リトルガールに花一輪―劇団KAZUMA・林愛次郎さん―

林愛次郎さんには花が似合う。
鬘に一輪の花を挿した愛さんが、群舞の中心で踊る「東京カルメン」が好きだ。

写真・2013/10/7ミニショー「東京カルメン」より


愛さんの舞踊は女形が基本。
というか、お芝居・群舞で立ち役の時以外は、常に女形だと思う。
私はガッツリ観始めた最初の劇団が劇団KAZUMAなので、それを普通のことだと思っていたけど。
他の劇団を観るようになってから、常時女形スタイルっていうのは、ちょっと特殊かもと気づいた。

そのためか、愛さんの舞踊の所作はなんとも和らげで優しい。
愛さんの個人舞踊が終わると、周囲から「色っぽいわねぇ」と評する声が聞こえる。
同意する一方で。
私は、愛さんの舞踊を見つめていると、そこにはむしろ少女の面影が照らし出されているようにも思えるのだ。
大人の女性の喜び哀しみをしなやかに表現する、そのさらに奥深くから、子どもの無垢な心がポロンと転がってくる。

たとえば、最近感動した「氷雪の海」。

――行かないで 行かないで――
あなたのほかには 誰も愛せない――


愛さんの表情は、涙を堪えている純な女の子のそれだ。
行かないで、と懸命に訴えかける目は、あんまり健気で胸が詰まるくらい。
少女が初恋の少年に思い焦がれるような、何の飾りもない、嘘もない、一途な心が涙の中に浮かび上がる。

この少女性は、一体どうやって醸し出されるのか。
けっこう体格だってしっかりしていると思うんだけど。
いざ舞踊が始まると舞台にあるのは、いわゆる女形のあだっぽい色気ではなく、秘めやかな純真だ。

舞踊の写真を撮るファンの方に、よくピースしてあげている。
私のフォルダにもピース写真がちらほら。
そこにも、良い意味で子どもの心に近い、無垢な優しさがあるように見えて。
おそらくこれが、芸に滲む愛さんの人柄なのかな。

大衆演劇「公式」総合情報サイトの劇団KAZUMAのページに、劇団員プロフィールが載っている(相当古いページっぽいので今は変わっている部分も多いと思うけど)。
愛さんの趣味の欄に「フィギュア・人形集め」とあるのを読んだとき、とても納得した。
元々は美容師さんだったらしいので、可愛いもの・綺麗なものがお好きなのだろうか。
お人形のように可愛いものを愛する心は、きっと芸にも表れている。

個人的に、少女特有の美しさが結晶するのは、たわいもないもの、可愛くて無力なものに一心の愛情を注ぐところだと思う。
花や小物といった、世の中で最も役に立たない淡い存在たちを、宝のように慈しむ心の有り様。

だから愛さんが花や簪を付けて踊っていると、私はそれだけで胸を打たれたりする。
この役者さんには、可愛くて小さいものが、なんてよく似合うのだろう。

――わたしのすべてを 涙といっしょに――
この海に流したら 生まれかわれますか――


切なげな舞踊の中、髪から覗く小さな花が、簪が、清らかに光る。
そこには童心が灯っている。

最近ご体調の関係で、公演を休まれることが多い。
篠原演芸場の座布団に腰を下ろしている間も、やっぱり感じる一抹の寂しさ。
劇団KAZUMAに不可欠の、あの笑顔を、舞踊をいつだって待っている。

友人が、かつて「愛さんにどうしてもこれを差し上げたい」と贈っていたのは、一輪のプリザーブドフラワーだった。
林愛次郎さん。
名前の通り、愛しリトルガールに、花一輪。

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