劇団KAZUMAお芝居「藤沢涙雨」

2013.10.23 夜の部@篠原演芸場

劇団KAZUMAでは初めてやると伺っていた、「藤沢涙雨」。
新しいお芝居って、新品のきれいな箱みたい。
木目から木の香りまでしそうな、出来たての贈り物を届けてもらった気分です。
これから繰り返し上演することで、中身が積み込まれていき、箱にはじっとりと手垢が付いていくのだろう。
そんな楽しみを発見した。

この2日前に観た「兄弟仁義 男の祭り」に続き、美影愛さんが立てられたお芝居とのこと。
一馬座長と将さんが、メンバー紹介の後に「ああ緊張する…」と口々に言っていたのが印象的だったなぁ。

お芝居の筋は、美影さんらしい骨の太いお話。
富三(藤美一馬座長)と初五郎(柚姫将さん)の兄弟分は、親分の仇である青山主膳(林愛次郎さん)の屋敷に夜討ちをかけ、見事に青山を討ち果たす。
だが、喜びも束の間。
初五郎が突然豹変し、兄貴分である富三を刺す。
「心に地獄の鬼が、棲みついた!」
そう言い残して、初五郎は逃げていく。

瀕死の富三は、朦朧とする意識の中で考える。
なぜ初五郎は裏切ったのか?
地獄の鬼とは、何の魔なのか?

この謎を焦点に話が進んで行くので、ちょっとミステリー仕立ての香りもする。
初五郎が一体何を考えていたのか、後半で明かされるまで、気になりながら観ていた。

中心となる一馬座長と将さんの演技は、完全に個人的な印象だけど、ひとことで言うとフレッシュ!
新しいお芝居ということは、新しいキャラクター。
初めてその人物を、初めてその感情を、今目の前で”創ってる”というみずみずしさがあった。

たとえば一馬座長演じる富三のセリフで好きなのが、以下。
初五郎に刺されて重傷を負いながら、青山の追手から逃げたときの語りだ。
「刺された腹を抱えて、流れ出る赤い血を押さえて、川に繋いであった小舟に乗り込んだ」
「船ごと川を流れていたら、月が夜空に浮かんでいた」
「あの日の月は、赤かった…」

聞きながら、まるで赤い月を船の底から見上げているような気分になって。
一馬座長が今、心の思うままに喋っているのが伝わってくる。
このセリフも上演するごとに、また違った深みが加わっていくのだろう。

そんなフレッシュなお芝居の中でも、既に「たっぷり練った」重厚感を出していた方がお2人。
一人は、お芝居を立てられたご本人の美影さん。
美影さんは、重吉という老いた十手持ちの役で登場する。

そしていま一人は、藤美真の助さん演じる「俊徳尼」だ。
三枚目の尼さんっていう、面白い役どころ!

藤美真の助さん(当日舞踊ショーより)


そのうち真の助さんにしか演じられない名物キャラクターの一つになるんじゃないかなぁ。
まず、真の助さんの尼さん姿っていうだけで、じわじわユーモラスで可愛い。
赤いほっぺを丸く描いて、尼僧の帽子(もうす)から丸く顔を出して、そもそも全体のフォルムがまあるい。

名高い尼さんなので「庵主様」と周囲から立てられている。
けど当人は、
「私も女ですもの…女に生まれてきた以上、尼姿でなかったら、素敵な殿方と恋の一つや二つ、してみたかったわ!」
と不満気味。
そんな俊徳尼を、
「庵主様、どうかそんなことはおっしゃらずに。庵主様は御仏に仕える尊い御身なのですから」
とたしなめる、石屋の金吉(龍美佑馬さん)との凸凹コンビもいい。

俊徳尼と金吉は、話の本筋には全く関わりない。
登場するのは、寺への寄進のお礼に、大店の主人に出世していた初五郎の家を訪れる場面のみ。

けど、全幕で一番明るいこの場面は、お芝居に軽みを与えてくれる。
俊徳尼が出されたおせんべいに夢中になって、次々ぱくついたり。
初五郎を見るや、「良い男!」と目を輝かせたり。
女房のお小夜(霞ゆうかさん)に嫉妬して、「あんな良い男と暮らして…こんな美味しいおせんべいを食べて…なんてあなたは恵まれてるのかしら…」と哀しくぼやいてみたり。
なんか、初めて演じるとは思えないくらいの、真の助さんの”出来上がってる”感!

俊徳尼と金吉が初五郎の家を出たとき、すれ違うのが、美影さん演じる十手持ちの重吉だ。
重々しい空気を背負った重吉は、入れ替わりに初五郎の家に入って行く。
俊徳尼と金吉は多少脅えながらも、重吉の行く先をぽやんと見やる。
この両極端な雰囲気のすれ違いが、コメディからシリアスへの転調を印象づける。

「藤沢涙雨」は、一馬座長の富三も、将さんの初五郎も、ゆうかさんのお小夜も、それぞれに見せ場が用意されていた。
次に観るときは、誰に感情を重ねて観ることができるだろう?

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