劇団KAZUMAお芝居「花かんざし」

2013.10.5 @篠原演芸場

愛しげに、目の見えない娘の面倒をみる男が一人。
チャップリンの名画「街の灯」を彷彿させるストーリーだ。

「花かんざし」は、博打打ちの源さん(藤美一馬座長)が、盲目のお八重ちゃん(霞ゆうかさん)を助ける話。
「街の灯」は、浮浪者のチャップリンが盲目の花売り娘を助ける話。
話の骨子が近いし、ヒロインに花というモチーフが見え隠れしている点も似ている。

何より、一馬座長が演じる溶け入るような愛情深さは、かの喜劇王の慈愛に満ちたまなざしを思わせるのだ。

写真・藤美一馬座長(当日舞踊ショーより)
下のお写真含め、座長さんが客席に注ぐ目はあんまり優しくて、驚くことがある。


「花かんざし」は今年2月にくだまつ健康パークで観て以来だった(そのときの鑑賞録)。
そのときからずっと、引っかかっていたことがある。

なぜ源さんは、弟分の裏切りの象徴とも言える花かんざしを、自分の頭に挿すんだろう?

源さんは行きずりに助けたお八重ちゃんを、大事にそばに置いていた。
「お兄様の顔を、一度だけ触らせてください」
そう頼まれて、顔に大アザのある源さんは大いにうろたえる。
そこへ現れたのが、弟分の信太郎(柚姫将さん)だ。

柚姫将さん(当日舞踊ショーより)


源さんに身代わりを頼まれた信太郎は、お八重ちゃんに惚れてしまう。
信太郎が源さんの留守をねらってやって来て、お八重ちゃんに贈ったのが可憐な花かんざし。
そこへ源さんが帰って来て、空気は一気に修羅場。
源さんは哀切極まる目つきで花かんざしをつまみ上げ、

「お八重ちゃん、こんなものが欲しかったのかい…」
「欲しいなら欲しいと言ってくれりゃあ、何十本だって俺が買ってやったのに!」

いったんは怒りにまかせて、花かんざしを踏み潰そうとして――途中でやめる。
そして捨てるでもなく、信太郎に突っ返すでもなく、自分の頭にしゃらんと挿す。
なんで?
そんな憎たらしいはずのものを、なんでわざわざ身につけるんだろう?
今回、その疑問が晴れたような気がする。

前回観たときは、花かんざしは信太郎の裏切りのシンボルだと思ったのだ。
でも、違うかも。
源さんの中では、花かんざし=お八重ちゃんのシンボルなのかも。

そう思ったのは、最後の最後、源さんがまたお八重ちゃんに花かんざしを挿し直してやる場面だ。
一馬座長が、愛しい相手に対する手つきで、愛らしく揺れる花かんざしをそっと挿す。
その光景の中では、お八重ちゃんと花かんざしは同一視されている気がして。
可愛くて、鮮やかで、か細くて、守ってあげなきゃいけない大切なもの。

となれば、一度花かんざしを踏み潰そうとしたとき、足の下の花かんざしには、大事な少女の面影が映りこんでいたのかな。
だから、踏み潰さずに、自分の頭に挿すのか。
まるで安らぎを手繰り寄せるような源さんの心境を想像したら、ひどく切ない。

「花かんざし」でも「街の灯」でも、ヒロインの目は最後に見えるようになる。
「街の灯」のラストシーンでは、花売り娘は浮浪者の手を握って、懐かしい恩人の感触だと気づく。
花売り娘が「YOU」(あなたでしたの)と言ったように。
お八重ちゃんも、源さんの声で気づく。呼ぶ。
「お兄様!」

でもここからが違うんだ。
「花かんざし」には、お八重ちゃんを制止する手があるんだ。
それが信太郎の存在。
演じる将さんが、覚悟を決めたような表情で、お八重ちゃんを止める。
それを見届けて去る源さん。
花道を歩き去る一馬座長の背で、幕が降りる。

口上の後、近くにいた男性のお客さんとお芝居談義に花を咲かせていたら、面白い話を聞いた。
別の劇団さんの「花かんざし」では、ヒロインが最後に本物の“お兄様”を選んで、旅に出ようとした恩人を追いかけて行ってハッピーエンドというのもあるらしい。
きっと温かなラブストーリーになるんだろう。観てみたい。

それはそれとして、KAZUMAバージョンで私が好きなのは、源さんが最後にお八重ちゃんを手元から失うことによって、この恋の儚さがいっそう演出されるからだ。
顔のアザのせいで「俺は一生独り身だ」と決めていた源さんの日々に、一瞬だけ揺れた花の色。
最後に「花かんざし」がまた遠ざかっていくことで、初めから壊れやすかった恋が、静かにぱらぱら散っていく音を聞く。

一方、映画「街の灯」では、「YOU」の後は描かれない。
花売り娘は浮浪者と結ばれたのか?やっぱり現実的にはそれは難しかったか?

目の見えない娘だからこそ、成り立った恋だった。
では目の開いた後は?

「YOU」=「お兄様!」の後は、花が散るとき。
街の灯が消えるとき。
それとも?

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