ろくに弾けないもんだから、すぐに『あたしちょっと御不浄に』。だから小便垂れ芸者って世間では言うんですよ」
うひゃあ。きっつい。

この仇吉と菊次の火花散る女の戦いが、このお芝居の眼目だ。
でも、ドロドロした陰鬱な後味はまったくなかった。
というのは、三咲春樹さんが、お芝居をいい具合に崩していたから。

写真・三咲春樹座長(当日ミニショー「竹とんぼ」より)

まだ春樹さんの舞踊を数本しか見ていないけど、見るほど遠くへ霞んでいくような表情が、とても印象に残る。

夏樹さんの様式美の光る菊次役に対して。
春樹さんの仇吉役は、悪役ながら茶目っ気を含む。
ちょっと眠そうに見える、とぼけた目元のお化粧とか。
簪を自慢した後の場面では、頭にごてごてと大量の簪とお花を挿して、しれっと登場したりとか。

花道の上で菊次を睨みつけ、
「もしあんたの頭に三百両以上の簪が乗ることがあったら―そのときは、あたしはこの芸者稼業を辞めまさぁね」
と、目線飛ばして決めた後に。
突如素の喋りに戻って、
「なんで俺が篠原の初日で、こんなんやらなきゃいけねえんだよ!」
と叫び出したときはびっくりした、そして笑った。

心地よく巧みにお芝居を崩していたのが、春樹さんだとすると、
夏樹座長や他の役者さん方は、お芝居をきっちり紡ぐ側。
中でも私の琴線に触れたのは、飛竜貴さんという方だった。

写真・飛竜貴さん(当日舞踊ショー「さすらい」より)


飛竜さんが演じていたのは、菊次を助ける商人・幸吉の役。
幸吉は三年前、大事な掛取りのお金を失くして自殺しようとしていた。
通りかかった菊次に気風よくお金を恵んでもらい、命を助けられた。

「ご恩は決して、忘れることはありません…!」
幸吉の食い入るように開かれた目、芯の通った声。
祈るように、空に手を合わせる姿の真摯さ。
この場面には、劇中最も惹きつけられたかもしれない。

以来、菊次が仇吉にいじめられるたびに、幸吉が助けに現れる。
「どうぞ、この簪を受け取ってやってください」
神様にでも仕えるかのように、恩ある芸者に心尽くしの品やお金を差し出す。
幸吉が登場するたび、恩返しのために身を砕く、心の濁りのなさが舞台を清めるようだった。

そして、暁さんを初めて観て、最も強く思ったこと。
みんな、お顔が優しい!
中には血縁じゃない方もいらっしゃると聞くのに、なぜか皆さん共通して、お顔にはんなりした優しさが漂っている。
そんな劇団暁の舞台には、私が大衆演劇に探している深情けと故郷恋しの思いが、重なる部分も多くて。

「やっぱり大衆演劇は、人情と郷愁だよね…!」
「ただ華やかなカッコいい舞台もいいけど、また来たくなるって言ったら温かい舞台だよね…」
同行した友人と、隣席でにんまり確認しあった。

うん、やっぱり大衆演劇は、人情と郷愁!

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