劇団KAZUMAお芝居「森の石松~鬼より恐い~」

2013.10.26 昼の部 @篠原演芸場

KAZUMAの皆さまがとっくに新開地に行かれた後だというのに。
私はまだ先月の思い出をちまちまと更新しております…。
だって書き残しておきたいのだもの。
あと数本でようやく千秋楽まで辿りつく予定ですので、読んでくださってる方は気長に、気長にお待ちくださいませ。

「森の石松~鬼より恐い~」は、現代の大衆演劇の座長さん(藤美一馬座長)が、タイムスリップして森の石松になってしまうという、一風変わったお芝居だった。

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)


目新しくて面白いのは、幕が開いてすぐの、現代の風景だ。
大衆演劇の一座が、森の石松の芝居の稽古の真っ最中。
…と思いきや、舞台のセットに「閻魔堂」ってでっかく書いてある(笑)
「ちょっと、この閻魔堂おかしいでしょ!なんでこんなのしかないんですか!」
と座長に文句をつけられて、
「いや、これしかないんですよ」
と淡々と答える、頭にタオルを巻いた棟梁(冴刃竜也さん)。

かと思えばスーツ姿の支配人(柚姫将さん)が出てきて、座長を叱ったりする。
「うちをどこだと思ってるんですか、篠原演芸場ですよ!ちゃんとした閻魔堂がないわけないでしょ」
「もしなければ、篠原会長の息子さんたちが徹夜で作ってくれるんですから!」
このセリフには、会場からおお…という声と拍手が沸いた!
本当なんだろうか。
だとすれば、木馬館・篠原演芸場で公演される役者さん方が、そろって口上で劇場のセットの充実ぶりを褒めるのも頷ける。
「どんなセットでも作ってくれる」「こんなのやりたいって言ったらホントに準備してくれる」と、皆さんおっしゃるものなぁ。

他にも電気屋さん(藤美真の助さん)とか、掃除スタッフ(香月友華さん)とかが動き回って。
舞台の上は、すっかり普段の時代劇の装いを削ぎ落として、あっけらかんと日常の顔っぽく見える。
もちろんお芝居なんだけど、劇団の現実の生活が、親しみやすいスパイスになる。

稽古は結局進まず、座長はため息ついて、今夜の稽古終了を告げる。
「どんな石松がお客さんに受けるか、俺はちょっと寝ながら考えるわ」
と言って、鬘のまま石松の衣装のまま、舞台の上で寝入る一馬座長。
実際に座長として苦労されている一馬座長が演じるから、リアルに”お疲れ様”って声をかけたくなってしまう…

そして目が覚めれば、座長の片目は開かず、森の石松になってしまっていた。
場所は篠原演芸場から清水港へ移り、ここから時代劇編。

最初は当然石松になりきれず、頓珍漢なことばかりしていた現代人の座長。
でも、時を経るにつれて、その心は本当の石松の心情に限りなく近づいていく。

キーとなるのは、石松の恋人・おふみちゃん(霞ゆうかさん)だ。
おふみちゃんについて記憶のない座長は、
「俺と、あのおふみちゃんっていうのは、どういう関係なんだっけ?」
と聞いて、慌ての六助(龍美佑馬さん)をぎょっとさせたりしていたのに。
金毘羅代参の道中、積み重ねたとりとめのない会話、芽生えた情愛。
終盤の斬り合いの中、
「おふみちゃん――!」
と、血まみれになりながら繰り返し呼ぶ座長の姿は、本物の石松になっていた。

最初は困惑しきっていた現代からの異邦人が、人々と心を通わせるにつれ、その時代の人間になっていく。
タイムスリップもののセオリーだけど、大衆演劇のお芝居でこれが観られるのが面白い。

あと、将さんが石松の命を狙う都鳥吉兵衛を演じていたのも、個人的にはとても大きな見どころ。
この都鳥は、清々しいくらい真っ黒。
石松を討つ時、多勢で一人を囲んで余裕の笑みだったのに、石松=座長の執念の強さを前に、段々表情に怯えが現れてくる卑怯さがすごく良かった(笑)。
将さんの悪役の微細な陰影にはいつも感嘆するけど、時にはこんなシンプルな悪もいいな。

「森の石松~鬼より恐い~」は、中村錦之助さんの映画から着想を得て作られたものだそう。

しかし、最初の稽古風景で、座長が「若いの入れてもすぐにやめるし…」と現実めいたぼやきを零したとき。
座員役をしていた佑馬さんが、
「おっさんばっかりになっちゃいましたねっ!」
と答えたときの朗らかな声と笑顔か、やたらツボにハマって抜けない。

確かに、十代・二十代の役者さんが豊富な劇団さんと比べれば、平均年齢は高めなのかもしれないけど。
大人な劇団KAZUMAが私は大好きなんですよ!
と声を大にして言いたかったからかもしれない。

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