劇団KAZUMAお芝居「兄弟仁義 男たちの祭り」

2013.10.21 夜の部@篠原演芸場

“美影ワールドへようこそ!”
そう言わんばかりの、叫ばんばかりの。
役者さん一人一人の陰影が踊る、粋なセリフの粒が光る。
篠原演芸場の舞台は、普段より奥行きがしんと深い。
観慣れた劇団KAZUMAの役者さんたちが、なんだか別人のように見えた。

これが、美影愛さんの立てられたお芝居なんだ!

美影愛さん(10/16舞踊ショーより)
当日はデジカメの調子が良くなかったので、代わりに別の日のお写真を…


10/21(月)は、美影さんが立てて稽古されているお芝居をやると伺い、その日は朝から期待でいっぱい。
「兄弟仁義 男たちの祭り」の幕が開くと、そこにあったのは一つのノワール。
白と黒の陰影の中に描かれるのは、やくざの田野倉一家と大島一家の争いだ。
この夜独特の空気感を創り出していたのは、何より珠玉のセリフたちだと思う。

特に、私の心にぽとんと落ちていった、大粒のセリフが3つ。
今回はその3つを振り返りながら、あの日のぴりっと緊張した舞台に、そっとにじり寄っていきたい。

1つ目「俺はあいつを、たとえそよ風からだって、守ってやりてえんですよ」
――田野倉一家の若衆・直次郎(藤美一馬座長)


お芝居の冒頭で、田野倉一家の親分(藤美真の助さん)は、暗殺者・ねんねこのおしん(香月友華さん)に殺されてしまう。
親分は、息絶える直前に言い残す。
「どうせ、雇ったのは大島の野郎だろう…」

大島の親分(美影愛さん)は、田野倉一家とは同じ土地で敵対関係にある。
だが、十中八九大島が親分の仇だろうとわかっていても、仁義は通さなくてはならない。

直次郎は、二代目を継いだ辰二(冴刃竜也さん)に付き添い、大島一家へ襲名の挨拶に行く。
「これは、ご丁寧な挨拶をありがとうございます」
美影さん演じる大島は、柔和な口調で辰二と直次郎を迎える。
でも、その微笑みの裏に、何か黒いものがありそうな。

直次郎のほうも、古くから大島を知っているにも関わらず、警戒を解かずに語る。
「俺は病を治すため、山の中へ行こうと思っております。近いうち、江戸を発つ予定です」
「直さん、あんたほどの男がいなくなるのかい、寂しいねえ」
身内を殺された側と殺した側で交わされる会話は、表面的には穏やかでも、ひりつくような影をまとっている。

辰二は先に帰り、直次郎と大島二人きりの別れ際。
見送る大島は、「二代目を守ってやんなよ」と声をかける。
直次郎は強気に笑んで振り返り、告げるのが例のセリフだ。
「俺はあいつ(辰二)を、たとえそよ風からだって、守ってやりてえんですよ」

直次郎は、まだ青く若い辰二の父親的ポジション。
一馬座長の仕草、声音一つ一つに、深い情愛が感じられる。
加えて、ここには大島への威嚇も含まれているように思う。
俺の大事な二代目に、田野倉一家に手を出すな、という直次郎の心意気が、粋なセリフに絡まっている。

2つ目「俺はついてくる人を間違えなかった!」
――田野倉一家の若衆・政吉(柚姫将さん)


セリフ一つという単位で考えると。
9月・10月観まくったKAZUMAのお芝居で、一番涙を振り絞ったのはこのセリフだった…。

政吉は、大分の片田舎の出身。
辰二に喧嘩で負けたのをきっかけに、その人格に惚れこみ、故郷を捨ててついてきた。
以来10年、辰二を兄貴分と慕っている。
「最近は滅多に分けてもらえなかった酒、ようやく少しだけ手に入れた。兄貴も直さんも、さぞ喜ぶだろうなぁ。早く飲ましてやりてえ」
評判の店の美酒を、大事そうに抱えて家路を急ぐ姿に、喜色が滲み出ていて。
純朴な心は、まっすぐに兄貴思い。

反面、単純で喧嘩っ早いのが政吉の難点だ。
田野倉の親分は、死んでいく直前も、政吉が揉め事を起こすことを危惧していた。
ただでさえ弱体化する田野倉一家を、窮地に立たせかねないからだ。
だから、苦しい息の下、親分は政吉と約束する。
「政吉、絶対に喧嘩はしちゃあならねえぞ…何をされても、じっと我慢するんだ」

この約束が、政吉を縛る。
酒を抱えて帰る途中、大島の片腕・秀(龍美佑馬さん)に喧嘩を売られても。
「その酒、少し寄こせよ。田野倉なんてみすぼらしい一家の野郎が、この秀様に逆らっていいと思ってんのか」
罵られても、足蹴にされても。
殺気を目に滾らせて、腕の中の酒を守り通して、ひたすら政吉は耐える。
遂に刃物まで取り出されて、気まぐれのように斬りつけられても、刺されても。

瀕死になって家に辿り着いて、辰二の腕の中、晴れがましい笑顔で言うのだ。
「俺は、喧嘩なんてしちゃいませんぜ。親分との約束だ、手出し一つしちゃいません」
親分のため、兄貴と信じた辰二のため。
今、死んでいこうとしているのに。
辰二のために故郷を遠く離れ、知らない土地で、強者のおごりで虫けらのように殺されていくのに。
血を吹きながら、将さんが紡ぐ政吉の死に様は、なんと清々しいことか。
渾身の喜びを込めて、
「俺は、ついてくる人を間違えなかった!」

最期に握りしめたものは、自分の道を貫ききった喜び。
政吉の死の場面には、大げさな言い方だけど、人間の一つの勝利が照らし出されていたと思うのだ。

3つ目「もし、あのときあんたについて行ってれば…こんな日は来なかったか」
「来なかったね」
――直次郎(藤美一馬座長)と大島の親分(美影愛さん)の会話


終盤、遂に直次郎と辰二は、大島一家と正面対決をする。
そこで大島が、幼い直次郎に初めて出会ったときのことを語る。
「きっ!とこっちを睨み上げて、こいつはなんてえガキだと思った」
「なんとしても、俺と一緒に来させるつもりだったが…」
淡々とした語り声が、舞台の中でひとつ浮きあがり、遠い記憶をなぞっていく。

そして美影さんの表情は、懐かしむような微笑み。
手には刀を握って、幼い頃から知っている男と、斬り合う直前だというのに。
――大島という人は、心から相手を慈しみながら、殺すことができるのだ。
――この人にとって、情愛と仁義は、同じところにあるのだ。
大島の心の有り様がくっきりと浮かび上がる。

「もし、あのときあんたについて行ってれば…こんな日は来なかったか」
問う直次郎に、大島は一呼吸置いて、
「来なかったね」
短い応答には、色んなものが詰まっている。
直次郎が、立派な男に成長したことに対する喜びもある。
その直次郎と殺し合いをすることに対しての、皮肉めいた色もある。
何もかもを粛々と運命だと受け止めて、大島は直次郎に刃を向ける。

ああ、やっぱり私の中では、このお芝居はノワール。
悲哀も、喜びも、白と黒の影の中に折り畳まれて、舞台の上で揺らめく。
美影愛さん、美しい影という名前を持つ役者さんが創られたというのも、ぴったりな気がする。

そして馴染んだ劇団KAZUMAのお芝居を、新たな目で観るきっかけにもなった。
一馬座長も、将さんも、竜也さんも、真の助さんも、ゆうかさんも、佑馬さんも、友華さんも…(涼さんと愛次郎さんは不在だった)
皆さん、こんなに変わるんだ。
まだ皆さん、こんなに違う顔を持っているんだ。
こんな彼らが観られるのなら、私は劇団KAZUMAのお芝居をずっと追っていられるだろう。

「兄弟仁義 男たちの祭り」は、6月に梅田呉服座でもかけたそう。
次にこのお芝居に出会うとき、影はどんな形に変わっているのだろうか。

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