桐龍座恋川劇団お芝居「お家はんと坊っち」

2013.11.24 夜の部@篠原演芸場

「芝居はね、あのお父さんが出てないと、あたし物足りないのよ」
私もです!
10月、出張帰りの温泉センターで出会った方と、大衆演劇談義をする機会があった。
桐龍座恋川劇団に話が及んだ時、最も意気投合したポイント。
恋川さんちのお父さん、初代・恋川純さんのことだ。

写真 初代・恋川純さん(当日舞踊ショーより)


昨年恋川劇団を初めて見たときから、私はこの初代さんが最も贔屓だったりする。
醸し出す雰囲気からユーモラス。
特に面白いことを言ったりやったりするわけではないのに、なんか可笑しくて笑ってしまう。
たとえば、名舞台だった11/25(金)の「一本刀土俵入り」では、舟大工の役を演じていた。
「なんだあ?」
仲間に呼ばれて、船のセットの上からひょこっと初代が顔を出しただけで、会場はワッと笑う。
あの、独特の可笑しさはなんだろう?
深い笑い皺を作りながら演技する初代さんを見ていると、わけもなく楽しくなってくるのだ。

11/24(日)の夜のお芝居「お家はんと坊っち」は、大門力也さんが立てられたそう。
初めてのお芝居だったと、終演後の二代目の口上で聞いて驚いた。
初代さん=お家はんと、二代目=坊っちの絡みは、もうすっかり練り上げられたように見えたのに。

お家はんは、商家・河内家のおばあちゃん。
旦那さんを亡くした後、店を自らの手で切り盛りしてきたゆえに、守銭奴で決まり事に厳しい。
「丁稚にいい着物を着せるなんてもったいない。世間のお人に遊んでると思われますがな」
いわゆる“意地悪ばあさん”の典型のひとつだ。

でも、初代さんが白髪の鬘を被って、大仰に目玉をくりくりさせながら演じると、憎めない温かみを放つ。
…ばかりか、可愛く見えてきたりもする。
「それが河内家のし・き・た・りというものです!」
床をバシンバシンと叩きながら、口癖を繰り返すお家はんに、会場は爆笑。

そのお家はんが溺愛するのが、孫の菊太郎(二代目・恋川純さん)だ。

写真 二代目・恋川純さん(当日舞踊ショーより)

お写真で見ると、改めて、二代目が目で語る感情の量の多いこと。

菊太郎は通称菊ぼん。
まっすぐな気風のいい青年で、河内家の実質的な主人でもある。

唯一お家はんに意見できるのも菊ぼん。
女房のお広(鈴川桃子さん)が出産のために実家に帰る際、お家はんは険しい表情でこう告げる。
「お広さん、後継ぎの男の子を産めないのなら、そのときは菊ぼんとは離縁や」
女房に草履を取ってあげようとした菊ぼんにも、非難がましく言う。
「なんであんたが草履取ってあげないかんの、裸足で帰らせえ」

だが菊ぼんはきっぱりと、
「おばあちゃん、今お広は離縁されて赤の他人になりました」
「赤の他人に草履すらお出ししなくては、それこそ河内家の恥なのではないですか!」
気持ちよく決める二代目に、二代目!と声がかかった。
二代目がこういう爽快なキャラクターを演じると、強い眼光がきりりと光ってますます清々しい。

しかし、お家はんが菊ぼんにのみメロメロなのが、つくづく可愛らしいと思う。
菊ぼんに「おばあちゃん、ちょっと話したいことがあるんや」と言われれば、
「なぁに、話ってなんや」
と喜色満面で可愛い孫を見つめる。

初代さんの浮かべる喜びの表情は、ちょっとすごい。
全ての表情筋で、全ての皮膚で笑んでいる。
ニコニコ、なんて擬態語では足りない。
にっこぉ、と場の空気を喜色に塗り替える。
思わずこちらの笑いもぐいぐいと引きずり出されてしまうような、引力の強さ。

30~40年前の大衆演劇関連の本を読んでいると、「恋川純」の名前にちょくちょく出くわす。
若い頃からお芝居の上手い人気役者だったそうだ。
今、二代目はもちろん、勢いに乗っている恋川劇団の若手さんたちを見て、どんな感慨があるのだろう。

「それが河内家のし・き・た・りなんや!」
丁稚役の恋川風馬さんとイキイキと絡む初代さんは、好々爺の面差しそのものだった。
その深い深い笑顔を見つめながら、私もにんまり。

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