4/21(金)の御礼 ―「風雪!旅役者水滸伝」の出版を祝う会 & カンゲキ座談会―

4月上旬からスケジュール帳の21日を見ては、ずっとどきどきしていました。
というのはこの日、2つのイベントに参加させていただくことになっていたから。奇しくも一つは『演劇グラフ』関係、もう一つは『カンゲキ』関係…。

まず、この日のお昼は「風雪!旅役者水滸伝」の出版を祝う会。『演劇グラフ』誌上で連載を続けてこられたルポライター・橋本正樹さんのお祝い会でした💐
12:00~14:30 / 篠原演芸場



大衆演劇の“教科書”の一つとして愛読している橋本さんの著作。最新作『風雪!旅役者水滸伝』が昨年12月に出版されたときは、友人やTwitterつながりの方の間でも話題になってました。
本書のエピソード数の凄さ。橘菊太郎さんの柔道部時代の猛稽古の話や、龍児さんがバレンタインの苦い思い出からチョコレートを食べられなくなった話など、役者さんの人生がいきいきと伝わってくる話に、一体どういうインタビューをしたらこういう記憶を引き出せるのだろう…?と、いつも不思議に思っています。
(Amazonではこちら)

橋本さんは(こんな言い方は恐れ多いけれど)人なつっこい温かみが全身に出ています。きっと役者さんたちも、この方なら心許してくだけた話もするだろうなー…と思わせるお人柄。

出席者の中で、ついにお会いできた!と幸せだったのが『演劇グラフ』初代編集長・上松未奈さん。
上松さんのブログ「大衆演劇はスペシャルなのだ」、きっと読んでいる方が多いと思います。私も5年前に大衆演劇にハマったときから、ずっと楽しみに読んでいます。役者さんにもお客さんにも愛情たっぷりの、穏やかな文章がスッと心に気持ちいいです。個人的に大好きだった記事は、3年前に書かれていた先代の千代丸さんのバッグの話!紀久二郎さんをいっぺんに好きになってしまうエピソードです(*^_^*)

お会いした上松さん、文は人なりの言葉はやはり正しく、ふんわりとした優しい声で話される方でした! ディープで個性の強い方の多い大衆演劇界で、この柔らかい雰囲気の方が編集長をされてきたのか…と思うと、正直意外なほど…。
現在はCS朝日が制作している大衆演劇番組も支えてらっしゃいます📺

さあ夕方は十条から新宿に移動だ!ずっしり重い荷物もなんのその!
カンゲキ座談会
19:00~21:00 / 新宿個室

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食事風景

『カンゲキ』関東進出を記念しての企画。このブログでの呼びかけに応じて来て下さった方もいて、本当に感謝です!
全部で10名、大衆演劇ファンばかりなので話題は山ほど。私がいたテーブルでは青山学院大学の竹内孝宏先生を中心に、
「大衆演劇の10年後に向けての本当のターゲットって?」
「『刺青奇偶』が好きという人が多いけど、その魅力って何だろう?」
「舞踊ショーの人気激化の本質には何があるのか」
などなど…
参加者全員(!)が二次会に来たということに、どれだけ話が尽きなかったかが現れていると思います。

私はトークのセンスに乏しいのだけど、会話の流れが桜春之丞座長(劇団花吹雪)に触れたとき、あっと思い出して、
「春之丞さんの『喧嘩屋五郎兵衛』が好きです。爽やかなところもスカッとするところも全くなく(褒めてる)、人間の弱い部分を描いていて!」
と発言したら、参加者のお一人に「お萩さん面白い(笑)」とだいぶ笑っていただいたことがなんだか印象に残っています。
ご参加下さった皆様、大変お世話になりました。
(花吹雪さんの『五郎兵衛』は2016年3月に観たもの。五郎兵衛の“敗北”が容赦なく描かれていたのが印象的でした)

“人の縁が増える”ということは大衆演劇の魅力の一つだなぁと思います。客席のご縁、ブログやツイッターのご縁。それが段々広がっていく。こんなに濃い人たちが舞台の上にも下にも揃っている芸能はあんまりないかもしれません。
…足抜けできる日は多分、来ないですよね、お互いに(笑)

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【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十三] “お外題”って何?大衆演劇ファン用語集

大衆演劇が好きです。
そして、大衆演劇ファンが好きです。
自分も含めて、ふとファン同士の会話を聞けば…その“言葉”の濃いこと、濃いこと。

「今月何回目?」←通ってることが前提
「その日通し(狂言)だよ!会社からで間に合う?」 ←通し狂言の日は仕事の調整も綿密に
「○○劇場のお外題情報求む」 ←ほんとにこれで誰かが教えてくれるのがすごい
「ロスーーーーー」 ←説明不要

楽しい、愛しい、ファンの言葉たち。
これから大衆演劇に出会う人にも、なんかこの世界は楽しそうだなと思っていただきたくて。
ずっと書きかった「ファン用語集」なるものをようやく形にできました!

【SPICE】大衆演劇の入り口から[其之二十三] “お外題”って何?大衆演劇ファン用語集


記事のトップにしているこちらが何の写真かは…きっとこのブログを見て下さってる大衆演劇ファンの方にはわかると思います。ヒント:一本釣り

(こんな用語についてあれこれ解説しています↓)
通う 好きな劇団が地元劇場にいれば、一か月に複数回観にいくのがファンの基本形態。通勤・通学のごとく劇場に通う。なかには「一か月皆勤」という猛者もいる。「今月は○○劇団の出席率高め」とファン同士で会話したりする。

通し狂言 ミニショーを省いて披露される1時間半~2時間の長めの芝居。芝居から開演するので、もし途中入場すると序盤を見逃してしまう。そのため通し狂言の日は、普段以上に全速力で劇場に走るファンの姿がある。

お外題(げだい)(別称:貼り出し)  演目のこと。特に芝居の演目を指す。大衆演劇は芝居・ショーとも日替わりなので、どの日に何をやるかはファンにとっては非常に重要。劇場によっては今後のお外題をWEBサイトに載せてくれるが、多くは劇場に貼り出してあるのみ。そこで、貼り出されたお外題をファンが携帯で撮影し、SNSでほかのファンと共有する助け合い文化がある。

ロス 好きな劇団の公演の千穐楽が終わった後などに陥る、心にぽっかりと穴が開いたような気持ち。「○○(劇団名・役者名)ロス」が高まると遠征という手段に出る。


このほか、「神セトリ」「勘違い席」…などファンならではの用語を集めてみました。
⇒全編はこちら!(SPICEサイトに飛びます)

入稿前、大衆演劇を知らない人にこれで伝わるんだろうか…?と一抹の不安がよぎり、「読んで意見をくれる…?」と友人たち・姉にお願いしたら、すぐさまその多大な力を貸してもらうことができました。
いつもありがてえ…m(_ _"m)

私はネットで「宝塚ファン用語集」とか「ディズニー初心者用語集」とかのコラムを見つけると、つい読んでしまう。こんな世界もあるんだな、とそのジャンルに興味が沸く。各ジャンルについて全然知らないのになんでだろう? と考えると、言葉にたっぷり詰まっているファンの熱に惹きつけられているんだろうなと思う。

大衆演劇という大きなジャンルについて書くには、まだまだ、まだまだ力不足ですが。
大衆演劇を知らない誰かが、ネットの海を漂ううちにこの記事に行きあたって。
「“通し狂言”って何?」「“お外題”って何のこと?」と思ううちに。
こんなディープな世界もあるんだな、と心の隅に置いてくれることを願って。

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【告知】4/21(金)「カンゲキ」主催・大衆演劇ファンミニ交流会@関東

こんばんは!
今回は普段のブログではなく、イベント告知です。

大衆演劇雑誌『カンゲキ』、最近は関東の劇場でも売っているのを見かけるようになりましたね。
関東方面の大衆演劇ファンへのご挨拶を兼ねて、大衆演劇ファンミニ交流会が東京で行われることに! このブログを読んで下さっている方で東京近郊の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご参加を♪

「カンゲキ」主催・大衆演劇ファンミニ交流会@関東
4/21(金)19時スタート@新宿
定員:12名(定員に達し次第締め切り)


詳細とお申込みはこちら↓
『カンゲキ』 編集スタッフブログ 「大衆演劇ファンミニ交流会@関東のお知らせと参加者募集のご案内」

青山学院大学の竹内孝宏教授を招いて、大衆演劇研究のお話もあります。

なんでいきなり『カンゲキ』のイベントの告知をしてるかと言うと…声をかけていただいて、お手伝いという名のもとにひっそり参加させていただきます。
雑誌創刊時から自由な発想でコラムとかインタビューとか、あれこれ挑戦している『カンゲキ』に、常々好きです!楽しみにしてます!と告白してきた甲斐があった…のかな?(*´▽`*)

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カンゲキ最新号。役者さん×現代というこの表紙センスが好きです。

『カンゲキ』の担当者さん、関東の大衆演劇ファンのお話を聞きたいと、今回のイベントも真剣に準備されていました。
こういうのに申し込むのって勇気がいるかと思うのですが、大衆演劇ファンが集まって観劇トークを繰り広げる金曜の夜…きっと楽しい一夜になると思います!
お会いできる方がいましたら、心から楽しみにしています。

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天華ロスに落っこちて② ―澤村千夜座長が守ってくれた“やくそく”―

驚いて、嬉しがって、失望して、泣いて、狂って――
劇団天華・澤村千夜座長の身体に物語を通すと、感情が目まぐるしく変わっていく。
たとえばショー【お梶藤十郎】の場合は…


髪を整えるお梶の、恋の喜び。

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真実を知る、驚愕と悲しみ。

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やがて狂気を発して嗤う。

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自死の瞬間の苛烈な目。

まるで喜怒哀楽がパリンと割れて、一粒一粒が鋭角になって、突き刺さってくるみたいだ。
うん、ファンですね!我ながら!(笑)

でも7月以降の天華さんは、ひとつ転機を迎えられるのかもしれない。9年前の旗揚げ以来、劇団を支えてきた副座長がいなくなり、さらに男性で最年長者だった龍太郎さんもいなくなるという。
①では6月いっぱいで退団される神龍副座長のことを書いて…。そしてやっぱり気にかかるのは、千夜さん率いる劇団のその後。

という話はいったん置いておいて。ある2つの場所での千夜さんの芝居について、思い出すことにします。

◆檜舞台・浅草木馬館
もはや古い話ですが、2/23(木)は今年に入って観劇的に最も満たされた日のひとつ。千夜さんが劇団美鳳さんのゲストで東京にいらした日。なんたって千夜さんon木馬館!\(^o^)/ 

芝居『喜造の最期』、千夜さんは主役の喜造だった(劇団美鳳・紫鳳友也座長、重要な木馬館公演の主演を譲る心づかいに感謝!)。
喜造は国定忠治の元子分。今は足を洗ってかたぎになり、十手取縄を授かる身。だが本心では忠治を今も慕っていて、捕らわれの忠治を何としても助けるつもりでいるという人物設定。

その設定の中で。千夜さんの演技に気づかされたのは、喜造の押し殺した“本心”の動きが、ちらちら垣間見えるということ。
たとえば忠治の子分たちが家を訪れて笠を取った瞬間、「久しぶりだなぁ…」とかつての兄弟分に懐かしそうな笑顔を向けたり。忠治を助け出したとき「よかった…!」と心底安堵したように吐き出したり。友也座長演じる忠治と対面した途端、「親分、ご無事で何よりでござんした…」と一気に緊張を解いて子分の表情になったり。ボロボロになった忠治を「民百姓みなが待っておりやすよ!」と涙のにじむ口調で励ましたり。

そうそう、細やかな感情の波。こういうところが観たかったんです!やったね!
檜舞台・浅草木馬館。芝居を愛するお客さんの集中力に取り巻かれて、場面場面を味わえた。

けれど、大衆演劇の客席は。常に芝居好きのお客さんばかり――とは限らない。

◆ざわめきの中で
春。ある温泉での公演、外題は『お銀片割れ月夜』。座長女形芝居で人気の高い一本なので、日曜に持ってきたそうだ。
芝居が進むにつれ、内心ヒヤヒヤしていた――後方の客席に。

この日、大衆演劇を観慣れない観光のお客さんも多かったせいだろうか。泣きどころで毎回微妙に笑いが起きる。ヤマ上げでもないところで名前を叫ぶ。スマホを堂々といじる。席を立つ。
もちろん前のほうには、遠征の方や、真剣に観て涙しているお客さんもたくさんいた。ただ私が座っていたのが後ろ寄りだったため、ざわつく声が耳についてしまった。
※誤解のないように書いておくと、他の日はいたって真剣な客席でした。温泉自体は大衆演劇を大事にしている本当に素敵な所だったので、この日だけ一部のお客さんが崩れた空気を作ってしまったのだと思う。

「旅人さん、冗談だろ、起きて…あたしだよ、触るよ」
千夜さん演じるお銀は、神龍さん演じる千太郎の体を必死に揺さぶる。この愁嘆場に至ってなお、セリフの後を追うようにハハハと集団の笑いが起きる。
何がおかしいのだろう、やめて…。
舞台に立っている側の胸中を想像して心が冷えた。

いやいや、こんなときは。胸に留め置いている文を思い出す。大衆演劇の名著『旅姿 男の花道』 (橋本正樹さん著、1983、白水社)。著者が故・四代目三河家桃太郎をセンターで観たときも、お喋りや立ち歩きのやまない客席だったという。
≪僕は、照明、大道具、小道具、そして最も致命的な演劇的雰囲気の欠如という、周囲の一切の夾雑物をたちきって、芝居に集中した。すると、役者の本体が見えた。≫

こんな客席も大衆演劇の付き物。余計なものは頭の中から取っ払って見る。役者さんの動きだけ、穴のあくほど見る…

そして舞台の上で見つけた姿は、やっぱり烈しかった。
「起きて、ねえ、起きてよ」
胸をきりきり引き絞るような声。
「あたしもうどうしたらいいか、わかんないよ、ねえ」
お銀のヒステリックになっていく言葉に、心の調子がずれて狂気に陥っていく、所作と表情が張り付く。千太郎の体に爪を立て、眉間に苦悶の皺を刻んで。
女形の身体ひとつが、ざわめきの中に置かれても、別の悲劇を呼吸しているようだ。

――客席の笑い声が彼に聞こえていないはずがなく、席を立つ気配を感じ取っていないはずがなかったけど。
「……千ちゃん!」
“役”は剥がれ落ちない。
その表現の鋭角ゆえに、物語を見失わないでいられた。

大粒の喜怒哀楽と、それを身体の上に限度まで広げようとする汗をもって。
かの座長さんが客席に対して守ってくれる、一番大切な約束。
お芝居が好き!と手を伸ばせば、例外なく手のひらにのせてもらえる心。
痛いくらいの。
人間の。
役の。
だから役者さんと結ぶそれは、“役束”とも書ける。

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どろりと粘つくくらいドラマチックな芝居が観たいなぁ、と思っていました。人間の心理の底まで、腕を突っ込んでつかみ出そうとするような熱を。
だから、2015年秋にこの役者さんを知って、彼の芝居を見続けられているのはとてもラッキーなことだと思います。

人が去っても舞台は続く。夏、千夜さんの芝居はどんな風になっているのだろう。

『演劇グラフ』2017年3月号の千夜さんインタビューをめくる。
≪今さらなんですが、ここ1、2年、お芝居をもっと突き詰めてやっていきたいなと思うようになりました。これから追求したいのは派手な立ち回りより、人間心理をいかに表現するかということ。台詞ではなく、特に表情や動きなどの身体表現です。≫

人が減って、もしできない演目があっても。チームとして、もどかしいことがたくさんあっても。
変わらないのは、身体と、表情と、所作と、心。
それらをもって舞台は続く。

≪これからさらに試行錯誤しながら澤村千夜流の芝居を模索していきたいと思っています。≫

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“役”がそこにある限り。
舞台には常に、はじまりの音が鳴っている。


【劇団天華 今後の予定】
4月 宝劇場(福岡)
5月 城山温泉(香川)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川)

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天華ロスに落っこちて① ―澤村神龍副座長が“座長”になる日―

季節はとうに春です――が。
桜の木がピンクに膨らむ中、胸中の喪失感がだいぶ募り中。
小倉・宝劇場のお外題がTwiterに流れてくると、明日このお外題かぁ良いなぁ、前に聞いたセリフあるのかなぁ、とか思いつつ。

周囲の大衆演劇ファンもみんな、それぞれに観に行きたい劇団はあれど、多忙やら金欠やら観劇欲求には足枷が付きものらしく。春陽座ファンの姉は行ける月をひねりだして遠征計画を立てているし、劇団炎舞ファンの友人たちは一日千秋の思いで東京公演を待っている。
タイムラインにフォロワーさんの「○○ロス」の言葉を見つけると、あ、同じです…!今、胸の中空いてるこの穴おんなじです…!と(勝手に)共感していたりする。

劇団天華さんの場合、今のメンバー構成を観られる“リミットが迫っている”のが大きい。


(2017年3月、奥道後公演)

3/17(金)、澤村千夜座長のゲスト先での発表によれば、6月いっぱいで澤村神龍副座長は旗揚げのため退団。そして澤村龍太郎さんも退団。
同日、神龍さん自身がブログで発表されました⇒澤村神龍の俺様ブログ

旗揚げか…。昨年から30歳前後の役者さんの再スタート宣言が相次ぐなぁ。すでに旗揚げ公演を成功させた嵐山瞳太郎座長、6月に大阪で旗揚げされる碧月心哉座長。ここに澤村神龍“座長”の名が加わることになるのか。
改めて、一座の中心に立つ者としてとらえ直したとき。
神龍さんって、どういう色の役者さんなのだろう?

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◆得がたい“いたいけ”感
≪お客様からは、幸の薄い、悲しい役が似合うと言ってもらうことがあるんですが、確かに人情劇のほうが自分としても魅せられるかなと思います≫
とご本人がインタビューで語られているように(『演劇グラフ』2017年3月号)、神龍さんの芝居には“いたいけ”な印象が残る気がする。
ほっそりした体格で、背丈もあまり大きいほうではないせいか。それとも、話し方や笑い方に取り繕わないピュアな感じがするせいかな?
主演の『雪懺悔』も惨い目に遭って同情を誘う役どころだったし、『鷺娘』の娘役は神龍さんの醸す悲壮感があってこそ。

その真骨頂は、ご本人のお誕生日公演で作られたという『マリア観音』なのかもしれない。30歳の神龍さんが、ごく自然に少年・半次郎に変質することにビックリさせられる…。
母親(志保さん)と語らう甘えの残る口調。悪ガキ連中とつるんでいる場面のイタズラっぽい表情。父(千夜さん)をかばって捕らわれの身になる場面で「あの…」と、もの言いたげに振り返る思慕。終盤にボロボロの身体で父に縋る弱々しさ。
半次郎のよろめく足取りを見ながら。お芝居と役者さんの芸風が当たるってこういうことなのかと思っていた。
『マリア観音』と神龍さんは、きっと物語と演者の幸福な出会いのひとつだ。

千夜座長の濃さに対し、サブポジションの神龍さんの儚さがバランスよく糸を引いていることが、天華さんの人情芝居の飲み込みやすさなのだと思う。

だからこそ、正直な気持ちを言えば、驚いた。
神龍さんが座長に…。
座長といえば舞台も客席もグイグイ引っ張って、力と熱でヤマを上げて、芝居の核を立たせる存在。そんな従来の座長像は古いのかもしれないけど、やっぱり自分が長だ!という強引なまでの強さを持ち合わせた人に向いてるんじゃないのかな…?

◆変わっていく時代
でも思い出したのは今年1月・池田呉服座公演中のこと。神龍さんがブログで、心身の調子がかなり良くないことに言及していた。
読んだ途端、なんだかそわそわ…
遠い東京でもそわそわしたのだけど(勢いでこんな文も書いている)。大阪では、ブログを読んで副座長を心配するあまり、実際に劇場に駆けつけた人が相当いたと友達から聞いた。皆さん神龍さんが可愛いみたい、と。

私は結局、他の大阪行きの用と合わせて、千秋楽直前にようやく池田を訪れた。送り出しで副座長のほうを見ると、お客さんに囲まれていた。
「もう全然大丈夫ですよ!」
ニコニコと応対されている姿が見えた。なら良かった~、気になってたの~とホッとした顔のお客さんたち。その後ろにも並んでいる方の列が出来ていた。

つい気にかかる、とか。なんとなく心配になる、とか。
あのしゅるんっとした線の中に、人の気持ちを引く何かを持った役者さんなのだ。

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多分、根底に、純度の高い気持ちが見えるせいかな。
それが芝居で感じられるのが『遊侠三代』。丞弥さん主演だけど、子分役の神龍さんも敵役の千夜さんも、それぞれの演技の特性が際立つ面白い構成だった。
神龍さんは、丞弥さん演じる親分の代わりとして自ら斬られにいくという役どころ。思いつめた表情で戸に手をかけ、背後の弟分(悠介さん)に言う。
「親分はずっと、ずっと別れた兄を探してきたんだ、必ず生きて会ってもらいてえ…」
そして戸を開け、一目散に駆けていく。身代わりになって死ぬために。目つきは、ただ一点だけに向かって研がれている。
「なんか神龍さんって、ホントにそういうことしそうな感じがあるじゃない?(笑)」
一緒に観ていた友人が言った。

時代は変わっていく。
座長という概念も、古いイメージを軽く飛び越していく。
一生懸命で、人情芝居では憐憫を誘って、“純”が透ける神龍座長を、座員さんやお客さんがつい支えたくなる…そんな未来の形があるのかもしれない。

見回せば、若い劇団さんには色んなスタイルがある。座長さんと座員さんのフレンドリーな関係性が微笑ましい劇団もあるし、みずみずしい新人さんたちの教育係として座長が慕われている劇団もある。
今の時代、中心に立つ人の引力の在り方は様々。
やわらかな笑顔の神龍さんらしいチームがきっとできるのだろう。

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≪一瞬の演技に、その人物のストーリーが感じられるような。それくらい役になり切りたいです≫(同インタビューより)
近い将来、この世界に新しい劇団さんがまた一つ加わる。

……つまり今の天華さんを観られるリミットは刻々と迫っているってことなんですけどね。気づけば、もうあと3か月切ってました。なんてこった💦
ロスを持て余した勢いで書き始めた天華さん語り、①があるってことは②もあります。②は千夜座長の話。多分ファン丸出しの文になっちゃうので、生暖かい目で読んでいただければ幸いです…(^-^;

【劇団天華 今後の予定】
4月 宝劇場(福岡)
5月 城山温泉(香川)
6月 大江戸温泉物語ながやま(石川)

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